情報通信機器を使い、離れた場所から診察などをする遠隔医療。情報通信技術の進歩や新型コロナウイルス対策を背景に、国も活用推進に向けた取り組みを始めている。過去に取り上げた遠隔医療関連の記事から、医療機関や民間企業の取り組みなどを紹介する。

国も普及に乗り出した「遠隔医療」

 遠隔医療とは、厚生労働省の定義によると「情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為」を意味する。具体的にはオンライン診療やオンライン受診勧奨、遠隔医療相談などを指し、主に「直接の対面診療を補完するもの」と位置づけられている。

 これまで通信技術の発達などに後押しされてきた遠隔医療だが、新型コロナウイルスの感染拡大がそのニーズを高めている。国も2020年4月に「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」と題する文書を周知し、限定的ではあるものの遠隔医療(特にオンライン診療)の普及に取り組み始めた。

 今後ますます拡大が予想される遠隔医療をテーマに、医療機関や民間企業の取り組み、そして課題について過去記事から振り返る。

「3日で1000万人PCR」 先端技術と人海戦術の中国コロナ対策

 新型コロナウイルスを封じ込めるために、最新テクノロジーを活用している中国。国はもちろんアリババやテンセントといったIT大手も協力。20年1月23日の武漢市封鎖以降、短期間で官民を挙げた最新医療体制を構築した。

 中でも注目は、公立病院では初めてとなるオンライン専門病院「徐匯雲病院」だ。このオンライン医療サービスは、5Gネットワークなどのテクノロジーによって支えられている。

ソフトバンクがオンライン健康相談事業参入、AIも活用

 日本でも、中国の先進企業と共同で遠隔医療に取り組んでいる。18年10月、ソフトバンクは中国のオンライン医療サービス大手、平安健康医療科技と共同で「ヘルスケアテクノロジーズ」を立ち上げた。オンライン上で様々な医療サービスを提供するプラットフォーマーとなることを狙ったものだ。20年7月には、スマートフォンアプリなどを利用したオンライン健康医療相談サービス「HELPO(ヘルポ)」の提供を始めている。

遠隔診療でピルを処方、女性の悩みをワンストップで解決

 ベンチャー企業・ネクイノ(大阪市)では、オンラインで医師が診察し、ピルを処方する「smaluna(スマルナ)」というアプリを提供している。産婦人科への通院をためらう女性が少なくない中、オンラインで気軽に相談・診療を受けられるという心理的なハードルの低さが注目を集めている。

 同社では20年9月に、働く女性を念頭に置いた法人向けサービス「スマルナ for Biz」も開始しており、女性と医師をオンラインでつなぐ「医療コミュニケーション会社」になることを目指しているという。

エコーやX線検査が自宅でも、「小型軽量」で在宅医療身近に

 首都圏と沖縄県で約6000の在宅患者を抱える悠翔会(東京・港)。24時間体制で在宅患者に対応し、年間の緊急往診は7000件を超える。この医療サービスを支えている機器の1つが、聴診器のように持ち運べるポケットサイズのエコーだ。スマホやタブレットで、無線を通じてエコーの画像を確認できる。スマホ経由で別の場所にいる医師と画像などを共有し、相談することも可能だ。

 エコーはこれまで健康診断や疾病の診断に使われるのが一般的だったが、技術の進歩によって肺炎や骨折などの程度を見極めるのにも使われ始めている。また、脳神経外科や眼科、消化器系疾患の診断に活用しようとの動きもあるという。

日本医師会「オンライン診療“解禁”が規制改革なのか?」

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、20年4月、オンライン診療が時限的に解禁された。だがこうした動きに対し、日本医師会副会長の今村聡氏は「患者さんに直接触れる行為は医療の基本」であり「オンライン診療で得られる情報と、通常の対面診療で得られる情報では格差が明らかにある」と語る。

 日本医師会でもオンライン診療のメリットは評価している。「オンライン診療がだめだと言っているのではなく、適切に広げていくべきだ」とする。そのうえで今村氏は「どんな患者をオンライン診療の対象にできるか」「患者、医師の双方にも混乱を生じさせない仕組みをどうつくるか」といったルールづくりの大切さを訴えている。

最後に

 テクノロジーの進歩により広がってきた遠隔医療。また、新型コロナウイルスの感染拡大で、オンライン診療や関連サービスの開発・導入が進んでいる。女性や在宅患者への細やかな対応など、遠隔医療には多くの期待が寄せられている。今後の「ルールづくり」も含めて、これからの医療がどのように変化し便利になっていくか、行方を見守りたい。

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