日本を代表する音響機器メーカーとして、75年以上の歴史を持つオンキヨーホームエンターテイメント。しかし生活スタイルの変化やヘッドホン技術の進歩などにより、同社が得意とする本格的なオーディオ機器の需要は低迷。事業の多角化や組織再編を繰り返したものの、2022年5月に自己破産を申請した。今回は過去記事の中から、オンキヨーの近年の歩みを振り返る。

経営破綻した老舗企業「オンキヨー」

 オンキヨーは、音響機器等の企画・開発・製造・販売を行っていた老舗メーカーだ。創業は1946年(社名は大阪電気音響社。その後、大阪音響)にさかのぼり、スピーカー搭載型のラジオやオーディオ機器、テレビ受像機などで当時の日本を代表する音響ブランドの1つになった。

 2000年代からはパソコン製造に乗り出すなど事業を多角化したものの、コンパクトなオーディオ機器の登場などにより本格的なオーディオ機器の需要は低迷。企業としても事業の分割や売却、他社との資本提携、さらには社名変更などを繰り返すことになった。最終的には22年5月にオンキヨーの後継会社である「オンキヨーホームエンターテイメント」が自己破産を申請、それに先立つ3月に子会社の「オンキヨーサウンド」と「オンキヨーマーケティング」がそれぞれ破産手続き開始決定を受けている。

 この記事ではオンキヨーが関与した近年のビジネスシーンや事業再編の動き、子会社の経営破綻について過去記事から振り返る。

黒字でもちゅうちょなく売却

 オンキヨーのライバルとして高い知名度を持つパイオニアが、祖業である音響機器事業を売却したのは14年。事業そのものは黒字だった上、売却先が長年のライバルのオンキヨーだったこともあり社内からは「信じられない」との声が上がった。それでも同社の小谷進社長(当時)は成長に陰りの見える分野を切り捨て、成長著しいカーエレクトロニクスに経営資源を集中させたいと考えた。

スマートイヤホンで買い物も可能に

 ソニーが先行した「スマートイヤホン市場」に、老舗音響メーカーのオンキヨーも参入。オンキヨー&パイオニアイノベーションズ(当時)は「HearThru(ヒアスルー)」という機能をイヤホンに搭載。この機能をオンにすることで、音楽などを聴いていても、電車内のアナウンスやクルマの接近音など特定の音が聴こえやすくなる。イヤホン装着時でも、周囲に注意を払える工夫をこらした。

Zoomマーケ成功の大原則 3本柱はファン醸成、接客、需要創出

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、Zoomをはじめとしたオンラインツールの活用が増えている。オンキヨー&パイオニア(当時)は20年、店舗(ONKYO BASE)に来店できない人向けにオンライン相談をZoomで始めた。コールセンターの担当者ではなく、問い合わせの内容に合わせて担当社員が直接対応。従来にない画期的な取り組みは「顧客との距離をオンラインで縮める」ための工夫だった。

オンキヨーが祖業売却へ、アップルが奏でるトレンド逃す

 21年、オンキヨーホームエンターテイメントは、祖業であるスピーカーやアンプなどの「ホームAV事業」を売却する方針をかためた。これは米アップルやソニーがリードするワイヤレスイヤホンが主流となり、さらに国内のオーディオ市場が最盛期の5分の1になったことが要因だ。資金繰りの厳しさから工場の稼働も止めざるを得ないほど苦境に陥っていた。

オンキヨー祖業買収の米老舗オーディオ、狙うはネトフリ需要

 21年、オンキヨーホームエンターテイメントは、米音響機器大手のヴォックス・インターナショナルとシャープへホームAV事業を売却すると発表した。主導権を握るのはヴォックスだ。狙うのはコロナ下で“ステイホーム需要“が高まった米市場。米ネットフリックスなど動画配信大手などの勢いに乗じ、ホームシアター文化の定着を狙う。

ソニー値上げ、オンキヨー子会社破産 半導体不足が問う競争力

 世界的な半導体不足を受けて、ソニーグループなど国内のオーディオブランドが軒並み製品の値上げを実施している。そうした中、オンキヨーホームエンターテイメントは22年3月、車載向けスピーカーなどのOEM(相手先ブランドによる生産)子会社であるオンキヨーサウンドと、国内でオーディオ販売を担うオンキヨーマーケティング2社の破産手続きが始まったと発表した。負債は2社合計で約25億円に上る。スマートフォンの台頭で据え置き型を中心に「オーディオ離れ」が加速したのが主要因だが、追い打ちをかけたのが半導体不足だ。

最後に

 国内トップクラスのオーディオメーカーとして一時代を築いたが、オーディオ市場の縮小やニーズの変化により、オンキヨーもライバルたちも事業の多角化や事業売却を余儀なくされた。ついには経営破綻にまで追いやられた。日本企業の今後に引き続き注目していきたい。

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