ICT(情報通信技術)を学校教育に活用するエドテック。2012年ごろから本格的な取り組みが始まり、2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、さらに注目を集めている。今回はこれまでに掲載したエドテック関連の記事の中から、具体的なサービスや企業の動向について紹介する。

新型コロナでますます注目される「エドテック」

 教育現場でのICTの活用を意味する「エドテック(EdTech)」。教育、つまりエデュケーション(Education)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語だ。日本では2012年ごろから普及が本格化したといわれるが、特に20年以降は、新型コロナウイルスの感染拡大でより一層注目を集めている。

 日本の教育では従来、教師が黒板を使って授業を行う「一斉教育」が一般的だった。これに対しエドテックを利用した教育では、パソコンやタブレットを使って子どもたち一人ひとりの理解に合わせた柔軟な教育ができる。またエドテックには教師の負担を軽くする支援サービスもあり、これによって、教師が質の高い教育を行いやすくなるという。

 ここでは、エドテック関連のいくつかの記事を基に、エドテックが教育現場にもたらすメリットと、エドテック関連企業の具体的なサービスについて振り返ってみる。

ついに咲くか「IT×教育」

 「MOOC(Massive Open Online Courses:ムーク)」と呼ばれる大規模公開オンライン講座をはじめ、米国ではエドテックの活用が盛んだ。大学はもちろんのこと、米グーグル、米アマゾン・ドット・コムといったIT大手からスタートアップにいたるまで、様々な民間企業がエドテック関連サービスに参入している。

 市場参入が活発な一方、実際の教育現場では比較的早い段階からEラーニングやタブレットの導入は進んだものの、エドテックの効果を疑問視する声もまだ多い現状がある。

教えるのは先生でなく「デジタル」の仕事に

 エドテックが教育現場で普及し始めている(2018年当時)。教育にICTを導入することで、成績管理や学校行事の準備、学級会計などの「校務」や、教材の作成や学習内容の提示、学習活動の成果をテストなどで測るといった「教える」業務が効率化され、結果として「教員の経験の差によらずに質の高い指導を効果的に実施できる」ためだ。

 これからの教師には「教える」ことそのものよりも、「学習のサポートをする」メンターとしての役割が期待されるようになる。

不退転の覚悟が開いた教育IT

 いち早くエドテックに取り組んだ企業の一つがベネッセホールディングスだ。2012年創業の教育アプリ開発会社にソフトバンクと共同出資し、iPadなどを授業に活用できる教育向けアプリ「Classi(クラッシー)」を提供している。

 18年度には、日本の高校の約4割にあたる2000校超がClassiを導入した。基本はアプリの有料プランのみだが、端末の貸し出しや通信回線の整備などもできることが、導入校の拡大に寄与しているという。公立高校などでは通信回線といった環境が整っていないところもあるからだ。

教育現場のデジタル化、授業ツールで後押し

 従業員数約30人(2020年時点)のベンチャー企業、LoiLo(ロイロ、横浜市)もタブレット端末などを活用したオンライン授業支援サービス「ロイロノート・スクール」を提供している。

 ロイロはもともと、動画編集ソフトの開発を行っていた。動画編集ソフトの操作性が高く、NHKの目に留まったことがエドテック分野に参入するきっかけとなった。教育番組の知見があるNHKとの連携の中で、学校市場に売れる可能性に気づいた。10年に初期サービスをリリースし、その後はオンライン授業に関心のある先生を集めて模擬授業を展開する勉強会を定期的に開催するなどして「指名買い」を勝ち取ってきたという。

リクルート、スマホ学習「スタディサプリ」 失敗からの急成長

 リクルートもエドテックに参入している。授業動画の配信サービス「スタディサプリ」は、大学受験に向けた自習教材として、全国の高校の4割にあたる約2000校で使われている。

 スタディサプリがスタートしたのは2012年。だが当初、利用者の反応は薄く、手応えはなかったという。不振の原因を「値付け」と「50分という動画の長さ」にあると考えた同社は、サブスクリプション方式の導入や10分程度の動画を増やすことで普及の壁を突破した。

オンライン教育に冷や水、ベネッセHD子会社で不正アクセス

 新型コロナウイルスの感染拡大でエドテックの需要が拡大する一方、トラブルも発生している。2020年4月、前出の教育向けサービス「Classi」を運営するベネッセホールディングス子会社は、同サービスが不正アクセスを受けて、教員や保護者を含む全利用者約122万人分のユーザーID、パスワードを暗号化した文字列、2031人の教員が作成した自己紹介文が流出した可能性があると発表した。

 コロナ禍で外出の自粛や学校の休校が続いた中で、教育の命綱として期待がかかっていたオンライン教育に冷や水を浴びせる格好となった。

最後に

 新型コロナウイルス感染拡大の中でオンライン教育の需要が拡大し、エドテックの活用が広がっている。ベネッセホールディングスやリクルートといった大手企業のサービスなどを中心に、利用する学校も着々と増えている。今後も拡大が予想されるエドテックだが、一方で不正アクセスのリスクが増している。セキュリティー意識向上と不正アクセス対策の徹底も導入する学校側の課題となりそうだ。

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