度重なる統廃合を経て、日本最大の鉄鋼メーカーとして誕生した日本製鉄。中国メーカーに端を発する鉄鋼不況や新型コロナウイルスによる需要減少が続く中、生き残りをかける同社はさらなる経営統合や経営合理化を進めている。今回は日本製鉄に関する過去記事から、注目すべきトピックを紹介していく。

日本最大の鉄鋼メーカー「日本製鉄」

 日本最大の鉄鋼メーカー、日本製鉄。同社は2012年に新日本製鉄(新日鉄)と住友金属工業の合併によって誕生した(当時の社名は新日鉄住金)。その由来は古く、1934年に発足した日本製鉄(日鉄)までさかのぼる。

 新日鉄と住友金属工業の合併は「世紀の大合併」と呼ばれ、当時大きな話題となった。その背景には、原料コストの急騰や円高、そして台頭しつつある新興国の鉄鋼メーカーの影響、2011年の東日本大震災で発生した電力問題など、さまざまな問題・課題があったという。

 とはいえ国内最大となった後も、日本製鉄をめぐる経営環境は依然として厳しいままだ。中国メーカーによる過剰生産で世界的な鉄鋼デフレが発生し、新型コロナによる需要の落ち込みがそれに追い打ちをかけている。

 今回は困難な経営環境で生き残りを図る日本製鉄の歩みと取り組みについて、過去記事から振り返っていく。

日鉄が日新製鋼を吸収合併 「聖域なき生産再編」の号砲か

 2020年4月をめどに、日鉄日新製鋼(旧日新製鋼)を吸収合併すると発表した日本製鉄(19年10月時点)。17年に日新製鋼を子会社化した際には「会社として残す」としていただけに、関係者の間に驚きが広がっている。

 吸収合併の理由について日鉄幹部は「鉄鋼を取り巻く環境が急変しており、それに対応するため一体運営の強化を優先した」と語る。近年の米中貿易摩擦や新興国での自動車販売の不振などにより、鋼材需要は低迷しているといい、同社では、今後一層の「生産再編」も予想される。

日本製鉄が高炉一時休止、新型コロナが追い打ち JFEも検討

 2020年4月、日本製鉄が同社の高炉2基の操業を一時休止すると発表した。新型コロナによる鋼材需要の低下を受けて、粗鋼生産能力を1割減らすのが目的だ。

 今回の措置は「需要が戻れば数カ月後に再稼働する」ことが前提だが、コロナ禍が収束する見通しが立たないうえに、それ以前からある米中貿易摩擦や新興国通貨安などの要因も解消されておらず、再稼働の可能性は不透明なままだ。

構造不況をコロナ禍が追い打ち、鉄鋼オールジャパン構想が浮上

 新型コロナが鉄鋼業界に深刻な影響を与える中、投資銀行による「日本製鉄詣で」が過熱しているという。アフターコロナを見据えて、鉄鋼事業や会社そのものの統廃合を模索するためだ。その中には日鉄と神戸製鋼、JFEによるオールジャパンの協業構想もある。

 会社ぐるみの再編には独占禁止法のハードルが立ちはだかるものの、3社とも巨額の赤字を計上している現状や、中国勢の巨大化による世界的なデフレに立ち向かうには「大変革」が欠かせない。

日本製鉄、電磁鋼板に「チャイナショック」の試練

 日本製鉄が電磁鋼板への積極投資を進めている。生産台数が増加するハイブリッド車や電気自動車に不可欠な電磁鋼板に力を入れることで、業績の回復を図るのが狙いだ。

 だが中国メーカーはこの分野でもシェアを伸ばしつつある。日鉄の橋本英二社長は「コロナ収束後、地産地消、自国産化の流れがますます広がる」と予想するが、今後の需要をしっかりキャッチできるかどうかは、直面しているチャイナショックをはね返せるかどうかにかかっているという。

日本製鉄、海外M&Aの火は落とさず

 新型コロナで鋼材需要が低迷する中、日本製鉄ではコロナ後を見据えて、海外鉄鋼会社のM&A案件を探し始めている。対象地域は「間違いなく需要が伸びる」インドをはじめ、中国メーカーが最大サプライヤーとなっているベトナムやインドネシアなどのASEAN諸国だ。

 一方、日本国内では「再編統合の考えはない」と同社の橋本社長は語る。それどころか、高炉の一時休止に加えてさらに「追加の構造改革」も検討する考えだ。

背水の製鉄能力2割削減、日本製鉄が挑む2つの難題

 2021年3月、日本製鉄が2025年度までの経営計画を発表した。柱となるのは国内の縮小と海外事業の強化だ。具体的には国内粗鋼生産能力を2割減らすとともに、ASEANメーカーとのM&Aを進めていく。

 加えて同社では、石炭の代わりに水素を使う「水素還元製鉄」への投資も進めていく考えだ。他社よりも先に脱炭素の製鉄技術を開発することで、鉄鋼業界では達成が難しいとされる「カーボンニュートラル」の一番乗りを目指していきたいという。

日本製鉄、中国・宝山鋼鉄の「爆速」研究開発の足音が聞こえる

 2021年5月の決算説明会で「トンネルをなんとか抜けつつある」と語った日本製鉄の橋本社長。徹底した固定費の削減により、業績の最悪期は脱したとの認識だ。今後は自動車メーカーなど大口需要家との交渉で「鋼材値上げ」を働きかけ、業績のV字回復を狙っていく。

 一方「カーボンニュートラル」に向けた技術開発では、同じくゼロカーボンスチールに注目する中国政府や中国メーカーとの競争が始まっている。新技術の開発には「当面想定できる最小限の水準で約5000億円の研究開発費がかかる」というが、この資金を捻出するためにも本業の「稼ぐ力」をしっかり立て直していく必要がある。

最後に

 数度の経営統合を経て、日本一の鉄鋼メーカーとなった日本製鉄。だが米中貿易摩擦や中国メーカーの台頭、新型コロナによる需要低下により業界ぐるみで厳しい経営が続いている。いまだに新型コロナの収束は見通せず、中国メーカーとの競争は激しさを増す一方だ。日本の強みである鉄鋼業を守るためにも、日本製鉄の経営改革に期待していきたい。

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