これまで廃棄されていた製品などを「新たな資源」とするサーキュラーエコノミー(循環型経済)。欧州連合(EU)を中心に中長期的な経済成長政策として取り組まれてきたが、近年では日本政府や民間企業各社でもサーキュラーエコノミーに向けた取り組みが本格化し始めている。今回はそうした事例を過去記事から振り返る。

日本でも動き始めた「サーキュラーエコノミー」

 サーキュラーエコノミーとは、廃棄物を出さずに資源を循環させる、経済の仕組みのことだ。従来の経済活動では廃棄されていた製品や原材料を「新たな資源」として再利用することから、循環型経済とも呼ばれている。

 サーキュラーエコノミーは特に欧州諸国において中長期的な経済成長政策と位置づけられている。2015年12月に定められた「サーキュラーエコノミーパッケージ」では、推進に向けた財政支援などの行動指針と、「30年までにEU加盟国の各自治体の廃棄物の65%、容器包装廃棄物の75%をリサイクルする」などの具体目標が設定された。日本でも20年5月に経済産業省が「循環経済ビジョン2020」を公表するなど、サーキュラーエコノミーを目指す動きが本格化し始めている。

 この記事ではサーキュラーエコノミーに関する過去記事から、特に日本企業の動きをピックアップして紹介する。

ゲームチェンジが始まった、日本は脱炭素社会をめぐって巻き返せるか

 サーキュラーエコノミーをはじめ、脱炭素社会を巡る政策で欧州に後れを取る日本。グリーンな経済活動を厳密に定義する「タクソノミー(分類法)」など多くのルールがEUにとって有利につくられており、この分野で日本企業が強みを持つハイブリッド車(HV)でさえ、新たな基準では不利に扱われる。

 もっとも、こうした状況に置かれている国は日本ばかりではない。今後日本が巻き返していくためには、同じ境遇にあるアジアの国々と協力して、グローバルなルール形成に積極参加することが欠かせないという。

H&Mも認めた再生素材 「サーキュラーエコノミー」本格離陸へ

 一方、民間レベルでは日本企業がサーキュラーエコノミーをリードするケースも見られる。たとえば伊藤忠商事の再生素材「RENU(レニュー)」がその一例だ。

 一般的なリサイクルポリエステルが使用済みペットボトルを物理的に溶かして糸にするのに対し、RENUは生産時に出た生地の切れ端や古着を分子レベルまで分解・再重合して繊維にするため、染色や張り、加工のしやすさでより高品質だという。また「ペットボトル」に依存しないため、将来的に食品メーカーと競合しないのもメリットだ。食品メーカーが使用済みペットボトルの再生に乗り出しており、将来的に衣料品に回る分が制限される可能性があるからだ。

セブン&アイが容器再生工場、リサイクルに本腰

 一方、「ペットボトル」のリサイクル事業に本格的に乗り出したのはセブン&アイ・ホールディングス(HD)。20年10月、環境サービス大手のヴェオリア・ジャパン(東京・港)、三井物産との合弁会社を設立し、22年には年間約2万5000トンのリサイクルPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂を生産するという。

 セブン&アイHDでは19年5月に発表した「GREEN CHALLENGE(グリーンチャレンジ)2050」に基づいて、サーキュラーエコノミーの実現を目指したプラスチック対策を進めてきた。新たに発表したリサイクル事業は、そうした取り組みの一環だ。

ユニリーバと花王、競合が手を組み「容器から容器」リサイクル

 21年6月、使用済みプラスチック容器の回収を始めたのは、ユニリーバ・ジャパンと花王。2社が協働してリサイクルボックスを設置し、回収した容器を新品の容器にリサイクルする「水平リサイクル」に取り組んでいる。

 競争関係にある両社だが、プラスチックごみの削減については「『競争』と『共創』の領域をしっかり線引きし、『共創』の領域では密に連携しながら進めている」(ユニリーバ)という。花王は今後「他のメーカーが加わる可能性もある」ともみており、サーキュラーエコノミーへの参加を広く呼びかけていく考えだ。

政投銀がESGの新型ローン、目標達成まで“伴走”

 企業によるサーキュラーエコノミーの取り組みを後押しするのが「ESG関連ローン」だ。ESG(環境・社会・企業統治)に関する目標を設定し、達成状況に応じて利率が変わるのが特徴だ。

 日本政策投資銀行(DBJ)は20年12月2日に三菱ケミカルホールディングスと300億円の「サステナビリティ・リンク・ローン契約」を締結。同社が設定したESG目標は、廃プラスチックのリサイクル量だ。資金はケミカルリサイクルなどのサーキュラーエコノミーに投資する。10年の契約期間のあいだ「1年に1回以上の進捗報告」を求めるなど、貸し手・借り手が一体となって目標達成を目指していく。

最後に

 サーキュラーエコノミーは、脱炭素社会の実現を支える一手だ。すでに欧州ではルールづくりが本格化しており、これらが今後の国際標準となっていく可能性もある。日本でも民間企業ではサーキュラーエコノミーに対応した動きが活発化しているが、政府レベルの動きは始まったばかりだ。新たな国際基準に乗り遅れることがないか、官民の今後の動きが注目だ。

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