OKRとは個人や組織の「目標」と「主要な成果」を設定し、それを達成していくためのフレームワークだ。シンプルなOKRは手軽に導入でき、かつ正しく運用されることで社内の統一した目標をスピーディーに達成できる。ここではOKRを導入している花王やメルカリなどの事例を過去記事から振り返っていく。

個人と組織の目標を統一的に管理する「OKR」

 OKR(Objectives and Key Results)とは、企業などが目標を設定し、それを管理するためのフレームワークのこと。OKRはまず全体の「達成目標(O)」と目標の達成度を測る「主要な成果(KR)」を設定する。次いでチームごとや個人ごとに細分化しながらOKRを設定していき、個人と企業全体の方向性を統一する。こうすることでスピーディーな目標達成を可能にする仕組みだ。

 似たようなマネジメント手法としては、ピーター・ドラッカーが提唱したMBO(目標による管理)が挙げられる。MBOは個人の目標が一部の限られたメンバー(上司など)とだけ共有されるが、OKRは社内全体で共有されるのが大きく異なる点だ。またパフォーマンスの管理という面ではKPI(重要業績評価指標)もOKRと似ているが、KPIはあくまでプロセスの進行度合いを把握するためのものなのに対し、OKRは組織や個人のマネジメントを目的とする。

 OKRはシンプルな手法ながら、組織の団結力の向上や、個人がより高い目標を設定しやすいというメリットがある。一方で高すぎる目標を設定することで不用意に評価を下げてしまったり、モチベーションを下げてしまったりするリスクもあるという。また適切なフィードバックが行われなければ効果を十分に発揮することはできない。

 それでもOKRは国内外で多くの企業に採用されている。よく知られているのは米グーグルの事例だが、日本でも花王やメルカリなどの事例が有名だ。この記事ではそうした事例のいくつかを過去記事から紹介する。

花王、個人目標の3割がESGの人事制度導入

 2021年に企業理念を刷新した花王。「社員活力の最大化」を目標の1つとして掲げ、その達成に向けてOKRを導入した。具体的には事業への貢献、ESG(環境・社会・企業統治)や部門間連携、人材・組織の活性化などにまつわる目標を設定するが、そのうちESGの目標が全体の3割程度だ。目標達成を人事評価にどう反映するかも検討し、貢献に応じた報酬制度も考えているという(2020年12⽉時点)。

 20年12月には、企業の環境への取り組みを評価する国際的な非営利団体・CDPで、日本企業初の「トリプルA」(気候変動、水、森林の3分野で最高評価)を獲得しており、日本を代表するESG先進企業の花王が、ESGをさらに推し進めると宣言した格好となった。

人事評価に「OKR」 花王が目指した社員の自立

 OKR導入の狙いについて、人財開発部門副統括の仲本直史氏は「夢や目標を臆することなく掲げてもらう」ことを挙げる。以前は達成率そのものを評価基準としていたため「どうしても実現可能な目標にとどまりがち」だったが、新たな制度の下では「あるべき姿」や「全国レベル」の目標を掲げる例も出始めているという。

 花王はもともと、KPIに基づく目標管理制度で社員を評価してきた。全社の戦略の下、それぞれの社員が100%の達成を目指す目標に業務を落とし込み、その目標をどれだけ達成できたかで評価する方式だ。この制度の下でも花王は成長してきた。

 だが、社会の目まぐるしい変化に揺さぶられているのは花王も例外ではない。ESGを重視する近年の風潮が環境保全に向けたさらなる対応を迫る。少子高齢化とそれに伴う人口減少時代を見据えて新市場開拓を進めなければならないとの課題もある。山積する課題に取り組むための手法の1つがOKRだった。

ESG先進企業、花王の長谷部佳宏社長に聞く「社員の活性化に手応え」

 OKRの導入から1年が経過した花王。長谷部佳宏社長は「今の段階で30点」と評価する。高く評価するのは「お客様のロイヤルティーを測るシステム」などデジタル面の整備だが、一方で新型コロナウイルスにより家庭用品を主力とする同社の事業全体が影響を受けていることを課題と感じているという。

 それでも「部門の会議などではOKRを基に自分の話をすることが定着し始めている」と語る長谷部社長。「まとめにかかる会議ではなくて、自分たちがどこまでやろうとしているのか追い詰める会議に変わってきている」と、社内に着実な変化が表れていることを指摘する。

メルカリ躍進の原点は「ミクシィでの教訓」

 OKR導入で有名なもう1つの国内企業がメルカリだ。同社は「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(すべては成功のために)」「Be Professional(プロフェッショナルであれ)」というバリューを実践しているが、その原動力となっているのが、人事評価の基準にバリューを組み込み、評価基準を社内で共有していることだという。

 どのように働けば会社は評価するのかを、社員の皆に明快に示す。例えば、ある社員が数値目標を達成したとする。もちろん「パフォーマンス」としては評価されるのだが、もし、それがチームワークを生かさなかったり、乱したりしたうえでの成果なら、「All for One」の観点で「欠けている」と判断し、トータルとしては高く評価されない仕組みになっている。

「なぜ利益を最優先しない?」経済学者が見た現場のリアル

 一方でOKRをはじめとする目標管理指標は、経済学の視点からは「業績の悪化につながる」という指摘もある。営利目的の組織である企業にとって一番重要なのは「利益」だが、多くの会社では中間的なコンセプトや目標設定に気を取られ、利益という視点からビジネスを最適化していない、というのがその主張の理由だ。

最後に

 花王やメルカリが導入するOKRは、企業と個人の目標を統一し、それをスピーディーに達成するうえで効果的なツールだ。

 だがどんなツールも適切に使われなくては意味がない。またツールの使い方ばかりに気を取られ、「利益を追求する」という営利企業本来の目的を見失わないよう注意も必要だ。自社がOKRをどのように利用できるか、また他社がどのように活用しているか、しっかりと見極めていかなければならない。

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