公的サービスの効率化などを目的にスタートしたマイナンバー制度。2016年28年1月から始まった制度だが、導入前から現在までの過程はスムーズとはいえない。つい最近も「特別定額給付金」を巡る混乱が生じたばかりだ。今回は、過去記事の中からマイナンバー制度に関する話題を取り上げる。

「マイナンバー」とはどのような制度か?

 16年1月にスタートした「マイナンバー」制度。公的サービスの効率化や、国や自治体同士の情報共有などを目的に「マイナンバー法(正式名称:行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)」によって制定された制度だ。

 マイナンバー制度の目的は次の3点だ(総務省ホームページ「マイナンバー制度」より引用)。

  1. 「公平・公正な社会な実現」…社会保障・税関系の申請時に課税証明書などの添付書類が削減されるなど、面倒な手続きが簡単になる。また、本人や家族が受けられるサービスの情報のお知らせを受け取ることも可能になる予定。
  2. 「国民の利便性の向上…面倒な行政手続きが簡単に」…国や地方公共団体の間で番号情報が共有されることにより、これまで時間がかかっていた情報の照合や転記等に要する時間・労力が大幅に削減され、手続きが正確でスムーズになる。
  3. 「行政の効率化…手続きをムダなく正確に」…国民の所得状況等が把握しやすくなることで、税や社会保障の負担の不当逃れや不正受給の防止、本当に困っている人へのきめ細かな支援が可能になる。

 当初は主に公的サービスなどで利用されるマイナンバー制度だが、制度の開始は民間企業にとっても人ごとではない。従業員とその扶養家族の番号を源泉徴収票に記載するため、膨大なコストと手間をかけてシステム構築する必要があるからだ。対応を誤れば、個人情報漏洩など深刻な問題を抱えることになってしまう。また「番号で管理される」というイメージからか、制度に不信や警戒感を持つ人も多い。

 この記事では制度開始直前から最近の「特別定額給付金」を巡る混乱まで、マイナンバー制度関連のトピックを紹介していく。

マイナンバーに潜む危機

 マイナンバー制度開始まで「1年」となった2015年2月(当時)、多くの民間企業が制度への対応に手間とコストを強いられている。一方で「何のこと?」「担当部署は未定」「これから考える」といった反応の企業も少なくないが、個人情報の漏洩には厳罰が伴う。

 また制度が本格的に導入されると、納税事務とマイナンバーがひも付くことになる。「従業員の所得がガラス張り」になるため「扶養控除を悪用している会社員が、相次ぎ摘発される」と予測する声も少なくない。

 メリットだけでなくリスクも伴うマイナンバー制度。経営トップを筆頭に、企業全体での対応が求められている。

すぐ動かないと手遅れ マイナンバー最終案内

 マイナンバー制度の開始まで4カ月弱となった15年9月中旬(当時)。制度をめぐり証券業界や人材派遣業界が活気づく中で、マイナンバーを含む個人情報の「漏洩」が危ぶまれている。

 違反には厳罰が伴うため、情報の取り扱いルールやシステムの構築も重要だ。IT業界や士業の中には、こうしたニーズを取り込む動きもある。

 米国ではマイナンバーによく似た「社会保障番号」の悪用事例もあるため、企業経営者たちの責任は重大だ。

マイナンバーで綱渡りの日本郵便

 制度開始まであと1カ月と迫り(当時)、マイナンバーを知らせる「番号通知カード」の配達が大詰めを迎えている。12月6日時点で約97.4%に当たる5536万通が配達され、残る148万通は20日までに配達される見通しだという。

 だが番号通知カードは「簡易書留」で送られるため、受け取る人は配達の際、家にいる必要がある。このため配達の効率はどうしても落ちるが、この12月はお歳暮、クリスマスプレゼント、おせち料理、年賀はがき、マイナンバー番号通知カードの「五重苦」となる時期だ。日本郵便の担当者やスタッフの実力が試されている。

なぜ、マイナンバーは使われないのか

 マイナンバー制度の開始から1カ月が経過したが、制度の利用は進んでいない。肝心のマイナンバーカード取得率はわずか10%程度だ。

 その理由として挙げられるのが制度への不信感だという。世論調査によると「所得状況がすべて把握されてしまう」「保険料が未納だとすぐ催促される」など、マイナンバーカードに「負担」をイメージする人は少なくない。

 メリットよりもリスクばかりが意識されるのは、マイナンバー普及を目指す政府の姿勢が十分ではなかったことの表れとも言える。マイナンバーの導入・運用にかかったコストをムダにしないためにも、政府にはより一層の取り組みが求められている。

新型コロナで電子政府へ再出発 第一歩は「デジタル身分証」

 5月に入っても依然として普及が進まないマイナンバー制度。普及を促進するためには「官民の役割を再定義する必要がある」という専門家の声もある。

 その一人が、ブロックチェーン技術を使ったデジタル身分証アプリを手掛けるblockhiveのCEO(最高経営責任者)、日下光氏だ。blockhive社では現在、マイナンバーカードを使ったデジタル身分証サービス「xID(クロスアイディー)」を提供している。同サービスを使えば、スマホで銀行口座を利用する際などに本人確認の手間を大幅に省くことが可能だという。

 マイナンバー制度をはじめとする「電子政府」を推進するためにも、官民を挙げた取り組みと「成功体験」の積み重ねが求められている。

大混乱、世帯単位給付金に「マイナンバー」が向かない理由

 新型コロナウイルスによる経済ダメージへの救済策として、国民1人当たり10万円を支給する「特別定額給付金」制度。申請を受け付けるのは市区町村だが、そのオンライン申請を巡り現場が混乱している。

 実はオンライン申請にはマイナンバーカードが必要だ。しかしマイナンバーカードの普及が進まないことに加え、申込者側の入力ミスが窓口の負担増につながるといった事情もあって受け付けの流れはスムーズとはいえない。自治体の中には、オンライン申請を中止して郵送申請に一本化したところもある。また外出自粛が続く中(当時)で、役所の窓口が混み合うといった皮肉な現象も各地で見られているという。

 給付金を機にマイナンバーカードを普及させようという政権の思惑も見え隠れするが、「そもそも今回の給付金にマイナンバーカードがそぐわない」という声も無視できない。

メリットがリスクに釣り合わず、マイナンバーカードに不満の声

 特別定額給付金制度はマイナンバーカードの普及に一役買ったものの、一方で「使い勝手の悪さ」を指摘する声は依然として根強い。

 アンケート結果によると、マイナンバーカードを「既に持っている」人とマイナンバーカードで給付金を「申請する」人の合計は、全体の3分の2を占めている。一方でそのうちの2割が「活用の場がほとんどない」と回答しており、制度のメリットが十分に生かされているとはいえない。

 またマイナンバーカードと個人情報をひも付けることについては、「政府がセキュリティーやサービスを充実させない限り申請する気はない」「中国のような監視社会になるのはごめんだ」など否定的な意見が多い。

 マイナンバー制度を普及させるためには、「メリットを明確にし議論の前提を早期に整える」政府の取り組みが必要だ。

最後に

 混乱の中で始まったマイナンバー制度。サービス開始から4年以上が経過した現在でも、メリットより個人情報の漏洩リスクや「監視されている」という警戒感の方が目立っており、普及は進まない。

 将来的には公的サービスだけでなく、民間企業によるサービスでもマイナンバーの活用が期待されている。メリットを最大限に発揮するためにも、官民をあげた取り組みが期待されている。

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