全国の印刷会社と提携した印刷シェアリングサービス「ラクスル」を手掛けるラクスル。印刷サービスの他にも物流サポート、広告プラットフォーム、企業向けIT(情報技術)プラットフォームなど様々な分野のサービスを手掛け、創業からわずか10年足らずで株式上場を果たした。今回は同社のサービスを取り上げた過去記事を振り返る。

印刷シェアリングサービスで成長を遂げた「ラクスル」

 ラクスルは印刷サービス「ラクスル」をはじめとする、インターネット関連サービスを提供する会社だ。同社は2009年に設立され、格安・激安の印刷サービスを提供して売り上げを伸ばし、18年には東証マザーズ(現グロース)市場に上場を果たしている。

 ラクスルの印刷サービスの特徴は、同社自身は印刷機を保有せずに「提携印刷会社が保有する印刷機の非稼働時間に印刷を依頼する」ことで、高品質な印刷物を低単価で提供する「シェアリングサービス」であるという点だ。同社は他にも物流のシェアリングサービス「ハコベル」、テレビCMのプラットフォーム「ノバセル」、企業向けITプラットフォーム「ジョーシス」を提供しており、国内はもちろん海外での注目度も高い。

 この記事ではラクスルが手掛けるサービスや、同社の成長の背景について取り上げた過去の記事をピックアップして紹介する。

課題をビジネスチャンスに 物流革命「新参者」の挑戦

 印刷のシェアリングサービスで創業したラクスルが、次に進出したのが「物流」業界だ。「ハコベル」という同社のサービスは、スマートフォンやパソコンを介して荷主とドライバーをマッチングする。配送の料金体系は明確で、トラックの輸送距離や拘束時間などを入力すると、すぐに見積金額が提示される。

 日本の配送業者は自社が引き受けた荷物を運びきれないと判断すると、下請け会社に依頼する構造がある。ハコベルのサービスを使えば、安い運送料金で仕事を引き受けていた下請け会社が直接荷主から仕事を受注でき、その結果、高い収入を目指せる。

ラクスルが狙う「テレビCM革命」 EC感覚でCM枠を購入可能に

 ラクスルが手掛ける「ノバセル」は広告のプラットフォームサービスだ。テレビCMの効果分析をはじめ、CM出稿のための調査とプランニング、制作会社と連携したテレビCMクリエーティブ制作、放送枠の買い付けまで請け負う。同社がCM効果分析事業に参入した背景には、テレビCM枠の新しい販売方法の登場、計測データ基盤の整備などでテレビの“デジタルマーケティング化”が急速に進み始めたことにある。

 これを受けてラスクルは、「運用型広告」という手法をテレビCMに持ち込んだのだ。運用型広告は広告効果を分析してより成果の高い広告枠やクリエーティブに予算を寄せて、効果を高めていく手法。デジタルマーケティングでは一般的だが、従来のテレビCMでは難しかった。

「ワンオペ情シス」の壁を壊せ、ラクスルやマネフォが新サービス

 ラクスルでは企業の情報システム担当者をサポートするITプラットフォーム「ジョーシス」も提供している。このサービスではオンラインやクラウド経由でソフトを利用するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の管理や従業員の入社や退社に伴うアカウント設定などを一括で行える。新型コロナウイルス禍の影響でリモートワークが増え、業務が爆発的に増えている情シス担当者の負担や、IT人材の不足に悩む企業にとって画期的なサービスだ。

なぜラクスルは月予算200万円で新規事業を成功できたのか

 ラクスルは株式上場前、メインの印刷サービス事業が伸び盛りの段階から、新規事業に手を打っていた。この経営手法は、「選択と集中」、すなわち「メイン事業を伸ばしているタイミングでは、メイン事業にリソースを集中して勝ち切る」という勝ちパターンと矛盾するようにも思える。しかし次々と新事業に手を染めた背景には「産業のあり方を変える『デジタルインフラ』になる」という松本恭攝社長CEO(最高経営責任者)のポリシーと、「20~30年の時間軸」という中長期で考える同社の経営方針がある。

人の能力は想像力によって決まる~ラクスル松本社長

 ラクスルの松本社長CEOはコンサルティング会社A.T.カーニーの出身だ。当時は主に大企業のコスト削減プロジェクトを手掛け、その際に「印刷が一番削減率の高い、つまり非効率な業界」だと気づいたことがラクスルの起業につながった。起業当初は100社以上の印刷工場を回って説明を繰り返すなど苦労も多かったものの「サービスを改善して、いいパートナーが見つかってうまく回り始めた」という。ただし、一番大変で、大切だったのは組織づくりだったという。

ラクスルの松本社長、「動くことで景色が変わる」

 大学時代に国際ビジネスコンテストを運営する学生団体「OVAL」を立ち上げる経験を通し、起業に対する憧れを抱いた松本社長CEO。しかし、就活後、A.T.カーニーに入社している。当時は「ライブドア事件」もあり、「スタートアップに対していいイメージがありませんでした」と語り、「起業は選択肢にすらなかった」という。

 それにもかかわらず入社からわずか1年後にラクスルを起業したのは、業務を通して印刷業界が非効率だと気づいたからだ。この課題解決に挑んでいる企業を探したものの、そうした企業がなく、自分でつくろうと起業したのだ。そこには「目の前にある課題を解決したかった」という思いがあった。

最後に

 印刷サービス、物流サポート、広告やITのプラットフォームなど、まったく異なる分野で画期的なサービスを提供するラクスル。同社のサービスが利用者に受け入れられていることは、創業からわずか9年で株式上場を果たし、今なお順調に売り上げを伸ばしていることからも明らかだ。中長期のスパンで事業計画を立てる同社が今後どのようなサービスを展開していくか注目だ。

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