米国のアウトドアブランド「パタゴニア」は、環境保護活動に熱心なことで知られる。リサイクル素材の活用はもちろん、大量消費への批判から自社製品を「買わないで」と訴えるなど、その行動は異色だ。今回は過去記事を通して、これまでのパタゴニアの取り組みに注目していく。

独自の環境保護活動を行うアウトドアブランド「パタゴニア」

 パタゴニアは米国発祥のアウトドアブランドだ。創業者は元ロッククライマーのイヴォン・シュイナード氏。同氏が1957年に立ち上げたロッククライミング用具の製造販売会社が前身だ。パタゴニアという社名は南米のパタゴニアに由来し、「はるかかなたの、地図には載ってないような遠隔地」「どの国の言葉でも簡単に発音できる言葉」といった理由から名付けられたという。

 パタゴニアを特徴づけているのは「環境保護」への強い関心だ。オーガニックコットンやリサイクル素材の使用、同社製の古着の回収といった行動だけでなく、自社製ジャケットの広告で「Don't Buy This Jacket(このジャケットを買わないで)」と訴えたことにも表れている。

 この記事ではパタゴニアの印象的な取り組みや、日本法人の社長インタビューを過去記事から紹介する。

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 パタゴニアは「Bコーポレーション」の認証取得企業だ。BコーポレーションはBラボ(B Lab)というNPO(非営利団体)による認証制度であり、「サステナブル(持続可能)な企業」が認証の対象となる。サステナブルな企業とは、社会や従業員、環境、取引先といったステークホルダー(利害関係者)への貢献という「自社の存在意義」を意識している企業のこと。認証を受けた企業は「働く意味」を重視するミレニアル世代に対して、大きなアピールポイントになるという。

あのCMが不愉快な理由 「買わせるマーケティング」からの脱却

 マーケティングの父と呼ばれる経営学者フィリップ・コトラー氏が注目する企業の1つがパタゴニアだ。コトラー氏はウィズコロナ時代のマーケティングについて、「これからはシンプルで、なるべく散らかさない生活を人々は求めていく」と考え、望ましい例としてパタゴニアの「長持ちするシンプルな服を作ることを標榜」「たくさん売ろうとは考えず、ベーシックなニーズに見合ったものを作る」という姿勢を挙げる。

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 パタゴニアのマーケティングで特に話題を集めたのは「Don't Buy This Jacket(このジャケットを買わないで)」という広告だ。営利企業として矛盾するような宣伝の背景にあったのは、大量消費による資源の浪費を避けることで「子供たちに住むことのできる世界を残したい」という同社の思いだ。

「自社製品を買うな」のパタゴニアが取るリスク

 パタゴニアでは衣料品のリユース(再利用)にも力を入れる。使用済みの自社製品(フリースやダウンジャケットなど)を店頭などで回収し、修理したうえでリユース製品として販売する。プロジェクト責任者のネリー・コーエン氏は「買って使って捨てるという文化を変えたい」と語る。

SLASHER

 パタゴニアの日本支社も本社と同様、環境保全に積極的だ。日本支社社長(記事掲載当時)の辻井隆行氏は「長崎県の石木ダム問題」に関わっている(2016年時点)。住民主体の自然保護を支援する姿勢は、江戸古来の伝統的な商人の姿とも重なる。

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 辻井氏は「僕たちが取ってきた行動の結果としてパタゴニアというブランドが出来上がった」と語る。一方でこれまでの信念を曲げた行動はブランドの崩壊につながるとして、「これまで大切にしてきた哲学」を考えることの重要さを強調する。

最後に

 パタゴニアが掲げる経営哲学は環境保全。自社製品を「買わないで」という広告や新品の売り上げを妨げるリユース品の回収・販売、さらに公共事業をめぐる住民運動への関与といった形で実践されている。孤高のブランドと呼ばれる同社の今後に、引き続き注目していきたい。

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