世界的なファッションブランド「フォーエバー21」。本国での経営破綻と、それにともなう日本からの撤退を経験した同ブランドだが、2023年に再上陸する計画だという。今回はフォーエバー21を取り巻く業界の現状を過去記事から振り返っていく。
ファストファッションの象徴となった「フォーエバー21」

フォーエバー21は米ロサンゼルス発祥のファストファッションブランドだ。創業は1984年で、日本でも2009年から直営店舗を展開。「最新のファッションをベストプライスで提供する」をコンセプトに全国に店舗を展開させていた。19年に本国で経営破綻し、日本からも撤退したフォーエバー21だが、23年春に「再上陸」が予定されている。
フォーエバー21は、圧倒的な低価格で旬なデザインのファッションを楽しめるとして若者から大きな支持を集めていた。一方で製品の質は高くなく、「大量生産・大量消費・大量廃棄を助長するファストファッションの象徴」とみられることもあり、近年のサステナビリティー(持続可能性)意識の高まりとともに人気を失っていった。
伊藤忠商事とアダストリアグループをパートナーとして日本に再進出する新しいフォーエバー21は、8割の商品を日本で企画。ターゲット層を10~30代前半と広く設定し、価格は以前の倍以上でライバルとなるユニクロやGUよりも少し高い程度になるという。
この記事ではかつてのフォーエバー21を取り巻く環境や、アパレル業界の現状に関連する過去記事を紹介していく。
アパレル企業を悩ませる“量産系女子”
フォーエバー21などのファストファッションが人気を集めていた理由について、共立女子短期大学の渡辺明日香教授は、「どのブランドの洋服を買うというより、値段やサイズに関して折り合いがついて、トレンドから大ハズレしなければ買う」という若者の風潮を挙げる。
メルカリ人気、格安衣料が失速
一方、フォーエバー21の撤退の原因になったのも若者の消費行動だ。メルカリなどのフリマアプリの普及は、衣料・服飾雑貨の中古市場を大きく拡大させた。ゾゾタウンなどに出展する「オンラインSPA(製造小売り)」と呼ばれる新興勢力も、既存のファストファッションブランドの勢いをそいでいる。
「時代遅れ」から復活したウォルマート 店舗×デジタルで攻勢
ファストファッションブランドにとって大きな脅威となったのが米アマゾン・ドット・コムだ。電子商取引(EC)が浸透すればするほど店舗を構える小売業から消費者が離れていく。フォーエバー21の経営破綻の背景には、この「アマゾン・エフェクト」の影響も大きいとされる。
H&Mも認めた再生素材 「サーキュラーエコノミー」本格離陸へ
フォーエバー21の破綻は、市場に「『大量生産・大量廃棄』の代表格であるファストファッションの終わり」を印象づけた。ユニクロも同時期に「買い物袋を紙製に切り替える」と発表。アパレル業界でも再生素材などを活用したサーキュラーエコノミー(循環型経済)に関心が集まりつつある。
ファストリ柳井氏「変わらねば日本は潰れる」
フォーエバー21の強力なライバルで、日本のアパレル業界をけん引するユニクロ。新型コロナウイルスの感染拡大で消費行動が変化する中、同ブランドを運営するファーストリテイリングはブランド強化に向けて、「開発、生産から働き方まで見直す有明プロジェクト」に取り組んでいる。
伊藤忠と日本気象協会がアパレル需要予測、過剰在庫解消の切り札?
日本に再上陸するフォーエバー21を仕掛けるのは伊藤忠商事とアダストリア。伊藤忠商事は、2021年より日本気象協会と共同で「アパレルの需要予測サービス」に取り組んでいる。慢性的に過剰在庫に苦しむアパレル業界に精度の高い予測データを提供することで「在庫を適正な水準に保ち」「アパレル業界のサステナビリティーを高める」のが狙いだ。
なぜアパレルが外食に? アダストリア、ゼットン子会社化から半年
いくつものアパレルブランドを展開するアダストリアは外食産業にも乗り出している。木村治社長は「僕たちはライフスタイルというキーワードを掲げて、いわゆる衣食住のすべてに関わるものをやっていこうと考えてきた」と説明する。
最後に
強力なライバルの出現や消費者の行動の変化、サステナビリティーを重視する風潮など、さまざまな要因を背景に破綻・撤退を経験したフォーエバー21。伊藤忠商事とアダストリアによって生まれ変わった同ブランドが再び日本で受け入れられるか要注目だ。
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