スーパーやコンビニエンスストアなどが、自社ブランドをチェーン展開する際に用いる「ドミナント戦略」。コスト削減や知名度の浸透、競合の参入抑止といった効果があることから、さまざまな業種で利用されている。ここでは過去記事に掲載されたドミナント戦略の「事例」を振り返っていく。

ドミナント戦略とは?

 ドミナント戦略、もしくはドミナントとは、チェーンストアなどが一定地域に店舗を集中させて、その地域における市場占有率を向上させる経営戦略のことを指す。日本ではスーパーやコンビニエンスストアを筆頭に、ホテルやドラッグストア、外食チェーンなどで採用されることが多い。

 もともと「ドミナント(dominant)」というのは「支配的」を意味する英単語だ。ドミナント戦略で地域を「支配」すれば、チェーン店にとっては「コスト削減」や「知名度の浸透」「競合の参入抑制」といったメリットが得られる。一方でドミナント戦略には、大規模な災害等のダメージを一斉に受けたり、同じチェーン店舗同士で顧客を奪い合ったり、といったデメリットもある。

 それでも多店舗展開をする企業にとって、ドミナント戦略は非常に効果的だ。この記事ではドミナント戦略に関する過去記事から、具体的な事例を中心に紹介する。

ドミナント戦略で全国的な知名度とシェアを獲得

 ドミナント戦略で全国的な知名度とシェアを獲得した焼酎メーカーが「霧島酒造」だ。クセのある芋焼酎、しかも地方の酒造会社でありながら、2011年の時点で10%以上の全国シェアを獲得している。

 同社は「販管費がかさむ大都市を最後まで避け、周辺の中規模都市を少しずつ攻略する」戦略で次々とドミナント戦略を展開。最終的には、東京を含む首都圏でも2桁の成長を見せている。

百貨店一本足から脱却

 「関西ドミナント化戦略」でシェアを伸ばしているのは、大阪市に本社を置くエイチ・ツー・オー リテイリングだ。

 同社では、自社が展開する百貨店(阪急百貨店、阪神百貨店)やスーパーマーケット(イズミヤ、阪急オアシス)を関西エリア全域に集中展開させようとしている。どうしても埋められないエリアについては、同社と株式を持ち合うセブン&アイ・ホールディングス傘下の「そごう」「西武」から店舗を引き継ぐという(当時)。

 2016年秋には、老舗スーパーの「関西スーパーマーケット」とも資本・業務提携を結んだエイチ・ツー・オー リテイリング。関西でのドミナント戦略をさらに推進していくつもりだ。

3分で分かる!コンビニエンスストアに今、何が起こっているのか

 コンビニエンスストア各社は、ドミナント戦略を採用している典型的な例だ。ほとんどのコンビニチェーンは、FC契約によって集中的な店舗展開を行う。だがライバルのチェーンや同じチェーン店舗との競争が増え、2011年以降の平均日販(1日あたりの売上高)はわずかに低下している。

アパグループ代表が断言「寡占化一番乗りを目指す」

 アパホテルもドミナント戦略を採用している。特に2010年以降、頂上戦略(SUMMIT5)と呼ぶ戦略を徹底し、「池袋・品川・新宿・浅草」に囲まれた都心を中心とするエリアで集中的な開発を進めてきた。

 インバウンド需要を背景に強気の用地取得・ホテル建設を続けるアパホテル。同業他社も同社のマネをしはじめており、すでに首都圏などの大都市を中心に「第1次オーバーホテル(供給過剰)現象」と呼ばれる競争状態が広がっている。

24時間365日、自宅に薬を届けるインフラ構築へ

 訪問調剤中心の薬局チェーンを展開するHyuga Pharmacy(現・HYUGA PRIMARY CARE)は、半径6km圏内に1店舗ずつ出店するドミナント戦略を採用している。どちらかというと「受け身で存在感の薄い」ビジネスを展開する薬剤師や調剤薬局としてはめずらしい、積極的な戦略だ。

 創業以来、一貫して成長を続ける同社。訪問調剤を「社会インフラ」にすることを目指している。

コロナ厳戒の高齢者施設「ワクチン普及までは元に戻れない」

 首都圏・近畿圏で約60施設・4000室の有料老人ホームなどを展開するチャーム・ケア・コーポレーション。コロナ禍の感染リスクが広がる中、同社の下村隆彦社長は「エリアを限定して展開することがリスクに対応しやすくなるポイント」と語る。

 今後の見通しについて、同社では「介護が必要な人は間違いなく増えている」「スタッフの確保という面でいえば、むしろ追い風」と強気の姿勢だ。

「居酒屋が焼き肉は無理がある」、「塚田農場」のエー・ピーHD社長

 新型コロナによって深刻なダメージを受けている業界の1つ、外食業界でもドミナント戦略は盛んだ。たとえば塚田農場ではアフターコロナの生き残りも見越したうえで、「チェーンストアとは真逆の、高級店ではないけれど職人の技術が味わえるお店」の展開を計画している。

 新たな計画の対象は、ドミナント出店している渋谷や新宿の店舗が中心だ。塚田農場の既存店舗のうち、20%程度を職人のいる店舗に変えるイメージだという。

「ニトリホームズ」が好発進、似鳥会長「ケチケチ作戦でいく」

 海外でドミナント戦略を展開しようとしているのはニトリだ。特に中国大陸では、既存の34店舗に加えて新たに13店舗の集中出店を計画している。

 国内では買収した島忠の店舗を「ニトリホームズ」としてリニューアル。コロナ禍を尻目に、国内外で積極的な拡大戦略を図っている。

最後に

 コンビニ、百貨店、スーパー、ホテルなど、私たちにとってなじみ深い数々のブランドが採用しているドミナント戦略。新型コロナの影響で売り上げが落ち込む業界の一部でも、ドミナント戦略の採用は行われている。現在のコロナ禍で、そしてアフターコロナにおいてこうした取り組みがどのような成果を見せていくか要注目だ。

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