他人の名誉を傷つける「名誉毀損」。れっきとした犯罪行為ではあるが、現実にはビジネスにおいても、日常生活の現場でもしばしば名誉毀損にあたる行為が行われている。今回は名誉毀損をテーマに、さまざまな事例とその影響を紹介する。

「名誉毀損」という犯罪行為

 名誉毀損とは、他人の名誉を傷つける行為のことだ。これは単なる嫌がらせや迷惑行為にとどまらず、刑法230条に規定された犯罪行為(名誉毀損罪)であり、3年以下の懲役・禁錮、または50万円以下の罰金の対象となる。

 とはいえ、名誉毀損は日常生活やビジネスの現場でも決して珍しくない。ビジネス上のライバルを蹴落とすため、部下や取引相手より優位に立つため、あるいは復讐(ふくしゅう)や逆襲の手段として利用されることもある。特に近年は、インターネット上の匿名掲示板やSNSへの書き込みにおいて誹謗(ひぼう)中傷が社会問題化することも多い。

 この記事では名誉毀損に関連するテーマの過去記事を通して、さまざまな誹謗中傷の事例や対策について振り返ってみる。

名門・寡占企業で相次いだ交代劇

 「クーデター」と呼ばれる経営者の交代劇は、過去に多くの企業で行われてきた。記事中に取り上げられている例だけでも、三越、伊勢丹、関西電力、セイコーHD、全日本空輸、日本航空、ヤマハ、松竹、バンダイ、川崎重工、野村証券、富士通などバラエティー豊かだ。

 こうした企業クーデターに付きものなのが「怪文書」だという。内容はさまざまだが、その多くは名誉毀損罪にあたる可能性がある。こうした文書が社内外に出回った場合は、不用意に犯罪に加担してしまうことのないよう慎重な行動が必要だ。

「生かすも殺すも俺次第」フリーランス礼賛社会の光と陰

 ビジネスの現場では、比較的弱い立場の相手に対して名誉毀損が行われることも多い。例えば企業と取引関係にあるフリーランスがそうだ。

 一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の調査によると、フリーランスの61.6%がパワハラ、36.6%がセクハラを経験している。そしてその多くが「脅迫や名誉毀損などの精神的な攻撃」だという。

もし社員の横領が発覚したら、どうする?

 企業にとって社員の犯罪行為は決して珍しいことではない。例えば「横領」などは、比較的ポピュラーな犯罪といえる。

 ただ横領行為が発覚した後の対応には十分注意が必要だ。もし感情に任せて社員を呼びつけたりすれば、すぐに証拠を隠蔽されるだけでなく、最悪「名誉毀損」などで逆に提訴される可能性もあるという。いつどのような状況においても、企業には慎重な行動が求められる。

ネット上の、事実無根の悪評

 SNSをはじめとするインターネットサービスのいくつかは、名誉毀損の温床となっている。インターネット時代に対応した即効性のある法的措置がないうえ、サービスの匿名性やインターネット特有の仕組みが発信者(加害者)の追及を難しくしているためだ。

 実際に多くの名誉毀損事案では、訴訟どころか発信者の特定すらできていない。インターネット接続サービスを提供するプロバイダーが、インターネット上の住所にあたるIPアドレスの開示請求になかなか応じようとしないためだ。

 仮に発信者を特定できたとしても、訴訟にかかる費用と時間を考えると、30万~100万円ほどという賠償金では割に合わない。結果として、インターネット上の名誉毀損は今もなお増え続けているという。

テラスハウス騒動で機運高まるネット中傷対策の危うさ

 2020年、ある女子プロレスラーの急死をきっかけにインターネット上の名誉毀損が社会問題と化した。政府も有識者の研究会を立ち上げるなど、名誉毀損対策に乗り出している。

 この点、最も効果的と考えられるのは「訴訟」だ。プロバイダ責任制限法の改正により発信者の特定を容易にすれば、訴訟を通して損害賠償請求するためのハードルが下がる。また発信者にとって訴訟のリスクが高くなれば、悪意のある発信への抑止力ともなる。

 とはいえ、こうした制度は威圧を目的とした「スラップ訴訟」で悪用される危険性があるという。スラップ訴訟とは、自称「被害者」が正当な批評や口コミをした人を威圧するために起こす訴訟のこと。訴えられた相手は萎縮し、結果として立場の弱い一般人の言論は封じ込められてしまう。

 SNSの名誉毀損に対処するには、政府による法整備だけでなく、業界団体などの相談制度を活用することも大切だ。

最後に

 ビジネスの現場で、あるいはインターネットサービスで広まる名誉毀損。だが名誉毀損はれっきとした犯罪行為であり、処罰の対象だ。特にインターネット上での名誉毀損に対しては、政府や民間団体の間でもさまざまな対策が検討されている。我々すべてにとって身近な問題だけに、今後の議論や制度の行方に注目していきたい。

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