ドナルド・トランプ前米大統領が中国製品に課した関税をきっかけに、米中間で激しい報復関税合戦となった「米中貿易摩擦」。もともとは米国の貿易赤字を解消し、国内の雇用を守るための施策として行われたものだが、その影響は日本など周辺国にも及んでいる。今回は米中貿易摩擦をめぐる過去記事の話題をピックアップして紹介する。

日本にも深刻な影響を与える「米中貿易摩擦」

 米中貿易摩擦とは、貿易をめぐる米国・中国間の対立のこと。米中貿易摩擦が始まったとされるのは2018年で、当時のトランプ大統領が「中国製品に25%の関税率を適用する」と決定したのをきっかけに、両国が報復関税をかけあう事態へと発展した。

 米中貿易摩擦の背景にあったのは、当時膨らみ続けていた米国の対中国貿易赤字だ。加えて、安価な中国製品が出回ることで米国製品の売り上げが減少し、米国国内の雇用減少につながると懸念されていたことも大きい。

 とはいえ米中貿易摩擦が与える影響は、米国や中国だけにとどまらない。関税引き上げによる生産コスト上昇のため、中国から他国へ製造拠点を移すことを余儀なくされる日本企業も出てきているのが現状だ。

 この記事では米中貿易摩擦に関連する過去記事から、アメリカ、中国に加え周辺諸国が受けている影響と今後の見通しについて振り返ってみる。

対中国「存亡をかけた戦い」は米国を衰退させるか

 米中貿易摩擦を「米国の存亡をかけた戦い」と表現するのは、トランプ前大統領の政権移行チームで貿易政策を担当したダン・ディミッコ氏。同氏は中国について「他人の市場は破壊するのに、自国の市場は開放しない。関税をかけるしか米国を守る方法はない」と激しく非難する。

 一方、中国製品への関税引き上げや中国への輸出規制はアップルやインテルといった企業の売り上げ減少や、中国からの投資額の減少を招いており、米国にとってもダメージとなりつつある。

東南アジアで胎動する「経済回廊」 米中摩擦が追い風に

 米中貿易摩擦の激化による中国からの工場移転を受けて、東南アジアでは「経済回廊」と呼ばれる物流動脈の整備が進んでいる。経済回廊にはベトナムからミャンマーに至る「東西経済回廊」「南部経済回廊」、中国からタイに至る「南北経済回廊」の3ルートがあり、完成すれば日本企業にとっても大きな恩恵となる。

薄暮の「世界の工場」 中国企業すら外へ

 「世界の工場」として圧倒的な存在感を放っていた中国から、各国の企業が自社工場を引き揚げ始めている。米国の対中追加関税により、米国と取引のあるすべての企業で輸入コストが大きくなっているためだ。

 米中両国はそれぞれの国内事情から貿易摩擦の緩和策となる「第1段階の合意」を結んだが(2020年)、両国が対立する構図は依然として変わらっておらず、課題の解決には程遠い状況だ。

トランプ大統領の性格と対中タカ派に翻弄された中国の4年

 米中貿易摩擦はトランプ大統領による関税の決定がきっかけだが、中国がトランプ氏によって「振り回された」のは貿易分野に限らない。「南シナ海の領有権問題」や「台湾への武器援助拡大と高官派遣」などは米国の歴代政権の固定観念を崩す行動だったうえ、前言をすぐに翻すトランプ氏の性格にも翻弄されていたという。

日本が中国を経済安全保障の「敵性国」とすることが簡単でない理由

 米中経済摩擦に関連して、日本が米国と歩調を合わせるのは簡単ではない。日本は食料やエネルギーを海外に依存しており、一方の中国は地球温暖化対策において代替エネルギーのカギとなるレアアースの重要な産出国として国際的地位を高めているためだ。

三浦瑠麗氏「激化する米中対立、日本は複雑さを受け入れるべきだ」

 国際政治学者の三浦瑠麗氏は、米中経済摩擦をめぐり日本が取るべき態度について「米国をある程度抑えながら、不確実性に対応する。そして、中国の公正な発展と、ルールを順守しながら成長していくことを支持する」と語る。米中対立が激化すれば、日本の安全保障にも弊害が出るためだ。

最後に

 米国のトランプ前政権を発端とする米中貿易摩擦は、米国・中国双方だけでなく日本や東南アジアの国々にもさまざまな影響を与えている。

 米国がバイデン政権に変わってもこの傾向は継続しており、解決の見通しは立たない。両国の関係は日本の経済や安全保障にも大きく影響するだけに、今後の推移と、日本政府の働きかけに注目していきたい。

 さらに詳しい記事や、会員限定のコンテンツがすべて読める有料会員のお申し込みはこちら

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「テーマ別まとめ記事」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。

11月30日まで日経ビジネス電子版の「無料開放ウィーク」を実施中

 日経ビジネス電子版は2022年11月24日(木)14時から11月30日(水)16時までの期間、「無料開放ウィーク」を実施します。通常は有料会員のみが見られる記事をすべて開放。どなたでもお読みいただけます。

 2022年10月に読まれた有料記事のランキングを以下のリンクに掲載しています。この機会に、日経ビジネスの有料記事をぜひご覧ください。

※雑誌と同じレイアウトで読める「誌面ビューアー」など、期間中でも有料会員限定の機能があります。

2022年10月の有料記事ランキング
https://business.nikkei.com/atcl/info/19/00132/