インフルエンサーを通して企業やブランド、製品などを宣伝する「インフルエンサーマーケティング」。各種SNS(交流サイト)サービスの発展とともに利用されるようになった新しい広告手法だ。今回はインフルエンサーマーケティングが広まった背景と具体事例、注意すべき点などについて過去記事からピックアップする。
新たな広告手段として活用される「インフルエンサーマーケティング」

インフルエンサーマーケティングとは、インフルエンサーの知名度を利用して企業・ブランドと消費者をつなぐ関係をつくりだすこと。具体的には企業から依頼を受けたインフルエンサーがSNS(交流サイト)アカウントを通して宣伝を行うことで、企業やブランドのイメージ向上、製品やサービスの売り上げ向上を目指す。
インフルエンサーマーケティングの背景にあるのは、各種SNSサービスの普及だ。Twitter、Instagram、Facebook、YouTube、そしてTikTokなどのSNSによって誰もが気軽に情報発信するようになり、その中から、多くのファン(フォロワー)を持つ「インフルエンサー」と呼ばれる人たちが登場してきた。
フォロワーが発信する情報は企業の広告より親近感を抱かせ、多くの人に強い影響力を持つ。そこに目を付け、マーケティングに利用するのがインフルエンサーマーケティングというわけだ。この記事ではインフルエンサーマーケティングの背景や事例、そして注意点について過去記事から振り返っていく。
中国発アプリ「TikTok」が日本でもウケた背景
インフルエンサーマーケティングで特に高い人気を誇るのが、中国・字節跳動(バイトダンス)が手掛けるTikTokだ。TikTokはネット動画の中でも「ショート動画」と呼ばれるジャンルに属し、2018年にはApp Storeの非ゲーム部門で第1位を獲得。長年、外国のヒット商品の模倣や後追いが多かった中国発のアプリとしては異例の成功例といえる。
TikTokが人気を集め、インフルエンサーマーケティングでも広く活用されるようになった理由は「①ユニバーサルなおもしろさ」「②投稿ハードルの低さ」「③多くの人に見てもらえる可能性の高さ」の3点だ。
中国・新消費で勝ち抜くフレームワーク「PPCC」とは
中国では「ITの活用による小売り・サービス領域で次々と生まれる新しいブランドやビジネスモデル」を「新消費(シン・シャオフェイ)」と呼ぶ。新消費で勝ち抜いている企業にほぼ共通しているのがPPCC(プロダクト、プロモーション、コミュニティー、コンテンツ)というフレームワークだという。
このPPCCのうち、特に後者のCC(コミュニティーとコンテンツ)のカギとなるのがインフルエンサーマーケティングだ。
不動産も「おまけ」 タイで広がるマーケティング新常態
タイでもインフルエンサーマーケティングは人気だ。FacebookなどSNSのライブ配信機能を利用した宣伝は、不動産から海産物の乾物まで、さまざまな業界で活用されている。
2020年7月10日にはLINEのタイ法人もインフルエンサーマーケティングを手掛けるTellscore(テレスコア)タイランドというスタートアップと業務提携を発表するなど、インフルエンサーマーケティング関連では、新型コロナウイルス禍でも活発な動きが見られている。
増える社内登用CDO、「脱・デジタル賢者」のなぜ
日本でもインフルエンサーマーケティングによる成功事例が増えている。日本で初めてのCDO(Chief Digital Officer=最高デジタル責任者)は、2015年、日本ロレアルのCDOに就任した長瀬次英氏といわれている。同氏がKDD(現KDDI)やフェイスブックジャパン、またインスタグラムの日本事業などで蓄積した知見を生かしたインフルエンサーマーケティングを実施し、デジタルチャネルでのプロモーションを強化。顧客の声をタイムリーに取り入れた商品開発やEC(電子商取引)の売り上げ向上を実現した。
「ステマ」でイメージ悪化も……本能マーケの失敗を防ぐ5カ条とは
一方、デジタルマーケティングには注意すべき点もある。それが「ステマ」によるイメージ悪化だ。
TikTokを運営するバイトダンスの日本法人では、2019年7月から21年12月末まで延べ20人のツイッターインフルエンサーに報酬として計約7600万円を支払っていたが、それぞれの投稿に広告であることを示す表記(「#PR」など)を記載させていなかった。そのことが一般ユーザーから、「もうけのためなら倫理もないのか」「インフルエンサーの信用も落ちた」と反感を買った形だ。
ファンに寄り添う「トヨタイムズ」の価値訴求
発信力のある少数のインフルエンサーを利用したインフルエンサーマーケティングではなく、自社のサービスやブランドを愛してくれるファンをベースに中長期的な売り上げ増加や事業価値の向上を目指す、「ファンベース」というアプローチもある。たとえばトヨタ自動車が展開するオウンドメディア「トヨタイムズ」がその一例だ。
最後に
インフルエンサーの発信力と影響力を企業のマーケティングに利用するインフルエンサーマーケティング。日本でも大小問わずさまざまな企業がこのマーケティング手法を活用しているが、高い効果が見込まれる一方で「ステマ」とみなされることによるイメージ悪化のリスクもつきまとう。もろ刃の剣となりかねないことも事実だ。
マーケティングを行う側の企業としても、また消費者としても、インフルエンサーマーケティングの今後に注目していく必要があるだろう。
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