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毎年、一定数の外資系企業が日本市場から撤退している。撤退するのは知名度の低い企業や、規模の小さい企業ばかりではない。中には誰もが知るような有名企業が日本撤退を選んだケースもある。ここではそうした事例のいくつかを紹介していく。

外資系企業が「日本撤退」を決断するワケ

 アジアの中心拠点として、そして世界有数の経済規模を誇るマーケットとして多くの外資系企業が進出してきた日本。その一方で、日本撤退に踏み切る企業は毎年後を絶たない。経済産業省の「外資系企業動向調査」によると、2018 年度中に撤退や解散した企業(外資比率低下を含む)は 84 社。その前年(17年度)は83 社、16年度は149 社、15年度は151 社といった具合で、毎年相当数の企業が日本から撤退していることがうかがえる。

 日本撤退の理由はさまざまだ。たとえば日本でのブランド知名度が低かったり、マーケティングが日本人の消費者心理に合わなかったりしたために「販売が伸び悩む」ケースが考えられる。また日本のマーケットの縮小、強力なライバル(日本企業や他の外資系企業など)の出現、さらには企業風土や商習慣の違いによって日本人従業員や取引先が離れてしまうといった理由でビジネスに支障をきたした企業も少なくない。

 日本から撤退してシンガポール・香港・台湾・タイ・インドネシアといったアジア諸国に拠点を移す外資系企業もある。その背景にあるのは、他のアジア市場へのアクセスといった地理的な要因や、人件費の安さ、柔軟な法制度、市場の成長性といったビジネス環境の要因だ。

 今回の記事では外資系企業の「日本撤退」にスポットを当て、過去記事からいくつかの事例をピックアップする。

挽回かなわず、日本撤退

 15年2月に日本から撤退した「ヴァージン・アトランティック航空」。同社は英国を代表する航空会社の1つで、これまでも「エコノミークラスへの個人用テレビの設置」「プレミアムエコノミークラスの導入」といった革新的なサービスで業界をリードしてきた。

 日本には1989年に「東京(成田)~ロンドン路線」で参入した同社。消費税増税やライバル参入による売り上げ減少、燃料費高騰や円安による運航コスト上昇などを踏まえ、本社役員レベルで路線の廃止が決定されたという。

 競争力強化のために一時は羽田空港への移行も検討したが、国土交通省の「成田縛り」と呼ばれるルールのために断念。同社関係者はもちろん、利用者からも惜しまれながらの撤退となった。

新社長の独白ジョン・キム[ビーケージャパンホールディングス社長]

 日本撤退を経て、再び日本市場に参入したブランドが「バーガーキング」だ。米国では圧倒的な知名度を誇り、全世界でもマクドナルドに次ぐ世界2位のハンバーガーチェーンだが、日本市場では苦戦している。

 バーガーキングが初めて日本に参入したのは1993年のこと。しかしメニュー単価の高さとマクドナルドとの競争で売り上げが伸び悩み、2001年に撤退した。日本に再進出したのは07年だ。当初はロッテリアが支援する「バーガーキング・ジャパン」が、次いでロッテリアが事業を行ったが、現在は17年に設立された「ビーケージャパンホールディングス」が日本での事業を運営している。

 国内のバーガーキングは、18年の段階で98店舗。「18年からの今後5年間で200カ所の出店」を目指すとしており(当時)、成長が期待されている。

世界戦略に透ける西友売却の必然

 世界最大のスーパーマーケットチェーン「ウォルマート」。子会社の西友を通して日本市場に参入してきたが、7、8年前から「すでに日本市場で成長戦略を描けなく」なっていたという。18年7月の時点で、西友を売却し、日本から撤退する方針とみられていた。

 米国の本社広報部は「売却は決めていない。買い手候補と協議しておらず、引き続き、顧客ニーズの変化に対応できるように日本事業を構築する」と日本撤退を否定する(18年7月当時)。だがマクミロンCEO(最高経営責任者)の「米国、カナダ、メキシコ、中国、そしてインド」を優先するという発言からも、日本撤退は確実とみられていた。

※記事公開後に西友は売却から「再上場」へと方針変更され、ウォルマートは現在(20年7月時点)も日本市場に参入を続けている。

メルカリ人気、格安衣料が失速

 アパレル業界でも日本撤退や事業縮小する企業・ブランドが相次いでいる。その1つが英国のアパレルブランド「next」だ。日本を含む世界40カ国に店舗を展開しているが、18年秋から日本国内での婦人服、紳士服の販売を休止し、子供服のみを取り扱うという。

 米国の「フォーエバー21」も店舗数を削減、同じく米国のGAPが手掛ける「オールドネイビー」は17年に撤退した。

 こうした背景にあるのは、「若い人が服にお金をかけなくなった」ことと、メルカリをはじめとするフリマアプリの普及だ。中古品に抵抗を感じず、ファストファッションよりも「中古のハイブランド」を選ぶ若者が増えているのだという。

オペルが15年ぶり日本再上陸 「もう撤退しない」

 06年に日本から撤退したドイツの自動車メーカー「オペル」が、21年後半に再び日本市場に参入する。「約束する、今回は撤退することはない」と語るのは同社CEOのローシェラー氏だ。

 日本撤退当時はゼネラル・モーターズの傘下だったオペル。かつての失速について「米国思考で欧州のエレメントを学べなかった」ためと語る。フランスのPSAの傘下にある現在は「それが可能になった」といい、18年には前年比27%のコストカットと約20年ぶりの黒字を達成。順調な体質改善を背景に、22年までに日本を含む20カ国に進出する予定だ。

最後に

 日本市場から撤退や縮小した外資系企業は、企業の規模もブランド力もさまざまだ。中には圧倒的な知名度や実績がありながら、ライバルとの競争に敗れ撤退していくケースもある。

 とはいえ、一度は撤退しながらも「日本再上陸」を果たす企業も少なくない。日本の経済や文化の発展のためにも、外資系企業の動向に注目していきたい。

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