総合建築業者として、設計・施工・研究をすべて自社で行うゼネコン。数千億円から数兆円の売り上げを誇る巨大企業が多い一方で、不況の影響を受けやすい、慢性的に人手が足りないといった課題も抱えている。ここではゼネコン各社が業界の課題をどう乗り越えようとしているのか、近年の記事から興味深いトピックを紹介していく。

「ゼネコン」を取り巻く課題とは

 ゼネコンとはゼネラルコントラクター(general contractor)の略で、設計・施工・研究をすべて自社で行う総合建築業者のことをいう。一般に日本では数千億から数兆円の売り上げを持つ建設会社をゼネコンと呼ぶことが多く、鹿島や清水建設など大手5社からなる「スーパーゼネコン」を筆頭に、前田建設工業や西松建設などの「準大手ゼネコン」、東洋建設や飛島建設といった「中堅ゼネコン」などに分類される。

 資本力や技術力に優れるゼネコンは大規模な建設工事の元請けになることが多い一方で、好不況の影響を受けやすい。また建設業の現場は「きつい」「汚い」「危険」のいわゆる3Kであることから、慢性的な人手不足に悩まされている企業も少なくない。

 今回はゼネコン関連の過去記事から、近年のゼネコンを取り巻く課題や各社の取り組みについて振り返ってみる。

建設現場が危ない

 2014年6月公開の記事「建設現場が危ない」は、東京五輪の開催決定や政府の国土強靱化(きょうじんか)計画などで業界が活気づく一方で、施工ミスや火災など現場の「技能崩壊」が進んでいる実態を取り上げた。和歌山県にある総合病院の建て替えでは作業管理が不十分だったことで計画より1年半も完成が遅れることになった。首都高速道路の高架下工事では申請ももないまま塗装をはがすためにシンナーを使い、火災発生による3日間の通行止めという重大な結果を招いた。

 これらの背景には、急増する建設需要に人手が追いついていないという問題がある。経験に乏しい未熟な技能者が現場に多数配置される一方で、ベテラン技能者には彼らを指導するだけの余裕がない。結果として現場の「技能崩壊」を招いた。

 いかにして若手技能者を集め、彼らに技術を身に付けさせるかが大きな課題となっていた。

職人不足解消に背水の陣

 人手不足の解消に向け、スーパーゼネコンの鹿島が2017年に取り組み始めたのが「直接雇用」だ。これまで下請けの協力会社が雇っていた特殊技能の職人を直接雇用し、自ら優秀な人材を育成することを狙った。

 また若い世代の職人を増やすため「職場環境の改善」にも力を入れた。4週間で休日4日という現場が主流だった当時、1日の作業時間を1時間半増やすことにより総作業時間を維持しつつ「4週間で休日8日」を目指した。

清水建設、不動産に懸ける五輪後5000億円投資

 東京五輪・パラリンピックの関連工事需要により、好況に沸いた建設業界。一方でゼネコン各社は、受注が一段落した2019年ごろには「五輪後」を見据えた生き残り策に力を入れるようになった。スーパーゼネコンの清水建設では19年度からの中期経営計画で、不動産開発への積極投資を打ち出した。投資を予定していた7500億円のうち5000億円を不動産開発に投入する方針を立てた。

 かつてのバブル期には多くのゼネコンが不動産価格の下落で、経営危機に陥った。清水建設は「社外取締役制度の導入などガバナンス機能は向上しており、当時と同じことにはならない」と自信を見せた。同社のリスク管理能力に注目が集まった。

民が変えるインフラ運営「コンセッション」は日本を救うか

 一方、準大手ゼネコンの前田建設工業が取り組んだのは「コンセッション」だ。コンセッションとは高速道路や空港、上下水道などの運営権を民間に売却することで、建設コストなどを素早く回収する仕組み。

 前田建設工業は、2019年の取材当時、愛知県有料道路や仙台空港の運営などによりコンセッション関連の営業利益が60億円強に達していた。連結営業利益の2割近くに達する数字だった。

 前田建設がコンセッションに目を付けたのは、建設不況の嵐が吹き荒れた2000年ごろのこと。準大手ゼネコンが生き残るための道として、建設請負に代わる新たなビジネスモデルとにらんで研究を始めた。

ゼネコンにもESGの波。準大手が蓄電池開発

 ESG(環境・社会・企業統治)に注目が集まる中、再生可能エネルギー分野の事業に乗り出したのが準大手ゼネコンの西松建設。長寿命が特徴の「レドックスフロー電池」と呼ばれる蓄電池を開発するスタートアップのLEシステム(福岡県久留米市)に出資し、新たな収益源の獲得を目指す。

 太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーは天候に左右されて発電時間や発電量が安定しないため、電気をためる蓄電池と組み合わせて使うことが増える。西松建設はここに目を付けた。

 これからの時代、建築物には「デザイン」だけでなく「ESGにどれだけ配慮しているか」という観点が求められる。この流れをつかむために、蓄電池の開発は西松建設にとって重要な取り組みになる。

最後に

 建設に関するさまざまな部門を社内に持ち、大規模な売り上げを誇るゼネコン。近年は東京五輪・パラリンピックに向けた建設需要などにより、好況が続いていた。各社とも「五輪後」の収益源の確保が急務となっている。これからのゼネコンがどのような生き残り策を打ち出すのか注目していきたい。

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