約14億人という、世界最多の人口を抱える中国。だが35年にわたる「一人っ子政策」の影響で高齢化が進み、経済や社会に対して大きな影響を与えると考えられている。近年は、二人っ子政策の導入や「3人目を認める」といった政策転換を始めた中国について、過去記事から振り返っていく。

「中国の人口」をめぐる課題

 中国の人口は、2019年時点で約14億人に上る。19年の世界人口は約77億1300万人で、そのうちの約18%を中国の人口が占める計算だ。

 過剰な人口増加を抑えるため、中国政府は1980年ごろに「独生子女政策(一人っ子政策)」を導入。これにより一組の夫婦が設けることのできる子供の数が「1人」に限定され、違反した夫婦には多額の違反金が課されることになった。しかし労働力として重宝される「男子」に人口が偏るなど弊害が目立ち、若者世代の減少による急速な高齢化も問題視されている。

 こうした問題に対処するため、中国では2016年に「全面二孩政策(全面二人っ子政策)」を導入、さらに2021年には「一組の夫婦に3人までの子供を認める」と発表するなど、高齢化対策を全面的に開始した。

 この記事ではこれらの一連の流れについて、過去記事から紹介する。

中国・計画出産関連機構の撤廃、出産自由化か

 2016年に「全面二人っ子政策」を導入した中国。一人っ子政策による少子化の進行に歯止めをかけるのが狙いだったが、増加したのは2016年のみで、翌2017年には出生数が再び減少に転じた。

 これを受けて中国当局は、「計画出産に関連する3機構を撤廃する」と発表。出産自由化へ移行する準備段階に入ったのでは、との臆測を呼んでいる(2018年時点)。

人口と経済の危うい関係、中国はどうなる

 出生数の低下に伴う若者人口比率の低下は、経済に大きな影響を与えると考えられている。例えば「逆依存人口比率」(1人の被扶養者が何人の働き手に支えられているかという指標)が下り坂に差し掛かると経済活動が鈍化するとされ、日本では実際に「1965年の証券不況」や「1990年のバブル崩壊」が発生した。

 今こうしたリスクに直面しているのが中国だ。近い将来、中国経済が日本のバブル崩壊と同様の経験をすることになるのか、注目が集まっている。

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 現在の中国で、少子化と並んで問題視されているのが高齢化だ。すでに65歳以上の人口は1億6700万人に上り(2018年末時点)、2050年までにその数は倍になると考えられている。一方で中国の社会保障は日本ほど整っておらず、都市部と地方の格差も大きい。高齢者が受け取る年金額と医療費のバランスも問題だ。

 社会保障体制の整備と充実、日本や欧米企業によるシニア市場の開拓、定年後のライフスタイルへの意識など、今後の中国にはさまざまな変革が求められている。

人口増や温暖化…食糧の「偏在」が加速する

 出生数が低下したとはいえ、中国の人口は膨大だ。約14億人の人口を維持するには大量の食料が必要で、中国当局は今後に備えて「貿易戦争の中で食糧が弱点にならないよう」補強を急いでいる。指導部が中国古来の伝統とは真逆の「食べ残すな」という指令を出しているのも、その一環だ。

結婚できない?しない?「一人っ子」たち。中国の婚活・出産事情

 2015年末まで行われていた一人っ子政策の弊害として指摘されるのが、アンバランスな男女比率だ。伝統的に男児が女児よりも重視されてきた中国では、意図的な産み分けを避けるために出生前の性別診断が禁じられている。だが、それでも男児の出生割合は女児より2割ほど高いという。

 これは中国の若い男性にとって「結婚しにくい(相手が見つからない)」ことを意味する。一方で高学歴の女性の独身比率も高まっており、こうしたマッチングの難しさが、中国のさらなる少子化につながっている。

中国の「三人っ子政策」がうまくいきそうもない理由

 2021年、ついに中国政府が「一組の夫婦に3人までの子供を認める」と発表した。2016年の全面二人っ子政策でも少子化を食い止め切れなかったことから、さらなる緩和に踏み切った形だ。

 だが30年にわたる一人っ子政策で「中国の社会と経済がすっかり少子化に最適化」され、育児や教育にかかる費用の負担が増大していることなどから、単なる「出産制限の緩和」では出生数の改善は期待薄とみられている。

中国の三人っ子政策、日本の自動車メーカーの追い風に

 一方で自動車メーカー、特に日系メーカーにとって、三人っ子政策は大きなチャンスとなる。中国人のファミリー構成が変化することで、日本の自動車メーカーが得意とする「3列シートの7人乗りSUV(多目的スポーツ車)」や「中高級MPV(多目的車)」の需要が増大すると考えられるためだ。

 中国の地場ブランドは比較的コンパクトなSUVで人気を集めているものの、こうしたメーカーが大型SUVのノウハウを身に付けるには時間がかかる。日本の自動車メーカーが中国市場でシェアを伸ばすためにも、中国の政策や消費市場の変化をしっかりと把握していくことが必要だ。

最後に

 約14億人という圧倒的な人口を誇る中国。一方で人口の過剰な増加を抑えるため、30年以上にわたり一人っ子政策を採用してきたことでも知られている。だが一人っ子政策による出生数の低下は、中国の経済や社会保障への大きなリスクをもたらしている。新たに導入された「出産制限の緩和」政策がどのような効果をもたらしていくか、要注目だ。

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