婦人用衣類などのカタログ通販で有名なニッセン。業界では老舗企業として知られるが、インターネット通販に出遅れ、業績の低迷を招いた。経営再建に努めるニッセンと、同社の親会社となったセブン&アイ・ホールディングスの動きについて振り返る。

カタログ通販大手「ニッセン」

 カタログ通販の老舗として知られる「ニッセン」。1957年に京友禅の機械染め加工を手掛ける「東洋機械染工有限会社」としてスタートし、その後、呉服専門のカタログ販売を経て婦人服・インナーウエアを中心とした衣料品やインテリアなどを扱う通販会社となった。その後、2007年にニッセンを中核企業とする持ち株会社ニッセンホールディングスとなったが、16年にセブン&アイ・ホールディングスの完全子会社となっている。

 1975年より通販カタログ「ニッセン」を発行してきたが、インターネット通販への対応の遅れなどから一時は深刻な業績低迷が続いていた。その後はカタログの発行部数をピーク時から8割以上も減らしてインターネット通販に注力するなど、業務形態を変化させてきた。

 今回は、低迷と復活を繰り返してきたニッセンの歩みを振り返る。

リーダーとは孤独なもの 非常事態こそ信じる道を進め

 1975年から本格的なカタログ通販に取り組んできたニッセンだが、90年代後半に「商品の品質やサービス面へのクレーム」が相次ぎ、売り上げ減少とともに大幅な赤字となった。当時は業界紙などで「存亡の危」とあおり立てられたり「不渡りを出した」などのデマを流されたりして、取引先からの信用も失いかけていたという。

 立て直しのため、新たな商品調達方法を模索。開発の段階からニッセンが携わり、海外の工場で製造する体制を整えた。社内には反対意見もあったが改革を進め、結果として通販業界2位からトップへと躍り出ることができた。

企業統治は経営の土壌 製品、事業の実りに必須

 2000年代に入り、ニッセンが特に力を入れたのが「コーポレートガバナンス」だ。特に07年の持ち株会社移行後は、8人の取締役のうち半数を社外取締役にするなど経営改革を進めてきた。

 具体的な改革の中には、かつて主力事業だった催事販売からの撤退も含まれる。決断した片山利雄社長(当時)にとってはつらい決断となったが、「ガバナンスは土壌。いい製品や事業を持っていても、ガバナンスに対する経営トップの姿勢次第で企業は良くも悪くもなる」というポリシーで改革を貫いてきた。

業績は統治で変わる

 社外取締役の導入は、ニッセンの経営プロセスと売り上げに大きな変化を与えた。

 まず社外の人材を「単なるお目付け役ではなく意思決定のメンバーにする」ことで、社内の人間だけでは難しい大胆な改革が可能となった。そして08年12月期の「94億円の最終赤字」から翌09年12月期の「15億円の最終黒字」へと、V字回復を遂げることができた。

セブン改革、井阪社長が踏み出した第一歩

 しかし10年代に入ると、ニッセンの業績は再び低迷する。スマートフォンの普及など市場環境の変化に対応しきれなかったことで、15年12月期まで3期連続の最終赤字を計上。上場維持すら難しい状況に陥っていた。

 すでに13年にセブン&アイ・ホールディングスと資本提携をしていたニッセンだが、16年には同HDの完全子会社として株式市場からの退場を決断することになる。

 ただし、完全子会社化はゴールではない。ニッセンとセブン&アイは本当に相乗効果を生み出せるのか。完全子会社化の先にある事業戦略が問われることとなった。

セブンの苦悩

 ニッセンとの業務提携とその後の子会社化は、セブン&アイ・ホールディングスにとって同社の「オムニ戦略」を推進する一手となるはずだった。だがアマゾンや楽天グループなどネット専業の通販サービスと競合したことで、オムニ戦略の行方は厳しい状況となった。

 オムニ戦略を推進するために、セブン&アイ・ホールディングスは15年11月にECサイト「オムニ7」を立ち上げた。ネットと実店舗の融合を狙い、百貨店のそごう・西武、スーパーのイトーヨーカドーなど、セブン&アイの多様な業態で販売する商品を、1つのサイトで一括購入できるのが特徴。ニッセンの買収もそうした流れの中で進められた。

 だが、当時、オムニ7は「成功」とはほど遠い状態にあった。問題は「サイトで買える商品が、セブン&アイのグループ企業が扱う商品に偏っているなど、サービスそのものに魅力がないことだ」と、複数のグループ会社幹部が指摘していた。

最後に

 カタログ通販の大手として圧倒的な知名度と売り上げを誇ってきたニッセン。だがその歴史は低迷と浮上の繰り返しだ。同社は現在、セブン&アイ・ホールディングスの子会社として事業再建を進めているが、21年2月期連結決算では営業赤字となっている。セブン&アイ自身も様々な問題を抱えており、今後、老舗企業がどのような復活劇を見せられるのか、注目したい。

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