宇宙空間を活用するビジネス全般を指す「宇宙ビジネス」。ロケットや人工衛星の打ち上げなどが代表的だが、近年では民間企業によるユニークな取り組みも増えており、新たな産業分野として注目を集めている。今回はこれまでの記事から、宇宙ビジネスの主な事例について紹介する。

新たな産業分野として期待が集まる「宇宙ビジネス」

 宇宙ビジネスとは、ロケットの打ち上げや人工衛星を活用したサービスなど、宇宙空間を活用するビジネス全般を指す言葉だ。2010年代に入り、宇宙産業の市場規模は急速に拡大している。

 宇宙ビジネスには各国の民間企業も数多く参入しており、その中には宇宙ベンチャーと呼ばれる新興勢力や、異業種からの参入組も少なくない。こうした企業はそれぞれの強みやアイデアを生かして独自のサービスを開発しており、宇宙ビジネスは新たな産業分野として成長することが期待されている。

 この記事では宇宙ビジネスの可能性や宇宙ビジネスに参入する企業、業界の将来性などについてこれまでの記事から紹介していく。

ベゾス氏VSマスク氏、2人の天才が開く宇宙ビジネス勃興の扉

 近年の宇宙ビジネスをけん引するのが、米スペースXのイーロン・マスク氏と米ブルーオリジンのジェフ・ベゾス氏だ。もともとマスク氏はテスラ、ベゾス氏はアマゾン・ドット・コムを創設したカリスマ経営者として有名だが、どちらも膨大な資産を宇宙事業に投入することで業界の主導権を握ろうとしている。

 2人のカリスマの戦いで鍵を握る要素は、1件当たりの受注金額が圧倒的に多い政府系の仕事をどれだけ勝ち取れるかなど、大きく3つあるという。

マスク氏がいない日本の宇宙ベンチャー、目指す「グレートニッチ」

 マスク氏やベゾス氏のような圧倒的な資金力を持たない日本のベンチャーにとっても、宇宙ビジネスは有望な市場となりうる。狙いはまだ参入者が少なく、将来の成長が期待できる「グレートニッチ」の開拓だ。

 そうしたベンチャーの1つ、スペースウォーカー(東京・港)は小型で再利用可能な宇宙船を高頻度で繰り返し使う「再利用型」の輸送サービスの開発を目指している。小型衛星打ち上げや宇宙旅行などでの需要を見込んでいるという。

産業ピラミッドの転換を 新顔に無限の可能性

 日本では従来、三菱重工業やNEC、三菱電機といった宇宙産業関連企業が宇宙ビジネスを主導していた。しかし現在、トヨタやソニーといった異業種からの参入が相次いでいる。こうした変化の背景にあるのは「官から民」への世界的な動きや技術変革だ。

 これに対し日本の宇宙産業は宇宙航空研究開発機構(JAXA)を頂点にした「ピラミッド構造」のままで、「技術面を含めて欧米に後れを取り始めている」と指摘されている。

ソニーが「宇宙を解放する」、パナ社員は「航空宇宙事業本部」設立

 異業種からの参入組の1つ、ソニーが取り組むのは宇宙空間を利用した「エンタメ」だ。その内容は、人工衛星に搭載した4K動画撮影が可能なカメラをスマートフォンから操作することで、これまで宇宙飛行士が独占してきた「宇宙から地球を眺める」体験を気軽に味わえるというもの。

 一方パナソニックは、これまで非公式に製造してきた国際宇宙ステーションでの実験に使う掃除機や、宇宙船用のLEDなどの実績をきっかけに「航空宇宙事業本部」を設立し、本格的な宇宙ビジネスへの参入を図る。

宇宙旅行も安全に デブリ除去で先陣、アストロスケール

 「宇宙のSDGs」を掲げて独自サービスを開発するのは、日本発のスタートアップ、アストロスケールホールディングスだ。同社は「デブリ」と呼ばれる宇宙ごみ除去の事業化を目指しており、2021年3月には世界初のデブリ除去衛星の打ち上げに成功。同社のサービスはすでに実証実験段階に入っている。

 「30年までには当たり前のようにデブリ除去サービスが活用される世界をつくりたい」と同社の岡田光信創業者兼最高経営責任者(CEO)は語る。

大分で米社がアジア初の「宇宙港」、決め手は温泉と町工場

 米ヴァージン・オービットと大分県が、22年の人工衛星打ち上げを目指すと発表した(20年4月時点)。具体的には国東市の大分空港をアジア初の宇宙空港として活用し、ロケットを抱えたジャンボジェットを離陸させるというものだ。

 大分空港がヴァージン・オービットの目に留まった理由は大きく3つある。1つは打ち上げ用ジャンボジェットが離着陸可能な3000mの滑走路があることなど、地理的条件。2つ目は、自動車産業や精密機械産業に携わる企業が集積しているという産業基盤の存在。そして3つ目が別府温泉や由布院温泉などの観光資源だ。

ウクライナ危機でさまよう衛星会社 日本はロシアの代役果たせるか

 ロシアによるウクライナ侵攻が宇宙ビジネスにも影響を与えている。これまで世界各国の人工衛星打ち上げに利用されてきた「ソユーズ」などのロシア製ロケットが予定通りに打ち上げできなくなっているためだ。すでに欧米からは日本のH2AやH3ロケットへの問い合わせが相次いでいるという。

 ただ、H2Aの引退やH3の開発の遅れなど、解決すべき課題も多い。

最後に

 近年、著しい成長が続く宇宙ビジネス。マスク氏やベゾス氏といったカリスマ経営者が率いる宇宙ベンチャーをはじめ、日本でもベンチャーや異業種大手からの参入が相次いでいる。将来有望の新たな産業分野で日本が存在感を示すことができるか、引き続き要注目だ。

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