世界的なカメラメーカーとして知られるキヤノン。主力となるデジタル一眼レフカメラのシェアは世界トップクラスだ。しかし近年のデジタルカメラ市場縮小は同社の売り上げに大きな影響を与えており、新型コロナウイルス禍もそれに追い打ちをかけた。ここでは過去記事を通して、キヤノンのデジタルカメラを中心とした動向に注目していく。

デジタル一眼市場で高いシェア

 日本を代表する大手精密機器メーカー、キヤノン。東証1部に上場するグローバル企業で、デジタル一眼レフカメラなどの光学機器、オフィス向け複合機などの事務機器を扱う。画像診断装置など医療システムにも事業領域を広げている。

 今回は、近年のデジタルカメラ市場の縮小や新型コロナウイルスの感染拡大がキヤノンに与えた影響を中心に、これまでの記事を振り返っていく。

2強を脅かすミラーレス高級化

 高級デジタルカメラ市場でミラーレスカメラが次第にシェアを広げる中、それまで強みとしてきた「一眼レフ」との競合を避けるためにミラーレスカメラに対して「様子見」を続けてきたキヤノン。だが2016年11月にミラーレスの最上位機種「EOS M5」を発売し、ミラーレス市場拡大に本腰を入れ始めた。

 2020年の東京五輪・パラリンピック需要を視野に入れ、「(一眼レフ、ミラーレスを含む)EOSブランド全体でデジカメ市場の1位を目指す」ことが当時の同社の狙いだった。

 ただし、ミラーレスの未来も明るいとは言い難かった。スマートフォンで写真を撮ることが当たり前になり、デジタルカメラの存在意義が問われるようになっていたからだ。

縮むデジカメ市場 ニコン・キヤノンに迫る時間切れ

 デジタルカメラ市場全体が縮小している。国内メーカーの2020年の出荷台数は前年を2割以上下回る1167万台にとどまる見通しで、ミラーレス市場への参入で販売台数を増やしてきたキヤノンにとっても「想定以上の縮小」だった。

 デジカメ市場が「愛好家に向けたニッチ市場」へと変化する一方、医療機器などデジカメに代わる事業は発展途上。同社に残された時間は短くなっている。

キヤノン、新型コロナで業績見通し撤回。事業転換が急務に

 2020年、新型コロナウイルスの感染拡大がキヤノンに事業転換の加速を迫った。キヤノンの田中稔三副社長CFO(最高財務責任者)は、20年の状況を「これまでにない逆風」と表現する。先行きの不透明感から、1月に発表した通期見通しも撤回した。

 販売台数が減少するデジカメ事業やプリンター事業に代えて、商業印刷・ネットワークカメラ・メディカル・産業機器の4事業を新たな中核事業に育てようとしているが、目標達成の見通しは立たない。コロナ禍で減収幅が拡大し、改革を速めることが一段と求められることになった。

ミラーレスカメラで底力見せたキヤノン、反転攻勢へ

 2020年12月期のキヤノンは、新型コロナウイルスの感染拡大に振り回された1年だった。在宅勤務の拡大でオフィスにある複合機の利用頻度が減ってトナーなどの消耗品が売れなくなる。イベントやレジャーが減って写真を撮る機会も減るといった逆風が重なったからだ。しかし、20年7月に期初の業績見通しを下方修正して以降、「これ以上の下方修正は許されない」という危機感で経営に取り組む。それが実り、20年12月期は売上高が3兆1602億円(7月予想比2.6%増、前期比12.1%減)、純利益が833億円(7月予想比93.7%増、前期比33.3%減)となった。

 業績回復のけん引役の一つがミラーレスカメラだった。特に大型の画像センサーを搭載する上位機種が中国市場などで好調に売れた。デジタルカメラのトップメーカーとしての底力を見せた格好だ。

「4日で1億円」の最速記録、退潮のデジカメ市場にキヤノンの新星

 デジカメ市場が縮小する中、新たな市場を切り開く製品も登場し始めている。国内販売会社のキヤノンマーケティングジャパンが手がける新型カメラが話題を集めている。2021年初め、自動撮影カメラ「PowerShot PICK(パワーショット ピック)」をクラウドファンディングで先行販売したところ、募集開始からわずか4日で1億円の売り上げを達成した。

 このカメラは「多くの一般ユーザーにとって撮影は手段であり、関心があるのはアウトプットだ」というユーザーの声を受けて開発された。机の上などに置いて電源を入れておくだけで、何気ない日常を勝手に撮影してくれる。撮影のわずらわしさを省くと同時に「子供の成長を記録する一方で自分(親)が写っていない」という不満も解消しているという。

 同製品の成功は「ユーザーの不満を解消する付加価値を提供すれば、飽和市場でもモノは売れる」ことを示している。

最後に

 デジタル一眼レフカメラで世界トップクラスのシェアを誇ってきたキヤノン。だが世界的なデジカメ市場の縮小と新型コロナ禍の拡大で、業績は低迷した。しかし、キヤノンは厳しい状況をはね返そうとミラーレスカメラの上位機種を投入し、好調な売り上げを維持する。そして新しい発想の製品でユーザーの不満に応えれば、飽和市場でも売れるという手応えもつかみ始めている。

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