ドラッカーはオーストリア出身の経営学者。現在ビジネスシーンでは必須の「マネジメント」という概念を提唱したのはドラッカーである。経営やマネジメントだけではなく、個人の動機付けや組織のあり方、社会について幅広く論じ、経営者にもファンが多い。ドラッカーの名言や思想、それらに影響を受けた人物に関する記事をまとめた。

ドラッカーはどんな人物?

 ピーター・ファーディナンド・ドラッカーは、1909年にオーストリア・ウィーンで生まれた、ユダヤ系オーストリア人経営学者だ。日本でも管理職に就いている人や、経営者の間では必ずと言っていいほど知られている。ドラッカーが書いた著書は世界中のビジネスパーソンに読まれ、影響を与えた。そしてその理由は、「現代経営学」あるいは「マネジメント」を発明したからにほかならない。それだけではなく、個人の動機付けや組織のあり方や社会について幅広く論じたことでも知られている。有名な著書としては『経営者の条件』や『現代の経営』などがある。

ドラッカーとの交流で自ら進むべき道にまい進

 一般財団法人日本総合研究所初代会長の野田一夫氏は、ドラッカーの著書『現代の経営』との出合いをきっかけに、これまで大学教育の改革を行ってきた。留学していたときに出合った同作を出版したことを機に、ドラッカーの推薦により米マサチューセッツ工科大学での研究を行った。そこでの研究生活から大きな影響を受け、帰国後は様々な大学で新学科を設立し、大学改革の推進を行った。

“名ばかり専務”を経営者に変えた言葉

 ドラッカーは生涯、自らに「何によって覚えられたいか」と問い続けた。誰にどんな存在として覚えられたいかを問うことは、自らがどのように他人に貢献し記憶を残してもらえるか考えることにもつながる。結果的に、自分がなすことが見え、覚悟も決まるという意味である。この考えを実践したのが乾物を取り扱う食品メーカー「真田」(京都府宇治市)の真田千奈美専務である。食生活の変化により乾物市場が縮小傾向にある中、会社の役割を「良き生産者との協業による品質重視の商品づくり」と定義しなおした。それから経営改革を数年続けた結果、連続増収増益という結果を出した。

路線バス復活の裏にドラッカーあり!

 十勝バス(北海道帯広市)の野村文吾社長にとって、ドラッカーの言葉で最も響いたのが「イノベーション」だ。同社は90年以上地域の交通インフラを支えてきたが、利用者の減少から厳しい状況が続いていた。しかし、野村社長によるイノベーションによって利用者数がV字回復したという。10年かけて社員に営業強化を呼びかけ続け、ドラッカーの教え通りに小さなイノベーションから着手していった。その結果、バスの非利用者の声が分かり、有効な施策につながった。

ドラッカー的に女性誌を読み込んだ美容師

 美容院「BALANCE.」(岡山県倉敷市)の才野裕識社長はもともと、美容師コンテストにノミネートされるほどの腕前の持ち主。しかし自分のお店を構えた後、技術を重視する才野氏についてこられず、スタッフが離れていったという。その時に出合ったのが、「顧客にとっての関心は、自分にとっての価値、欲求、現実である」というドラッカーの言葉。才野氏は技術を追い求めることを重視しすぎ、顧客の欲求を満たすことをおろそかにしていたと気づく。そして現状を変えるべく、まずは顧客の現実を知るために女性ファッション誌を研究し、どのような価値を提供できるか、スタッフと議論した。そこから生まれた新たなサービスが好評を博し、顧客のリピートや紹介が増えたという。

原田泳幸:ドラッカーの神髄をいく

 ドラッカーは、企業の基本機能はマーケティングとイノベーションにあると述べた。その神髄を理解し、体現している経営者が原田泳幸氏だ。その手腕が大いに発揮されたのが、2004年に日本マクドナルドホールディングスに移ってからだ。社長就任直後から、ブランドイメージの立て直しに奔走し、難局を見事に乗り切った。弱った組織を立て直し、既存店売上高で対前年比8年連続プラスを達成した。

ドラッカーと考える「働き方改革」の本質

 ドラッカーのモノの見方を学ぶことで、新たな視点や選択肢に気づくことができるだろう。現在、企業や仕事を取り巻く環境は変化している。「働き方改革」について、ドラッカーならどう考察するだろうか。現代は、対話から生まれるアイデアや知的資本の競争力が求められる時代である。そのような知的労働を効率的に生み出すためには、仕事の目的を考え、セルフマネジメントをしていくことが重要だ。そして、あらゆる情報が氾濫する知的資本時代には、ますます「意思決定」と「集中」をする勇気が求められている。

ドラッカーと考える「民主主義と経営」

 ドラッカーは、一人ひとりの身近にある会社や職場の「マネジメント」に、民主主義を守るための鍵があると断言した。過激なリーダーの言動に同調してしまう根底には、経済的な不満や不安がある。そこでドラッカーは、個人の能力が生かされ、顧客の喜ぶ価値を創造できれば、経済的問題を民衆が解決して健全な社会をつくれると考えた。そのために日々の仕事や活動におけるマネジメントの重要性を唱えたのである。経営やマネジメントを学ぶことは、経済的な価値だけではなく他者との交流や成長の場など、社会基盤をつくることにつながる。

ドラッカーは販売を勘違いしている?

 ドラッカーの有名な言葉に、「マーケティングの理想は販売を不要にすること」がある。この言葉の真意は、「顧客は何を買いたいか」「顧客が見つけようとし、価値ありとし、必要としている満足はこれである」といったことを考えよということである。つまり、ここでいう「販売」とは、営業力に頼って強く売り込むような「最後の一押し」のことである。

世界で「知の競争」に勝つには、ドラッカーを読んでいるヒマはない

 ここまでドラッカーの言葉に影響を受けた人物について取り上げてきた。しかし、米国の経営学者はドラッカーを読まないという。一体なぜだろうか。その最大の理由は、ドラッカーは名言があっても科学ではないからだ。米国の経営学は、経営理論の構築と、統計分析や実験を重視しているが、ドラッカーの発言には科学的な裏打ちがないので参考にしないという。しかし、だからといってドラッカーに意味がないというわけではない。ビジネススクールや大学の研究では、科学的な方法で調査することが求められているという現実があるようだ。

最後に

 ドラッカーの言葉やそれに影響された人物について紹介した。会社や社会環境の急激な変化がある現代でも、ドラッカーの考え方には参考になる部分が多い。経営やマネジメントだけではなく、根本的な働き方について考えたいときにもドラッカーを読んでみてはいかがだろうか。

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