法律に基づく特殊法人として、国産たばこの製造を独占的に手がける日本たばこ(JT)。たばこの他にも医薬品や食品などを製造・販売するものの、近年の健康ブームや新型コロナの影響により厳しい経営環境に置かれている。ここでは日本たばこに関する過去の記事から、同社の歩みを紹介する。

国産たばこの製造を一手に担う「日本たばこ」

 日本たばこ(日本たばこ産業:JT)は、たばこの製造・販売を行う特殊会社だ。同社の前身は、1898年に設置された大蔵省専売局までさかのぼる。その後1949年に日本専売公社として分離独立し、1985年に日本たばこ産業株式会社として民営化(特殊法人化)された。

 日本たばこには、法律(たばこ事業法)により国内産の葉タバコ全量買い取り契約が義務付けられる一方で、たばこ製造の独占が認められている。同社はたばこ以外にも、医療用医薬品や加工食品も取り扱っており、過去には飲料の製造・販売も行っていた。またバレーボールやゴルフ、将棋といった、スポーツ・文化の支援活動にも力を入れている。

 今回の記事では、日本たばこの事業展開と、世間の健康ブームや新型コロナが同社に及ぼす影響について、過去記事から振り返っていく。

30年先見据え自己変革

 民営化から30年が経過する日本たばこ(2016年当時)。社長の小泉光臣氏(当時)は入社直後から民営化のプロジェクトに参加し、同社の成長を見守り続けてきた人物だ。

 日本たばこはこの30年間に海外進出や事業多角化などさまざまな経営改革を推進してきた。だが同社の株式は3分の1を国が保有しており、完全民営化はいまだに道半ばだ。「完全民営化はあくまで国が判断すること」「国が大株主だからといって、私の経営者としての意思決定や判断が曲げられるという影響は全くない」と小泉社長は語るが、国が大株主で経営が安定しているという見方があることについては「悔しい」という。

 今後は日本市場のテコ入れを中心に自己変革を続け、「10年ぐらい先は世界ナンバーワンのたばこ会社を目指す」というのが小泉社長の考えだ。

タバコ農家が問うJTの行方

 縮小するたばこ市場に、若いタバコ農家を中心に不安の声が上がっている。「JTがどの方向に進んでいくのか、少しでいいから方針を示してほしい」との要望に対しても、日本たばこの小泉社長は明確な回答を避けているという。

 日本たばこの株価は5年で約3倍に上昇し、時価総額は約8兆8000億円(2016年5月末時点)に上るが、国際的なたばこの規制強化と国内ニーズの減少を受けて、同社の成長が危ぶまれている。

JT、油断が招いた外資席巻

 加熱式たばこの販売競争で出遅れた日本たばこ。その背景には「ここまで加熱式たばこの市場が伸びると思っていなかった」という同社の油断がある。

 加熱式たばこで先行するのは米フィリップ・モリス・インターナショナルの「IQOS(アイコス)」だ。同製品は、2014年の発売からたった1年で、すでに国内たばこ市場の10%を押さえたという。

 紙巻きたばこで60%のシェアを持つ日本たばこだが、加熱式たばこで外資に後れを取ったことで、そのシェアが脅かされつつある。

JT、加熱式シフトに透けるリスク

 加熱式たばこを経営の柱に据えた日本たばこ(2018年時点)。寺畠新社長の下、出遅れていた加熱式たばこで巻き返しを図ろうとしている。一方、迎え撃つ米フィリップ・モリス・インターナショナルの日本法人は「日本で最大のたばこ会社になる」と強気だ。

 日本たばこは加熱式たばこの「プルーム・テック」を拡販するとともに、さらなる新商品の投入を目指す。だが加熱式たばこに力を入れれば入れるほど、すでに6割のシェアを持つ紙巻きたばこ市場が縮小しかねず、同社の道のりは困難の度合いを増している。

アイコス足踏みの間隙突く、JTの新商品戦略

 2019年1月、日本たばこが加熱式たばこの新商品「プルーム・テック・プラス」と「プルーム・テック・エス」を発売した。先行する米フィリップ・モリス・インターナショナルの「アイコス」が米国での販売認可に手間取る中、その間隙を突く形で国内シェアの拡大を図る構えだ。

新型コロナがあぶり出した喫煙リスク

 新型コロナが世界的な感染拡大を続ける中、「喫煙によって感染・重篤化リスクが高まる」ことが判明した。東京都知事選で再選を狙う小池氏(当時)も新型コロナウイルス対策と並んで受動喫煙対策を強調し、飲食店等の喫煙禁止の流れも加速している。

大規模リストラのJT、コロナで迫られるたばこの次

 2021年2月、日本たばこが国内たばこ事業のリストラを発表した。46歳以上の社員1000人の希望退職を募るほか、九州工場やグループ会社の工場を閉鎖するという。最終的に、2022年3月をめどに3000人規模の人員削減を行う予定だ。

 こうした困難な状況を生み出している原因のひとつは新型コロナだ。喫煙による重症化リスクに加え、国境を越えた移動の制限によって免税店でのたばこ販売が大幅に減少。2020年12月期の売上収益と営業利益は2期連続で減収減益となり、そのうち新型コロナの影響による減益は300億円に上る。

 「これからの1年間はJTにとって最も大事な1年になる。2021年から再スタートを切っていく」と語る寺畠社長。だが長期的に世界のたばこ消費量が減るなど、今後も日本たばこにとって困難な経営環境が続いていく。

最後に

 大蔵省専売局時代から国産たばこの独占製造を手がける日本たばこ。国内のたばこ市場で6割以上のシェアを持つだけでなく、海外展開や事業多角化を行うなどして成長を続けてきた。だが世界的な健康ブームや新型コロナ感染リスクの指摘などにより、日本たばこの経営環境は急速に悪化している。同社がどのようにして経営再建を果たすのか、引き続き見守っていきたい。

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