気候変動対策に関する国際的な枠組みとして採択されたパリ協定。米国のトランプ前大統領による離脱宣言とバイデン大統領の復帰宣言という混乱はあったものの、2020年よりほぼ世界中で具体的な取り組みが始まっている。この記事では主に日本政府や日本企業の動きについて、過去記事から振り返る。

「パリ協定」の概要について

 パリ協定とは、2020年以降の地球温暖化対策を定めた国際的な協定のこと。2015年12月の第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択され、現在までに世界のほぼすべての国や地域が批准している。

 パリ協定では、参加国すべてが温暖化ガス排出量の削減目標を作成・提出することに加え、その達成に向けて国内対策を実施することが義務付けられている。また2050年までに世界の温暖化ガス排出量を実質ゼロにすることも主要な目標の1つだ。

 なおパリ協定をめぐっては、地球温暖化に懐疑的な米国のトランプ前大統領が「協定からの離脱」を宣言したことが記憶に新しい。米国は2019年11月に正式な離脱を表明したが、2021年1月に就任したバイデン大統領によって「協定への復帰」が表明されている。

 今回はパリ協定に関する過去記事を通して、特に日本政府と日本企業の取り組みについて紹介していく。

2050年カーボンニュートラルへ

 「2050年カーボンニュートラル」を目指すことを宣言した菅義偉首相。だが過去30年間で5%しか減らせなかった温暖化ガスの年間排出量を、次の30年で実質ゼロにするのは容易なことではない。

 これまで「軽々に口にできる目標ではない」とされてきたカーボンニュートラル。それを宣言した背景には、中国・習近平(シー・ジンピン)国家主席やバイデン大統領の発言に代表される主要国の動きに乗り遅れまいとする、日本政府の焦りがあるという。

温暖化ガスの削減目標、46%減に

 菅首相が打ち出した目標について、産業界では歓迎と戸惑いの声が上がっている。

 ニコンやソニーをはじめとするグローバル企業の多くは、「気候変動対応はグローバルビジネスの参加条件」として政府の動きを歓迎する立場だ。一方でCO2排出削減の技術開発に巨額の投資を必要とする日本製鉄などは慎重な姿勢を見せている。

急浮上するCCUS(CO2回収・利用・貯留) 炭素中立「最後のとりで」

 日本が誇る脱炭素技術の目玉として、「省エネ」「水素」「CCS」が注目されている。このうちCCSとは「発電や化石燃料の生産から生じるCO2を回収し、地中深くに貯留する技術」のことで、回収したCO2を産業に利用するCCUと合わせて「CCUS」と総称されている。

 実現すれば2050年カーボンニュートラルに大きく貢献するCCUSだが、大きな壁となるのが回収コストだ。現在は5000~6000円程度かかるコストを2000円台、あるいは1000円程度まで引き下げることができるかで「CCUSの有効性」が決まることになる。

小泉大臣「炭素に価格づけしないと日本の雇用も危なくなる」

 日本政府が掲げた「2030年度に13年度比で温暖化ガスを46%減らす」という目標。小泉進次郎環境大臣はその意図について「日本の雇用と産業を守るため」と語る。

 環境対応を産業の成長戦略と捉え、国として最大限の政策を打ち出すことによって脱炭素型ビジネスの確立と、利益や雇用の確保を目指す考えだ。46%という小刻みな数字目標は「政府内の関係省庁と何度も調整を重ね、1%でも高い目標を追ってきた結果」だという。

 一方で「移行期間は間違いなく必要だと思う」と述べた小泉大臣。今後は国として、民間事業者に対する支援制度の整備を目指していく考えだ。

京セラが取り組む「自己託送」とは

 太陽光発電の効率化に挑む京セラ。遠隔地で自家発電した電気を既存の送電網に乗せて自社のオフィスや工場に届ける「自己託送」という技術を活用し、自社工場の電源の一部を賄っている。

 自己託送を太陽光発電などの再生可能エネルギーで利用するケースはまだ珍しいが、京セラによると「土地の有効利用」と「再生エネルギー特有の出力変動という課題を克服する」というメリットがあるという。

 京セラでは自社運用を通してノウハウを蓄積し、いずれはパッケージとして顧客企業に売り込む考えだ。

花王の脱炭素超え、目指すは「カーボンネガティブ」

 21年5月19日に脱炭素を宣言した花王。2040年に自社からの温暖化ガス排出量を実質ゼロにした上で、2050年には自社の排出量を上回るCO2を減らす「カーボンネガティブ」を目指すという。

 排出ガスを実質ゼロにするための具体的な手段は「CO2の排出に価格をつける社内炭素価格制度の活用」と「再生可能エネルギーの利用拡大」だ。これに加え「自社製品や技術による社外でのCO2削減を推進」することでカーボンネガティブを達成する。

「2050年脱炭素」へ始まった世界競争、3つの連携で産業界の革新を

 EUは途中の30年に55%削減(1990年比)を目指すとし、バイデン大統領も2030年までに50~52%削減(2005年比)を宣言した。こうした国際競争に日本が乗り遅れないためには、企業・サプライチェーン・業界の連携が欠かせない。

 だが民間だけの努力には限界がある。国際的な目標を達成するには「グリーン成長戦略」をはじめとする政府の取り組みを、さらに拡充・進化させていくことが必要だ。

最後に

 2大排出国とされる米国と中国をはじめ世界中の国や地域が参加し、目標達成に向けた取り組みを進めている。「2050年カーボンニュートラル」を宣言した日本もひとごとではない。目標の達成にはさまざまなハードルがあるものの、政府や企業による引き続きの取り組みに期待していきたい。

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