日本の中央銀行として、紙幣の発行や政府・民間銀行の資金を管理する日本銀行。日本経済の要として日々さまざまな金融政策を実施するとともに、将来の経済発展に向けた新たな取り組みも行っている。ここでは過去数年の記事から、日銀に関する主な話題を紹介していく。

中央銀行としての「日本銀行」

 日本銀行(日銀)は、日本経済の中核を担う中央銀行だ。中央銀行は各国の金融政策を支える要となる存在で、具体的には以下の3つの役割が与えられている。

  • 発券銀行 「日本銀行券」つまり紙幣の発行と管理を行う
  • 銀行の銀行 民間銀行との間で預金の引き受けや貸し出しを行い、銀行間の決済を仲立ちする
  • 政府の銀行 政府の資金を管理するほか、国債の取り扱いや外国為替関連の事務を行う

 これらはいずれも「物価の安定」や「金融システムの安定」に貢献し、経済の持続的な成長に欠かせないものだ。その役割を健全に果たすため、日銀は「日本銀行法」において政府からの独立性(自主性)を保障され、中立的な立場で各種金融政策を実施している。

 今回の記事では、日銀に関する過去のトピックから近年の日銀の政策や新たな役割について振り返ってみる。

「大株主は日銀」がはらむ矛盾

 2016年7月の「金融政策決定会合」において、ETF(上場投資信託)の買い入れ枠を年間3.3兆円から6兆円に引き上げた日銀。その狙いは「上場企業や投資家がリスクを取りやすい環境をつくることで積極的な設備投資を促し、物価上昇につなげる」というものだ。

 とはいえ年6兆円の買い入れはアベノミクス開始時の外国人投資家の買越額(7.6兆円)に匹敵し、多くの主要企業において「不自然な株高」を引き起こす要因になったという。

「日銀の出口なきETF購入は、企業の評価をゆがめる」

 企業の株価は、各企業の業績や経営戦略によって評価・決定されるものだ。しかし日銀が打ち出した金融政策(ETF買入枠の拡大)はその仕組みをゆがめ、企業の業績・経営戦略とは関係なしに株価をつり上げてしまう。

 すでに上場企業の約半数において、上位10位以内の大株主となった日銀。これにより各企業の本当の評価が見えにくくなっている。もしリーマン・ショック級の経済危機が起きれば、最悪の場合、日銀自身の純資産(約4兆円)が吹き飛び、円への信頼を損なう恐れもあるという。

日銀は「新型コロナウイルス対応」で次にどう動く?

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年3月の金融政策決定会合で「追加緩和策」を決定した日銀。その内容は主に以下の3点だ。

  1. ①2020年1月の「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」のシナリオを下方修正し、景気の先行きの判断を「当面、新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響から弱い動きが続くとみられる」とした
  2. ②「積極的な国債買い入れ」をはじめとする複数の手段により、円資金の一層潤沢な供給に努める
  3. ③企業金融支援のための措置として、「新型コロナウイルス感染症にかかる企業金融支援特別オペ」「CP・社債など買い入れの増額」「ETF・J-REITの積極的な買い入れ」に力を入れる

「見せ方の工夫で数字が水膨れ」している日銀の金融政策

 2020年5月の臨時金融政策決定会合において、日銀が総枠で約75兆円にのぼる「新たな資金供給手段」の導入を決定した。コンセプトは「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」だ。具体的には、①CP・社債などの買い入れ、②新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペ、③新たな資金供給手段の3点を強化する。英語版の資料もホームページに掲載しており、海外投資家にもアピールしていきたい考えだ。

「気候変動」「住宅価格」…中央銀行の使命はどんどん増える?

 日本の中央銀行である日銀では「物価安定」が何より優先される。その次に優先されるのが「金融システムの安定」だ。これは世界中の中央銀行に共通する原則でもある。

 だが海外の中央銀行には、新たな使命を増やそうとする動きもある。たとえばニュージーランドでは、中央銀行が金融政策を決定する際に「持続可能な住宅価格に関連する政府の政策」を考慮することが義務付けられた。英国や欧州連合(EU)の中央銀行は「環境の持続可能性や温暖化ガス排出量実質ゼロへの移行」に関与していく姿勢を見せている。

日本版のデジタル通貨はどうなる。日銀の決済機構局長に聞く

 2021年4月、日銀が中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実証実験を開始した。情報通信技術の急速な進歩を背景に「いざというときに日本が取り残されないようにしっかり準備しておく」のが目的だ。

 とはいえ日本を含む先進国には、すでに安定的・効率的な金融システムが存在している。新しいシステムの導入は旧来の安定したシステムを崩すため、日本では今のところ、デジタル通貨の発行にそれほど積極的ではないという。日本がデジタル通貨に対応するのは、10年、20年にわたる長期的な取り組みになりそうだ。

最後に

 日本の中央銀行として、独立の立場で「物価の安定」「金融システムの安定」に向けた金融政策を実行する日銀。近年では特に、新型コロナへの対応に力を入れている。一方、世界的には「気候変動への取り組み」や「デジタル通貨」への取り組みも中央銀行に求められつつある。今後も日銀の取り組みから目が離せない。

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