デジタル改革を目玉政策として推進していた菅義偉政権。デジタル改革関連法の成立、デジタル庁の新設などで、どのような変化があったのか。日本が抱えるデジタル化への課題について考察する。

デジタル改革とは

 菅内閣の目玉だったデジタル庁の新設。デジタル改革相に平井卓也衆議院議員を充て、デジタル改革関連法が成立した。「一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」という目標を掲げていた。

  1. デジタル庁の新設
  2. 行政のデジタル化
  3. 規制改革
  4. 公務員のデジタル職採用
  5. マイナンバーカード
  6. 教育のデジタル化
  7. テレワーク
  8. 携帯電話料金の引き下げ

 これまでの政権下でもデジタル改革は打ち出されていたが、様々な課題があった。国際的に見て日本のデジタル化は遅れており、その改革が課題だ。

デジタル庁新設から見える日本の本気

 デジタル改革関連法が2021年5月12日、参議院本会議で可決、成立した。

 デジタル庁は、省庁間の縦割り行政を改め、強い権限でデジタル社会を推進することを期待されている。

 国民にとってのメリットは次の2つだろう。

 1つはワクチン予約システムの構築だ。予約から接種記録、医療機関への支払いがワンストップでできるようになる。

 もう1つはマイナンバーと銀行口座の連携。特別定額給付金や緊急で必要になる助成金などをスピーディーに給付できるようになるだろう。

音痴体質 解消作戦

 日本にはデジタル音痴社長が少なくない。「IT亡国」とならないために、何をすべきか。

 電子情報技術産業協会の調査によると、IT/情報システム投資を「極めて重要」と考える経営幹部は、日本では16%だが、米国では75%にだという。

 こうした状況を変えるには、次の4つの対策が考えられる。

  1. トップを代える
  2. CIOを外から招く
  3. ”電算室”を主役に
  4. 海外の人材を活用

 こうした改革を進めなければ、日本経済の回復は難しいだろう。

日本、変化対応力最下位

 スイスのビジネススクールIMDの世界競争力ランキングの調査結果を見ると、日本企業はシニアマネジャーが国際経験に乏しく、ビッグデータ活用やデータ分析ができておらず、有能なシニアマネジャーの人材層が薄い。変革や技術に興味はあり、社長やリーダー層は、変わらなければいけないと分かっているが、中間管理職層は変革への意欲が見られない。

 このままでは日本企業はグローバル市場で戦えないだろう。

「サイロの罠(わな)」の乗り越え方

 サイロとは縦割りの組織のことだが、苦労して組織改革を進めても、成果がサイロ内にとどまると、恩恵は限られる。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)を実践するなら、部署の壁を越えて人材、データ、インフラをつなげて初めて成果が生まれる。

 サイロを壊し、互いに交流するメリットを現場に訴えて回るのは、トップの役割だ。

 業務をプロジェクトベースに切り替え、横断的に人材、データ、インフラを集め、実施する。これを繰り返すことで複雑な会社組織は少しずつ解体されるだろう。

デジタル化はあくまで「手段」

 ある調査によると、デジタル変革の95%は失敗するという。

 DXを成功させたいなら、安全で柔軟なIT(情報技術)インフラが必要だ。データを安全に共有でき、利用できる職場環境も必要だ。小さく始めてうまくいったら、素早く全社に展開すること。始めてしまえば、動きたくない従業員も目が覚める。

視察でビジネスクラスに乗るな

 改革のスケールアップを実現するにはドイツの老舗出版社アクセル・シュプリンガーが参考になる。

 同社は、先進企業の改革スピードを体感してもらうため経営幹部をシリコンバレーに送り込んだ。70人もの幹部全員が同じものを見て、同じ危機感と方向感を持った。

 シリコンバレーの最先端の状況を五感で学び、リーダーたちは「変わらなければいけない」と腹の底から思うようになったという。

「後進国ニッポン」4つの元凶

 デジタル・ガバメント(電子政府)構想は、2001年に森喜朗首相(当時)が提示した「e-Japan 戦略」から始まる。

 しかし現在でも、利用者が利便性を実感できるものにはなっていない。

 日本をデジタル後進国にした要因は次の4つだ。

  • 縦割り行政
  • システムを行政から受注するベンダーと行政の「密接」な関係
  • IT人材が正当に評価されない点
  • 行政の予算主義

 日本のデジタル政策はこの20年間、遅々として進まなかった。デジタル後進国を脱するには、日本の行政組織にはびこる問題を解決する必要がある。

国民不在のクラウド至上主義

 政府は2017年に政府情報システム整備に、クラウドサービス利用を優先して検討する、いわゆる「クラウド・バイ・デフォルト原則」を打ち出した。

 国民が望む行政サービスのデジタル化によるサービス向上が求められる。手段と目的を履き違えると、「デジタル敗戦」となりかねない。

 デジタル庁が新設され、日本は新たな一歩を踏み出したがデジタル化は手段に過ぎないことを、忘れてはならない。

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