会員が会員を集め、ピラミッド構造のビジネス組織を形成する「マルチ商法」。それ自体は違法ではないものの、詐欺まがいの勧誘や強引な勧誘が問題視され、犯罪である「ねずみ講」と同一視されることも少なくない。今回は過去の記事から、マルチ商法に関する話題を振り返っていく。

問題視される「マルチ商法」

 マルチ商法とは、会員が会員を集めることでピラミッド型の組織を構成するビジネス形態だ。法律上は「連鎖販売取引」と呼ばれ、ねずみ講(無限連鎖講)のような犯罪行為とは区別されている。

 だがマルチ商法とねずみ講の間には法律上の線引きがあるだけで、両者は極めて近いものとみるのが一般的だ。実際にマルチ商法と称していた組織が、検察によってねずみ講と判断されたケースも少なくない。

 マルチ商法では特定の商品を販売する権利が「会員」に与えられ、会員は別の会員を勧誘して商品を販売する。新たな会員が「もうける」ためにはさらに別の会員を勧誘する必要があるため、ビジネスが無限に連鎖していくのが特徴だ。それぞれの会員は上位であればあるほどもうかる仕組みで、これが「詐欺まがい」や「強引」な勧誘を誘発し、社会問題となることが多い。

 この記事ではマルチ商法やねずみ講に関連した過去記事から、国内外のトピックを紹介する。

幹部釈放を求め「ねずみ講」会員6万人が北京へ

 2017年7月、中国・北京で「善心滙(ぜんしんかい)」と呼ばれる組織の会員6万人が大規模なデモを行った。彼らの要求は「ねずみ講の容疑」で逮捕された善心滙幹部の釈放だったが、結果的に60人以上の逮捕者を出し、解散させられている。

 善心滙は張天明という人物が「文化活動、会議、展覧展示、企業イメージ、市場販売などの企画を行う企業」として設立した組織だ。2016年からはインターネットを利用した投資ビジネスを開始していたが、これが公安部によって「非合法なねずみ講組織」と認定され、幹部の逮捕につながった。

 善心滙に限らず、中国ではねずみ講やマルチ商法がたびたび問題となる。公安部も「近年ねずみ講犯罪が多発し、経済社会秩序をかき乱し、深刻な問題になっている」と警戒を強めているという。

大卒青年たちを死に追いやる中国マルチ商法の闇

 中国ではマルチ商法がらみの事件も少なくない。2017年7月には天津市で20代の男性が遺体で発見されたが、この人物もマルチ商法の被害者だった。企業の求人を装う偽のメールで呼び出され、監禁された揚げ句に事故死したと見られている。

 この男性以外にも、マルチ商法組織にだまされて暴行を受けたり、「組織の一員」として犯罪行為に加担させられたりする事例は数多い。治安を維持し国民の信頼を勝ち取るためにも、マルチ商法は中国政府にとって「徹底的に取り締まって撲滅すべき標的」の一つとなっている。

信じたいからだまされる 偽ニュースまん延の真相

 現代の日本にも、マルチ商法は依然として存在している。例えば「暗号資産(仮想通貨)セミナー」を装ってもうけ話を聞かせ「会員」を集める手法や、さらに「広告収入が得られる」と称して会員に会員を集めさせるというのが最近の手口だという。

恋愛・婚活もリモート時代「出会いテック」の新潮流

 いわゆる「マッチングアプリ」も、マルチ商法の勧誘に利用されることがある。マッチングアプリとは、恋人探しや結婚相手探しといった「出会いを求める利用者」同士を結び付けるサービスだ。こうした技術は「出会いテック」とも呼ばれ、成長市場として世界中で脚光を浴びている。

 マッチングアプリの利用者の多くはサービスを通して本来の目的を達成しており、「少子化問題解決の一助」になるとの期待もある。一方で「マッチングアプリを通して出会った男性に誘われてバーベキューに行ったところ、マルチ商法の勧誘イベントだった」など、システムが悪用されるケースもあるという。

最後に

 「犯罪まがい」と表現されることの多いマルチ商法。合法的なビジネスだという主張もあるが、世間一般の感覚はネガティブだ。近年、中国ではマルチ商法の多発が問題視されている。もちろん日本でもマルチ商法は消滅していない。トラブルを避けるには、被害者になることはもちろん加害者側に回ることもないよう十分な注意が必要だ。

 さらに詳しい記事や、会員限定のコンテンツがすべて読める有料会員のお申し込みはこちら

この記事はシリーズ「テーマ別まとめ記事」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。