日本を代表する食品メーカー、「カゴメ」。主力商品のトマトケチャップがあまりにも有名だが、同社ではトマト製品以外の商品開発や、働き方改革にも積極的に取り組んでいる。過去記事を通して、カゴメの経営戦略やポリシーを紹介する。

コロナ禍でも業績好調な「カゴメ」

 名古屋市に本社を置く「カゴメ」。創業者・蟹江一太郎が1899年に開始したトマト栽培事業を母体とし、トマトソースやトマトケチャップの製造販売で大きく発展してきた。現在では東証1部に上場する日本を代表する食品メーカーの1つだ。

 売上高は1830億円(2020年12月期)に上り、21年には1880億円の売り上げが予想されるなどコロナ禍にあっても業績は堅調だ。その背景には、創業以来の主力製品であるトマトだけにこだわらない姿勢や、農場経営や新品種の開発などに取り組むチャレンジ精神、そしてカゴメ流の働き方改革がある。

 ここではカゴメの経営戦略や取り組み、働き方改革をめぐる社長インタビューなどを紹介する。

「待ちの経営」と決別

 トマト関連商品で有名なカゴメ。そのトマト製品と並んでヒットを続けているのが「野菜飲料」と、約3年の歳月をかけて開発したスムージー「GREENS(グリーンズ)」だ。

 だがグリーンズは、順調に成長してきたわけではない。むしろ「2週間」という賞味期間の短さと「生野菜特有の青臭さ」が消費者に敬遠され、15年9月の発売から3カ月後には売り上げがピーク時の10分の1にまで大きく落ち込んだこともある。

 それでも諦めなかったカゴメ。消費者分析をはじめ、製造方法や原料の見直し、賞味期間の延長など「2年で7度」のリニューアルを実施し、市場から次第に受け入れられていった。

トマト栽培を10年で黒字化、カゴメの未来工場

 カゴメは食品製造だけでなく、トマト栽培にも取り組んでいる。カゴメブランドのトマトはすでに全国のスーパーの生鮮コーナーで大きな存在感を誇っている。それらを生産している農場の1つが、山梨県北杜市にある「明野菜園」だ。運営するのは地元の農業法人だが、カゴメが日本に導入した「セミクローズド」と呼ばれる技術を利用して、「1平方メートル当たり70~75キログラム」と通常の7倍以上もの高収量を実現している。

 セミクローズドはもともと米国の農家が発案したものを、オランダの企業と組んで開発した技術だ。ただし、オランダと比べ、日本は夏の暑さが栽培の足を引っぱる。そのハンディの克服に挑戦し続け、高収量を実現した。それ以外にも未来のトマト栽培のイノベーションの芽をいくつも育む努力をカゴメは続けている。

カゴメの長期目標は全階層女性比率50%

 カゴメの挑戦は製品作りだけではない。19年までカゴメの社長だった寺田直行氏は「イノベーションは、異質同士がぶつかり合うところから生まれる」と語り、10年後の未来に向けて「女性比率を50%に~社員から役員まで」という長期ビジョンを打ち出した。

 カゴメ商品の購入者は女性が大部分を占め、21万人超の個人株主も15年12月末時点では、女性が54%を占めていた。当時の新卒総合職の応募者数も、男性290倍に対して女性は590倍だ。圧倒的に女性の支持を得ている強みを生かし、これからもダイバーシティー(多様性)への取り組みを率先していく考えだ。

3カ年計画と合わせて働き方改革を推進

 寺田氏は「働き方改革」にも積極的だった。14年度から導入した3カ年計画と合わせて働き方改革に取り組んだ。残業抑制の工夫(午後8時になったら音楽を流し、照明を落として終業を余儀なくさせる)や、自己申告で希望する勤務地で働ける「地域カード制度」、会議のムダを減らす取り組み(時間は2時間まで、全部ペーパーレス、質問は事前にやりとりする)を推進した。

 「アットホームな中小企業が理想」だという寺田氏。社員の働きやすさを追求することで、会社の成長だけでなく日本を豊かにするサイクルを作っていきたいという。

「変化に疎い」カゴメで働き方改革が急速に進んだワケ

 働き方改革を推進するには、社員の共感が欠かせない。そのために、寺田前社長は常に「従業員だったらどう思うか」という視点を持ち「会社として存続するための構造改革の必要性」を根気強く伝えていた。

 もともと「かなり残業体質の会社」だったというカゴメ。残業の習慣を減らすためにトップダウンで「ムダ、ムリ、ムラ」を徹底的に洗い出し、20年までに「年1800時間以内」の労働時間を目指すとしていた。

仕事人間になるな「生き方改革」が個人と会社を強くする

 カゴメは働き方改革を超える「生き方改革」を掲げてきた。その背景にあるのは「強い個人」が必要という寺田前社長の思いだった。

 これまでカゴメは社内外から「優しい会社」という評価を受けていた。しかし勝ち残る強い企業に必要なのは「働く社員一人ひとりが強い個人になる」ことだという。一方で「仕事人間にはなるな」とも語る寺田氏。仕事とプライベートを合わせた「生き方」に注目していくのが、カゴメ流の経営哲学だ。

最後に

 トマトジュース、トマトケチャップなどの商品で親しまれ、誰もが知る「カゴメ」。主力のトマト製品だけでなく、農場経営や農業技術の開発など様々な取り組みを続け、堅調な経営を続けている。

 カゴメが注目されるのはモノづくりだけではない。寺田前社長の経営哲学に基づく「働き方改革」「生き方改革」もまた、カゴメの強さの秘密だ。同社の成長に、これからも注目していきたい。

 さらに詳しい記事や、会員限定のコンテンツがすべて読める有料会員のお申し込みはこちら

この記事はシリーズ「テーマ別まとめ記事」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。