日本を代表する化学メーカーとして、特に樹脂事業で高いグローバルシェアを誇るクラレ。設立から約100年の老舗企業は、独自の強みを生かして今も高い成長を続けている。今回はこれまでに掲載した記事の中から、クラレに関する話題に注目していく。

樹脂事業で高いグローバルシェアを誇る「クラレ」

 クラレ(株式会社クラレ)は日本を代表する大手化学メーカーの1社。1926年に岡山県倉敷市でレーヨンの事業化を目的に設立された会社で、これまでに人工皮革の「クラリーノ」、高機能エラストマーの「セプトン」、合成繊維の「ビニロン」といった製品を生み出してきた。面ファスナーの「マジックテープ」も同社の登録商標だ。

 同社の売り上げの約4割は樹脂事業が占めている。特に液晶ディスプレイなどに使用する光学用ポバールフィルムでは世界シェアの8割、ガソリンタンクや食品密封包装などに使用するエバールでは世界シェアの6割を占めるなど、グローバルな活躍が目立つ。

 この記事では、機能性樹脂を中心とする新素材で高い競争力と独自性を持つクラレについての話題をこれまでの記事から紹介する。

新社長の独白、伊藤正明氏が重要視する姿勢とは

 最初に紹介するのは、2015年に社長に就任した伊藤正明氏(現在は取締役会長)のインタビュー。「社長は必ずしも社内のすべての課題を把握しているわけではない」と語り、会議では最初に現場の担当者が発言するように促すという伊藤氏。その行動の背景には、00年から手掛けた新事業の立ち上げで周囲に頭を下げ続け、素直に教えを請う大切さを学んだ経験があるという。

 社長就任後は「若手が発言しやすいように、冗談を言って場を和ませるのが私の仕事」として、国内外でのさらなる事業展開を目指している。

超高収益を生む10の源泉

 クラレの高収益を支えるのは「ニッチ攻めを貫く」戦略だ。世界シェアの8割を占める光学用ポバールフィルムをはじめとする樹脂事業、水処理や排ガスの不純物除去に使う活性炭事業などのニッチ事業で世界シェア1位を誇る同社は、独自に積み上げた技術と大型海外買収戦略、そして「素早い撤退判断」を巧みに組み合わせることで、グローバル企業へと成長を遂げてきた。

 競合が少ない「ブルーオーシャン」を泳げば、価格競争に巻き込まれることなく、安定した稼ぎを得ることができる……。経営の教科書の定石をしっかりと守る優良企業だ。

日本企業、シェールガスに商機

 クラレが米テキサス州ヒューストン近郊に新工場を建設する(12年当時)。操業開始は14年9月の予定で、主力製品のひとつ「ポバール」樹脂の生産を手掛け、全体の2割弱にあたる年4万トンの生産を見込んでいる。同社が米国工場を稼働させる理由のひとつは「シェールガスの活用でコストを下げられる」ことだという。

 米国ではシェールガスの増産に伴って天然ガスの価格が大幅に下落。100万BTU(英国熱量単位)当たりの価格は2ドル前後で、08年の2~3割の水準で推移する(12年当時)。ポバールの原料であるエチレンをシェールガスから作る設備も増え、クラレにとっての恩恵は小さくない。

ソニーやクラレも参入を計画「着るエアコン」は普及するか

 ここ数年、夏は猛暑、冬は厳しい寒さとなる日本。そんな環境に対応できる「着るエアコン」が注目を集めている。すでにソニーやクラレといった大手企業をはじめとするさまざまなメーカーが商品開発や試験販売を競っている最中だ(19年当時)。

 着るエアコンの仕組みやタイプはメーカーによって違う。クラレが開発するのは「バッテリーやコントローラーを内蔵したジャケット」で、建設現場や過酷な災害現場で使うことを想定した作業服での商品化を計画しているという。作業部屋全体の温度を調節するのではなく、利用者それぞれの体感に合わせた温度調整を可能にすることで省エネ効果も期待されている。

廃業寸前の撚糸工場、吸水力1.6倍の糸のタオルで大逆転

 価格競争に敗れて廃業寸前だった繊維メーカー、浅野撚糸(岐阜県安八町)が、新開発のタオルで起死回生を果たした。同社が開発したのは一般的なタオルの1.6倍という吸水性を実現したタオルで、20年8月時点で、累計販売枚数1000万を達成した。新型コロナウイルス禍にあっても月17万枚の販売ペースを維持し続けている。

 「中国に勝てる気はしないが、うちにしかできないことはある」と試行錯誤を重ねる中、大きな転機となったのが、クラレの技術担当者から紹介された「水溶性の糸」との出合いだという。

裏切り者から良き理解者へ、広がるアルムナイネットワーク

 クラレは19年から「アルムナイ(同窓生)ネットワーク」を活用した採用を始めている。アルムナイネットワークとは退社した元社員との交流組織のことで、同社ではアルムナイ専用SNS(交流サイト)を通して元社員の再入社「カムバック採用」を狙う。

 新しい採用制度を導入した背景には、若手の離職率が高くなる一方で「中途採用は専門性の高い人材に偏る傾向がある」という悩みがあったという。

最後に

 ニッチな樹脂分野を中心に高いグローバルシェアを誇るクラレ。液晶や食品包装材、水浄化用の活性炭など生活やビジネスに欠かせない分野を支えるだけに、コロナ禍にあっても同社の強みは光っている。日本を代表する化学メーカーの成長と活躍に、これからも期待していきたい。

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