若者世代よりも高齢者の声が優先される「シルバー民主主義」。超高齢化社会の到来と、若者の投票率の低さによってもたらされた現象だ。シルバー民主主義は世代間の格差を広げ日本の活力をそいでいるという指摘もあり、将来のために早急な対策が必要だ。今回はこれまでの記事から、シルバー民主主義をめぐる動きを紹介する。

日本の活力をそいでいる「シルバー民主主義」

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

 シルバー民主主義とは、有権者の中で高い割合を占める高齢者が優先される政治のことを指す。背景にあるのは少子高齢化だ。日本では2000年代後半から有権者に占める高齢者の比率が急上昇する一方で、20代~30代の有権者の投票率が低く、政治家にとって「高齢者の声」を優先すべき状況が続いているという。

 具体的な影響としては、たとえば多くの自治体において教育施設よりも高齢者向け施設の建設が、子育て世代向けよりも高齢者向けのイベント支援が優先される傾向が見られる。また年金、医療、介護など高齢者向けの支出が増える一方で、子育て世代や経済的に不安定な若者への支援は進んでいない。

 シルバー民主主義は世代間の格差を広げ、若い世代の、ひいては日本全体の活力をそいでいるという指摘もある。このままでは国の財政が機能しなくなり、世代間格差をさらに広げるという悪循環を招く可能性もある。政府は対策として選挙権年齢の引き下げなどを実施したが、現時点で有効性は認められていない。

 この記事ではシルバー民主主義にまつわる問題や、その対策についてこれまでの記事から振り返っていく。

「忖度(そんたく)」する社会がキレる老人を生む

 「キレる老人」がたびたび話題になる一方で、多くの高齢者は問題行動をしないまでも「手厚い社会保障費に支えられながら、社会の不安要素を増大させる存在」になっているという指摘がある。保育園の建設に反対したり、高等教育の無償化に反対したりする高齢者が多いのもその表れだ。

 こうした状況を生み出してきたのは、選挙のたびに医療や介護の充実を優先課題として掲げる政治家の姿勢だ。高齢者にとって耳の痛い議論や主張を避けてきたことで、世代間の格差や対立を生み出している。

小泉進次郎氏らが激論!高齢者優遇は行き過ぎだ

 小泉進次郎氏によると、シルバー民主主義の背景にあるのは「高齢者になったとき、誰もがいい思いをしたい」という意識だと言う。小泉氏は「高齢者への給付を支えるのが子供の世代であることを理解する必要がある」とする。

 「シルバー民主主義というのは、シルバーに耳障りのいいことを言うことではなくて、本当はシルバーの人たちに覚悟をもって真正面からぶつかっていくこと」と話す小泉氏は、「結局は、シルバー世代のことを、若者世代が信じられるのかどうか」がカギになると見ている。

「40歳定年制」は非常に合理的な意見

 「高齢者の投票率が高いからといって、その投票権を制限すべきだという主張は非現実的」と語るのは、昭和女子大学グローバルビジネス学部長・特命教授の八代尚宏氏。シルバー民主主義という問題を解決するには、「高齢者に日本の悲惨な社会保障の現状を理解してもらうしかない」と言う。

 そのための手法は2つあり、1つは理詰めで説得すること。年金はすでに不良債権だということをきちんと説明した上で、年金の一部切り下げを受け入れてもらう。もう1つは高齢者の「利他主義」に訴えること。「あなたのお孫さんを犠牲にしてまで多くの年金を受け取りたいですか」と問えば、日本の多くの高齢者は「とんでもない」と言うだろうと期待する。

「名誉」を年金辞退のインセンティブに

 民進党(当時)の細野豪志氏は、シルバー民主主義を克服するために「子育て世代、若者への社会保障を厚くする分、高齢者の側もこれまで権利と思われてきたものを少し削る、もしくは放棄してもらう」ことが必要になると指摘する。

 名誉を得られるなら年金の受給を辞退してもいいという高齢者の例を挙げて「お国に貢献したことを認めてほしい」という感情が高齢者の中にあるのではないかと推測する。その感情に応えて、国が高齢者に名誉を与えることが年金辞退のインセンティブになる可能性があるという。

高齢者優遇と医療費拡大、悪いのは誰だ?

 医療政策学の論客・津川友介氏は、「シルバー民主主義」というラベリングが「世代間対立をはっきりさせ、高齢者を悪者扱いしてしまうことにつながる」と危惧する。社会に対する不満のはけ口が高齢者に向いてしまうことで、米国で見られる人種間や宗教間の対立のようになってしまう可能性があるという。

 人は不満があるとそのはけ口を探す傾向があり、日本の場合、財政上の問題などもあり、そのはけ口が高齢者に向いているのではないかと指摘する。議論が本当に問題解決に向けて正しい方向性なのかを、冷静になって考えるべきだと話す。

最後に

 現代日本において深刻な問題とされるシルバー民主主義。既得権益を持つ高齢者と経済的な基盤が不安定な若者世代の格差と対立はますます大きくなっているが、根本にある問題や克服方法についてはさまざまな意見が存在する。

 とはいえ、高齢者のための社会保障費が財政上の負担になっていることは現実の課題として存在する。世代間にあつれきを生じさせないでシルバー民主主義を解消に向かわせることができるかどうか、今後の政府や政治家の動きを注視していきたい。

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