コンピューターグラフィックスで描画されたアバター(分身)と呼ばれるキャラクターが動画投稿や生放送を行うバーチャルユーチューバー(VTuber)たちが活躍する「にじさんじ」。運営会社のエニーカラーは設立からわずか5年で、資本金を100万円から1億円超に急拡大し、株式上場を果たしている。今回は同社やにじさんじの成長を後押しするVTuberの人気と可能性をこれまでの記事から紹介していく。

VTuber人気とともに急成長する「にじさんじ」

 「にじさんじ」とは、エニーカラーがマネジメントするバーチャルユーチューバー(VTuber)およびVTuberを活用したプロジェクトのこと。一連のサービスは「にじさんじプロジェクト」と呼ばれ、同社を代表するサービスとなっている。

 にじさんじプロジェクトには約150人のVTuberが参加し、それぞれの個性を生かした配信活動を行っている。エニーカラーはそれらの活動をサポートするとともに、VTuberのグラフィックの制作、Webサイトやアプリの開発、リアルグッズ・デジタルグッズの制作、楽曲・動画・番組制作などを行う。

 エニーカラー(旧いちから)は2017年5月に設立された。当初は資本金100万円の小規模な会社だったが、国内だけでなく中国・台湾などグローバルなVTuber人気に乗って急成長した。初期事業はバーチャルライブアプリをプラットフォームとするライバ-(配信者)のマネジメントだったが、その後VTuberを活用したイベントやファンコミュニティーの運営、企業向けプロモーション、さらにはVTuber育成事業(バーチャル・タレント・アカデミー)などサービスの幅を広げている。

 22年6月8日には東証グロース市場へ上場を果たした。今回は同社や「にじさんじ」に代表されるVTuber人気、それらを活用したビジネスの可能性についてこれまでの記事から振り返る。

夫の不倫、老後の空虚…「ライブ配信」に救われる人々

 スマートフォンのライブ配信アプリでライブ配信を行う「ライバ-(配信者)」が増えている。ライバーはユーチューバーと同様に職業として認知されつつあり、市場規模は直近の9カ月間で2倍近くに膨らんでいるという(19年9月時点)。

 内容はトークや歌、お笑い、ゲームの実況までさまざまだが、ユーチューブと違い、配信中は視聴者と双方向でのやりとりが行われるのが特徴だ。

「仮想」のアイドル、バーチャルユーチューバー増殖

 単なるライバーではなく、仮想空間で活動するVTuberが人気だ。中には生身のアイドルと同様、楽曲を発表して単独ライブを開催したり、日本政府観光局の訪日促進アンバサダーとして活動したりするVTuberも存在する。その普及と活躍を支えているのは、ゲームや仮想現実(VR)に使用される技術だ。

 「スマホのみで手軽に見られ、決済機能と結びついている」ことがVTuberの特徴であり、一部の人気VTuberは、企業のマーケティング活動を左右する力を持つようになっている。

アバター営業で“接触”増やせ、「3密」回避の仮想空間ビジネス

 VTuberの技術はビジネスの場面でも応用されている。新型コロナウイルスの感染拡大で「3密」回避が叫ばれる中、たとえばVR空間に「住宅展示場」をつくり、ヘッドセットを装着した「来場者」が会場やモデルハウス内をアバターで歩き回るといった具合だ。

 他にも現実世界では不可能な、バーチャル空間ならではの演出を導入したビジネスイベントも開催されるなど、VR技術の活用は急速に普及しつつある。

集客力100万人のバーチャル市場、5Gとの連携でリアル店舗超える

 バーチャル空間では、リアルな空間では難しい巨大規模のイベント開催も容易だ。たとえばコロナ禍で中止が決まったコミケ(コミックマーケット)イベントの代わりに開催されたバーチャルイベントは、実際のイベントと同様、参加者が空間内を自由に歩き回って出品者や他の来場者とのコミュニケーションを楽しめる。これを可能にしたのが高速通信規格「5G」だ。

 5Gは、高速大容量、低遅延、同時多接続という技術面が先行し、用途開発に苦労してきたのが実態だ。しかしここへきて、VRや拡張現実(AR)、アバターといった“近未来”が一気に現実のものとなってきている。

「福岡PayPayドーム」を仮想空間に再現、メタバース化するメリットと課題

 VR技術をビジネスで活用するうえで、近年特に注目されている「メタバース(仮想空間)」。米フェイスブック社が社名をMetaに変えたことも話題となったが、国内でも多くの企業がメタバースの開発や活用に参入している。

 その1つがソフトバンクとプロ野球の福岡ソフトバンクホークスによる「福岡PayPayドーム」のメタバース化だ。具体的には仮想空間上に福岡PayPayドームを再現した「バーチャルPayPayドーム」をつくり、利用者はスマホやパソコンのブラウザ上でそこを訪れることができる。仮想空間上の一般的なコミュニケーションツールとの大きな違いは、実際のスタジアムやそこで開催される試合・イベントなどと連動していることだ。バーチャルPayPayドームではリアルタイムに進行する試合を観戦できるだけでなく、コロナ禍以前に行われていたスタイル(たとえばゴム風船を飛ばすなど)でチームを応援することも可能だという。

最後に

 にじさんじを運営するエニーカラーの急成長には目を見張るものがあり、VTuber人気の拡大は企業のマーケティング活動にも多大な影響を与えるようになってきている。

 同時に、VTuberを支える技術の発展はVR技術のビジネス活用、特にメタバースに集まる関心の高さにもつながっている。業種にかかわらず、VR・ARの活用に注目している企業は多い。VTuberはもちろん、こうした技術が今後のビジネスにどう生かされていくか楽しみにしたい。

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