2016年に出版され、日本をはじめ世界中で話題を集めた「ライフ・シフト」。誰もが100年生きる時代の人生設計をテーマにしており、政府の「人生100年時代構想会議」にも影響を与えた。今回はライフ・シフトの背景や同書の著者が提唱する人生設計のヒントについて、これまでの記事から振り返る。
「人生100年時代」で注目を集めた「ライフ・シフト」

『ライフ・シフト(LIFE SHIFT)』とは2016年に出版された書籍のタイトルだ。「誰もが100年生きうる時代をどう生き抜くか」というテーマを扱っており、長寿社会を前提とした教育や働き方を再定義し、新たな人生設計を考える必要性を説いたことで話題を集めた。
ライフ・シフト出版の翌2017年には当時の安倍晋三内閣が「人生100年時代構想会議」を発足させ、著者のグラットン氏も有識者のひとりとして会議に名を連ねている。新聞などのメディアも同書や著者についてさかんに取り上げ、「人生100年時代」は同年の新語・流行語大賞にもノミネートされた。
この記事ではライフ・シフトや、同書によって注目された「人生100年時代」をテーマにしたこれまでの記事や、著者のグラットン氏のインタビュー記事を紹介していく。
生涯現役で輝くスーパーシニアに?
「人生100年時代」を前に、各地でスーパーシニアと呼ばれる人々が活躍している。たとえば93歳のバーテンダー、84歳の現役化粧品販売員といった具合だ。しかし一方で「高齢ワーカーによる労災事故」は増加しており、現場では「正直、足手まとい」との声も聞かれる。年下の同僚から指示を受けることに違和感を持つ高齢者もいるなど、理想と現実のギャップは決して小さくない。
100年マネー計画 家計襲う5つの誤算
2017年9月に「人生100年時代構想会議」を発足させた安倍政権(当時)。人生100年時代に向けて、政府は「教育の無償化」や「リカレント教育の充実」など大胆な改革に乗り出す考えだ。だが長生きすれば必要となる老後資金はそれだけ増える。グラットン氏は「現在10歳の日本人の半分は107歳まで生きる」と予測するが、多くの人は100歳まで生きる前に「資産寿命」が先に尽きてしまうという。
柔軟な人生 日本モデルを
ライフ・シフトの著者リンダ・グラットン氏は、高齢化が進む日本について「世界が迎える人生100年時代のトップランナー」と表現する。従来の働き方や社会の形は今後機能しないとした上で、老後に必要な資金を確保するために「今よりも長く働き続けること」が必要で、「80歳まで働く時代が近い将来訪れる」という。
コロナ後のオフィス グラットン教授「在宅で社内権威が失墜」
グラットン氏はかつて、2025年ごろに「技術革新でテレワークが普及し、在宅勤務が一般化」すると予測していた。しかし新型コロナウイルスの影響により、この予測は前倒しで実現している。その上で同氏は在宅勤務を成功させるための重要なポイントとして、(1)従業員一人ひとりへの理解、(2)仕事のリズム、(3)コミュニケーション、の3点を挙げる。
グラットン教授:働き方と「ウエルビーイング」、「つながる幸せ」を中核に
グラットン氏によると、健康的に長生きするためには「どこでどのように暮らすかについての選択が必要」だという。これには、日本では当たり前の光景となっている長時間労働や通勤の習慣を見直すことも含まれる。また「今の仕事・会社に誇りはあるが、仕事が楽しくない」という日本人が多いことにも触れ、「高度成長期のようにカネ・モノ・名誉といった長続きしない幸せではなく、長続きする幸せを自覚」することを提唱している。
リンダ・グラットン教授の新提案 働き方を再構築する4段階
働き方の再構築を提唱するグラットン氏。そのためのプロセスとして挙げるのは、(1)最優先すべきことを理解する、(2)新しい働き方をデザインする、(3)新しい働き方をモデル化し試行する、(4)行動し、創造する、という4つのステップだ。
最後に
新語・流行語として多くの日本人に認知された「ライフ・シフト」。依然として高齢化が加速する現在において、人生100年時代に備える重要性はますます増している。老後の資金を確保するためどのように働き続ければよいか、同書を読み返しながら真剣に考えていきたい。
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