ウクライナ侵攻を受けて、日本や欧米諸国はロシアへの経済制裁を開始した。制裁内容は国際取引の停止に加え国際銀行間通信協会(SWIFT)の決済システムからも締め出すというものだが、効果については意見が別れている。今回は経済制裁下でのロシア経済の動きや専門家の意見を過去記事からピックアップする。

日本や欧米諸国からの経済制裁に揺れる「ロシア経済」

 ウクライナ侵攻をめぐる経済制裁により、一定のダメージを受けているとされるロシア経済。日本や欧米向けのエネルギー輸出をはじめ国際貿易の多くが事実上ストップし、国際銀行間通信協会「SWIFT」の決済システムからも締め出されたことで外貨獲得は困難になっているという。実際、ロシア連邦統計局が2022年8月に発表した4~6月期のGDP(国内総生産)は5四半期ぶりのマイナスとなっている。

 一方で、ロシアに対する経済制裁は大きな効果を上げていないとの声も少なくない。ロシア国債は事実上の「デフォルト(債務不履行)」と認定されたものの、一方で高騰したエネルギー価格により、輸出収益が拡大し、ルーブル高が進行しているためだ。

 この記事ではロシアのウクライナ侵攻がロシア経済にどのような影響を与え、今後どのようになると考えられているのか、最近の記事を通して振り返る。

プーチンの戦争:ゆがんだ経済構造の下、無謀な決断は何をもたらす?

 00年〜08年、ロシアではGDPが平均年7%を記録するなど高度経済成長時代を迎えていた。しかし08年の世界金融危機以降は次第に活気が失われ、20年からは新型コロナウイルスがそれに追い打ちをかけている。

 しかしウクライナ侵攻に伴う日本や欧米の経済制裁が、ロシアに深刻なダメージを与えるかどうかについては疑問だ。ロシア経済の専門家は「ロシアは危機を経るたびに、政府系ファンドを創設したり金利政策の有効性を強化したりして一種の危機耐性を高めてきた」と指摘する。

自ら成長の芽を摘むロシア 原油・天然ガス、買い手の離反広がる

 経済制裁がロシア経済にとって大きなダメージになるという意見もある。特にロシア産原油は輸出量の約30%に買い手がつかなくなっているといい(22年4月時点)、中国やインドなど経済制裁に参加していない買い手の動きに注目が集まっている。

 ただし、欧米の制裁は短期的には効果があったが、中長期的にはロシアを強靱(きょうじん)化した可能性もあるともみられている。

「西側制裁で失業」、ロシア労働者の新たな現実

 一方、ロシア国民の日常生活には経済制裁の影響が強く表れている。欧米系の企業が撤退したことで職を失った人も少なくない。専門家によると欧米企業によるロシア国内の雇用者数は「米マクドナルドが6万人余り、仏自動車大手ルノーが4万5000人、スウェーデンの家具大手イケアが1万5000人」に上り、これらを含む欧米企業の多くが撤退すれば「100万人近くの雇用が直接失われる」という。

ロシア中銀の女性総裁、「ルーブル防衛」ミッションクリア!

 22年4月に入り、経済制裁発動を受けて急落していたロシアの通貨ルーブルが侵攻前の水準に回復した。「ロシア経済を救う」立役者となったのは、ロシア中央銀行のエルビラ・ナビウリナ総裁だ。ナビウリナ氏は15年のユーロマネー誌で「今年の中央銀行総裁」に選ばれたほどの人物で、欧米金融会における知名度も高いという。

ロシア国債「デフォルト」認定でも通貨ルーブルが底堅いワケ

 世界の主要金融機関で構成するクレジットデリバティブ決定委員会(CDDC)が、22年6月1日に「ロシアのドル建て国債の利払いに不履行が生じた」と認定した。これは事実上のデフォルト認定で、これによってロシア経済は一層困難な状態に追い込まれたことになる。しかし一方でロシア通貨ルーブルの相場は侵攻開始時の水準を上回る勢いを取り戻しているという。

結局、ロシア国債はデフォルトしたのか?

 CDDCの発表とその後のロシア経済の動きをめぐり、多くの市場関係者からは「結局、ロシア国債はデフォルトしたのか?」という疑問の声が聞かれる。ロシア当局は再三にわたり「返済能力も意欲もあるが、西側諸国が意図的にこれを妨害している」との主張を繰り返しているが、実際にロシア国債自体はまだ債務不履行に陥っているわけではなく、今回の「事実上のデフォルト」は正式なデフォルトではなく「ポリティカル・デフォルト(政治的デフォルト)」のようなものだという。

最後に

 ロシアによるウクライナ侵攻と日本や欧米諸国の対ロ経済制裁は、失業者の増加などロシア経済に少なからぬ影響を与えてきた。しかしプーチン大統領が侵攻続行を断念するほどのダメージを与えてきたかどうかは疑問だ。依然として続く戦争と経済制裁によって今後のロシア経済がどうなるのか、そして日本経済がどのような影響を受けるのか、まだまだ注視していく必要がある。

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