一国二制度とは、中国政府が香港や台湾を統治する仕組みとして考案した制度だ。実際、香港では1997年の返還より、一国二制度による広範囲な自治が認められてきた。しかし近年では中国政府による締め付けが強まっており「一国二制度は失敗」との声も聞かれる。今回は一国二制度をめぐる過去記事を振り返っていく。

香港・台湾を揺るがす「一国二制度」

 一国二制度とは、中国が自国の一部とする地域に中国本土とは異なる制度を適用することを指す。もともとは台湾統一に向けた仕組みとして考案されたが、現時点では1997年7月に英国から返還された香港に対し適用されている。

 香港における一国二制度では、中国政府が香港の憲法にあたる香港基本法の解釈・改正権や政府高官の任命権を握る一方、香港を「特別行政区」として独自の行政、立法、司法権を認め、通貨やパスポートの発行権、さらには中国本土では認められない言論・集会の自由も与えている。

 中国はこの自治の仕組みを50年間維持すると約束したものの、中国政府による締め付けは年々厳しさを増している。これに対し台湾の蔡英文総統は「香港の一国二制度は失敗」と述べ、台湾として一国二制度の受け入れを拒否する考えを明らかにした。

 この記事では一国二制度をめぐる中国と香港、中国と台湾の問題について、過去記事からピックアップする。

「何でもアリ」が合法に、香港版国家安全法は何が衝撃なのか

 一国二制度が適用される香港で、中国政府による締め付けが強まっている。2020年には中国の全人代が香港立法府の頭越しに「香港版国家安全法」の策定方針を示すなど、一国二制度の「破壊」ともいえる行動に波紋が広がった。

香港国家安全法、「中国への賛同」を迫られる外資企業

 これまで香港では、「経済と政治は無関係」というのが、企業が活動する際の基本的な原則だった。しかし、香港国家安全法はその原則も脅かしている。これに対し英国、オーストラリア、カナダなどは「深い懸念」を表明しており、同法が撤回されない場合は香港住民に英国の市民権取得を可能にする方針を明らかにした。

香港を脱出する人とマネー 東南アジアが装う「無関心」

 一国二制度が崩壊するという危機感から香港住民の国外避難が始まっている。行き先のひとつとなっているのは、長年にわたりアジアの金融センターとしての地位を香港と競ってきたシンガポールだ。また富裕層からは英国やオーストラリア、カナダなども移住先の候補として人気だという。一方こうした動きに対し、東南アジアの国々は目立った反応を示していない。

外交と軍事のレッドラインを試し合う米国と中国

 中国と台湾の間では、一国二制度を前提とした「92年コンセンサス」という暗黙の了解があったとされる。しかし2016年に就任した民主進出等(民進党)の蔡英文総統は「92年コンセンサス」の受け入れを拒否。それをきっかけとして、中国による軍事統一の現実味が増している。

中国はなぜ「2020年、台湾武力統一」を目指すか

 台湾の扱いをめぐり、中国が攻勢を強めている。中国に進出する外資系企業に対して「台湾、香港、チベットを国扱いしない」ことを確約させている。また、「2020年に台湾を武力で統一する可能性がある」と指摘する声も聞こえてくる。

NATOが対ロ・対中の二正面作戦へ

 台湾や香港に対する中国政府の攻勢に、NATO(北大西洋条約機構)が警戒感を強めている。2022年6月にスペインの首都マドリードで開催された首脳会議では「中国が公にしている野心と脅迫的な政策は、我々の利益、安全、価値への挑戦だ」と初めて表明した。

 ドイツのショルツ政権も香港について「『一国二制度』の原則を回復しなくてはならない」と述べ、中国に対し強硬な態度を打ち出している。

ペロシ議長の訪台で高まる日米同盟発動のリアル

 2022年8月に、米議会下院のナンシー・ペロシ議長が台湾を訪問して蔡英文総統と会談を行った。これに対し中国は激しく反発し、軍事演習として弾道ミサイル11発を台湾方面に撃ち込むなど威嚇行動に出ている。米中の軍事的な対立がこのまま本格化すれば、米軍基地を抱える日本にも大きな影響を与えかねない。

最後に

 台湾統一に向けた仕組みとして、また香港統治の原則として採用されてきた一国二制度。しかし今、香港では一国二制度が崩壊しつつあり、台湾に対しても中国による軍事統一の懸念が現実味を増している。

 特に台湾をめぐる米中の衝突は日本にも大きな影響を与えるだけに、今後の事態の推移に注目していきたい。

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