日本の水産業大手のマルハニチロ。マルハとニチロという2つの会社の強みを持ち寄り、食品製造だけでなく漁業や養殖、水産物の輸出入まで手掛けている。今回はこれまでの記事の中からマルハニチロを取り上げたものをピックアップして、同社の取り組みを振り返る。

2つのルーツを持ち、幅広い事業を展開

 マルハニチロは水産物を中心とする大手食品会社だ。もともとはマルハ、およびニチロという2つの会社だったが、2007年にマルハグループ本社とニチロが経営統合して現在の体制となった。

 マルハニチロの母体となった2社はどちらも歴史が古い。マルハの創業は1880年、ニチロは1906年だ。マルハは主に鮮魚仲買運搬や捕鯨、養殖事業を中心に成長し、一方のニチロは缶詰や冷凍食品などのブランドとして知名度を上げてきた。現在も各種食品製造に加え、漁業や養殖、水産物の輸出入など幅広い事業を手掛けている。

 ここではマルハニチロのこれまでの取り組みや新規分野への進出、そして昨今の物価上昇に伴う課題などを過去記事から振り返っていく。

マルハ、ニッスイの成長解、養殖の課題とは

 長い歴史を通じて漁業や養殖を手掛けてきたマルハニチロ。どちらの事業にも「資源の課題」が付き物だが、同社の中島昌之・取締役専務執行役員は「我々はまだシェアを上げていくことができる」と語る。さらなる成長に向けてマルハニチロが力を注ぐのは養殖事業だ。特に2015年から出荷が始まったクロマグロの養殖では、2017年時点で国内シェアの30%を占めている。

サーモンの陸上養殖 「タンパク質危機」解消の切り札に

 養殖に力を入れるマルハニチロでは、2016年度から産官学連携でサクラマスの陸上養殖の実証実験に取り組んでいる。だが2020年の段階で、サクラマスの養殖は採算ラインに届いていない。マルハニチロ中央研究所の椎名康彦氏によると、課題の解決には「養殖でも飼料効率が良く、狭い空間でもストレスなく育つ品種を育てる必要がある」という。

漁業を救え 近大マグロからフグ、タイのゲノム編集まで

 三菱商事と共同で取り組むのは、現在はノルウェーからの輸入に頼っているアトランティックサーモンの陸上養殖だ。三菱商事が傘下に持つ世界有数のサーモン養殖企業・セルマックのノウハウを活用し、富山県入善町に建設予定の施設から年間2500トンの出荷を目指している。初出荷は2027年度の予定だ。

人手不足で需要増、食品メーカーが力を入れる介護食

 マルハニチロでは介護用冷凍食品も製造している。もともと「果物や野菜をムースやゼリー状に固めた商品」を販売していたが、介護現場の人手不足がますます深刻になる現状を受けて「蒸すだけで利用できる」ムース状の冷凍ハンバーグやオムレツの製造販売に乗り出すという(2019年3月時点)。

「オプジーボ頼み」からの脱皮目指す小野薬品、脂質サプリの勝算

 マルハニチロの新製品開発は健康食品分野にも及ぶ。これまでも魚油由来のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)、サメの軟骨由来のコンドロイチン、サメの肝油から精製されたスクワランといった水産物由来の機能性成分を取り扱ってきたが、2022年からはこれまで未利用素材だったイクラオイルを小野薬品工業に提供。まったく新しい機能性サプリメントの開発に協力している。

メーカーは悲鳴、家計に重圧 日本経済むしばむ「悪い物価上昇」

 「温暖化による漁獲高減少」と「エネルギー価格高騰による物流や生産費用の上昇」を受けて、マルハニチロの製品が値上げされる。2022年3月の納品分より、缶詰・瓶詰の商品数の3割に相当する41品の価格が一斉に約3~15%引き上げられるという。

最後に

 養殖の分野で積極的な事業展開を進めるマルハニチロ。一方で介護向けの冷凍食品や未利用素材を生かした機能性食品の開発など、ニーズを的確に捉えた商品開発でも存在感を発揮する。消費者としてはエネルギー価格の上昇などに伴う値上げも気になるが、今後の企業努力やさらなる商品開発に期待を寄せていきたい。

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