創業240年の歴史と国内最大の売上高を誇る武田薬品工業。かつてはドリンク剤・ビタミン剤の「アリナミン」で有名だったが、現在は医薬品の売り上げが9割を占める純粋な製薬会社だ。今回はシャイアーの巨額買収をはじめ、ここ数年の同社の経営戦略について過去記事から紹介していく。

国内最大の製薬会社「武田薬品」

 日本国内で第1位の売上高を誇り、国内5大医薬品メーカーのひとつに数えられる「武田薬品工業」。創業は1781年(天明元年)に遡り、240年の歴史を持つ老舗企業だ。

 武田薬品の主力製品は医療用医薬品だが、過去には化学製品や調味料などを手がけていたほか、ドリンク剤・ビタミン剤で有名な「アリナミン」もかつては同社の看板製品だった。これらの事業は次々と子会社や他社に譲渡され、現在は本業である医薬品が売り上げ全体の9割を占めている。今後は睡眠障害に対応する薬品や血液製剤、抗がん剤、デング熱予防ワクチンなどの分野を開拓することで、さらなる成長を図ろうとしている。

 この記事では近年の武田薬品の動きを中心に、過去記事から同社の経営戦略を振り返っていく。

タケダ巨額買収で再編に号砲

 アイルランドの製薬大手、シャイアーの買収を発表した武田薬品。買収後の売上高は3兆円を超え、日本の製薬会社では初となる「世界トップ10」に入りを果たすという。

 買収の狙いは「創薬力の強化」と「市場の拡大」だ。シャイアーは希少疾患の分野で強みを持っており、そのノウハウや患者・行政との接点が武田にとって大きな財産になると判断された。

武田薬品、財務体質改善へ大規模買収後初の事業譲渡を発表

 武田薬品がシャイアーの買収に要した資金は、約6兆8000億円。これに伴う有利子負債を削減するため、同社は2種類の医薬品について事業譲渡を行うという。

 譲渡対象となるのはドライアイ用点眼薬の「シードラ(Xiidra)」と、手術用パッチ剤の「タコシール(TachoSil)」だ。どちらも武田薬品にとっては「戦略領域外」の製品であり、今回の事業譲渡は負債の解消だけでなく事業領域の特化にも貢献する。

武田薬品が日本の血液製剤ビジネスの台風の目に

 2019年10月の決算会見で「19年度に予定していた負債は上期に繰り上げて返済した」と発表した武田薬品のクリストフ・ウェバー社長。今後は引き続き統合作業を進めていくとともに、旧シャイアーが手がけていた血漿(けっしょう)分画製剤事業の本格化を目指す。

 シャイアーの買収により血液製剤の分野では世界有数となった武田薬品は、米国で150カ所、欧州には30カ所の採血センターを設け先行するライバルを負っている。今後は日本の血漿分画製剤市場も視野に入れ、事業を拡大していく考えだ。

武田 アリナミンなど大衆薬売却へ。4000億円規模も

 武田薬品が、高い知名度を持つ「アリナミン」や風邪薬「ベンザブロック」を含む一般用医薬品(OTC)事業を売却する。売却金額は4000億円程度と予想され、これによりシャイアー買収によって悪化した財務体質の改善を急ぐ考えだ。同社はすでに点眼薬などの非中核事業を売却しているほか、中南米事業の一部を約900億円で売却することも発表、さらに大阪市内にあった本社ビルなども手放している。

 「選択と集中」によって、より利益率の高い医療用医薬品に経営資源を振り向ける武田薬品。今回の売却がOTC業界の再編につながるかどうか、注目されている。

成長のための別れ、武田薬品がOTC事業譲渡

 武田薬品工業が手放すOTC事業の譲渡先が、米投資ファンドのブラックストーン・グループに決定した。ブラックストーンによる評価額は2420億円だという。当初より非中核事業の売却目標を計100億ドルとしてきた同社だが、今回の売却によって目標額は達成される見込みだ。

武田薬品、2030年度売上収益5兆円に自信たっぷり

 2020年12月に新薬候補品に関する説明会を開催した武田薬品。プレゼンテーションの中でクリストフ・ウェバー社長は「2030年度までに売上収益5兆円の目標達成に自信を持っている」と語り、今後の成長を強調した。

 同社を支える柱と期待されているのは、「ウエーブ1」と称される12の開発候補品だ。その中にはナルコレプシーという睡眠障害を対象とする薬品や、血栓性血小板減少性紫斑病の治療薬、血液がんに対する抗がん剤、デング熱予防ワクチンなどが含まれ、いずれも10億ドル以上の大型品になりうるという。

最後に

 国内最大手の製薬会社であり、世界でもトップ10に入る武田薬品。2018年に話題を集めたシャイアーの巨額買収をきっかけに、非中核事業を手放すなど「選択と集中」を進めている。同社では今後世界的な需要が高まると予想される血液製剤などを中心に、より利益率の高い医薬品開発を進めていくという。日本を代表する製薬会社の今後に、引き続き注目していきたい。

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