スポティファイは、スウェーデンで生まれた世界最大の音楽ストリーミングサービスだ。現在、世界中で多くのユーザーを抱える同サービスの概要・沿革、そしてここ数年の動向を過去のニュースを遡りながら紹介する。

スポティファイの概要・沿革

 スポティファイは、スウェーデンの企業スポティファイ・テクノロジーによって運営されている音楽ストリーミングサービスだ。2020年現在、2億7100万人以上のユーザーを抱えており、音楽配信サービスとしては世界最大手。ユーザーは、無料プランと有料会員プランを楽しむことができ、無料プランは広告でマネタイズされている。2016年頃には、この無料について、米国のアーティストや音楽業界関係者から批判も見られたが、現在は落ち着いている印象だ。

スポティファイは音楽を救うか

 スポティファイが日本に上陸したのは、2016年9月末。当時、世界で1億人が利用しており、うち4000万人が有料会員だった。国内では当時、「AWA」「LINE MUSIC」「Apple Music」などが相次ぎ定額音楽配信を開始していた。これらと一線を画する武器が、スポティファイの「無料プラン」だと言われていた。スマートフォンで個別の楽曲を選べない、広告が入る、有料プランに比べ低音質、といった制約があるものの、楽曲が集まった20億種類以上もの「プレイリスト」から好みのリストを自由に選び、無料で無制限に楽しめる。だが一方で、この無料プランが参入を遅らせた要因でもある。諸外国に比べ、CD販売の落ち込みが緩やかな日本の音楽業界は、このプランに反発していたのだ。4年前から進出を模索していたスポティファイは、権利者との調整に手間取っていた。

 米国の人気アーティスト、テイラー・スウィフトも「音楽は無料ではない」と主張。一時、自身の楽曲全てをスポティファイから引き揚げるなど、欧米でも一部からの反発があった。しかし、日経ビジネスの取材に応じたスポティファイの創業者、ダニエル・エクCEO(最高経営責任者)はこう反論する。「音楽が無料で提供されているという誤解が、まだ音楽業界にある。無料プランでも広告収入というものが生まれているわけで、収益は音楽業界やアーティストに還元されている」

エクCEO「スポティファイへの誤解がある」

 さらに、エクCEOは本誌の別の記事で「音楽が無料で提供されている」という誤解が、まだ音楽業界にあると改めて語る。「無料プランであっても広告収入というものが生まれているわけで、収益は音楽業界やアーティストに還元されている」と、改めて強調した。この動きは、音楽業界の歴史の中でも最大の変化であり、この点について、さらなる啓蒙が必要だと考えていると語った。

 実際、CDなど物理的なメディア、ダウンロード販売による著作権収益が縮小する中、スポティファイのような「ストリーミング」メディアがもたらす収益が、今成長をもたらしている。実際、米音楽市場のストリーミング配信による売上高は2016年上半期で57%も増加。そして、ストリーミングによって音楽業界に還元される収益の約半分をスポティファイが占めているという。

スポティファイ、2019年後半に車載向け音楽プレーヤー投入へ

 そんなスポティファイだが、2019年後半、音声制御の車載向け音楽プレーヤーを投入すると発表。これを、英フィナンシャル・タイムズが18日報じた。スポティファイは、米アップルなどの製品を通じてサービスを提供する仕組みを変える狙いがあるという。

音楽ストリーミングのスポティファイ、ポッドキャストのギムレットメディアと買収交渉

 さらに、スポティファイはポッドキャスト配信サービスの米ギムレットメディアを買収する交渉をしていると、米ウォール・ストリート・ジャーナルが2019年2月1日に報じている。ギムレットメディアは2014年の創業で、様々なポッドキャスト番組を自社制作して配信している。スポティファイは、ポッドキャスト配信によりさらに勢力を伸ばそうとしている。

 なお、ギムレット・メディアの番組のいくつかは既にスポティファイで配信中だ。米国の犯罪をテーマとしたCrimetownや、インターネットの発展の歴史に関する番組のReply Allなどが知られているという。

スポティファイ、ポッドキャスト企業を買収

 そして2019年、スポティファイは、米ギムレットメディアを含むポッドキャスト関連の2つのスタートアップを買収することで合意。英フィナンシャル・タイムズが6日報じた。1つの買収額は2億3000万ドル(約250億円)で、スポティファイにとって最大規模の買収となったという。

スポティファイ、ミュージシャンへの寄付プロジェクトを新設

 スポティファイの勢いは止まらない。ロイター通信は2020年3月25日、同社が新型コロナウイルスで経済的損失を被ったミュージシャンのための寄付プロジェクトを立ち上げたことを伝えた。特設ページでミュージシャンに向けた寄付を募るほか、提携している音楽業界福祉団体にも募金を行うという。そのプロジェクトの名は「Spotify COVID-19 Music Relief project」。プロジェクトの一環として、スポティファイは同サービス上で、アーティストがファンから直接募金を集めることができる機能をリリースした。

 世界中で新型コロナウイルスがアーティストの活動に影響を与えている今、こうした支援はアーティストたちが今後も活動を続けていくための一助になるはずだ。

最後に

 ここまで、スポティファイの概要・沿革と、ここ4〜5年における同社の取り組みを紹介してきた。無料プランについて、2016年頃には多くの批判を集めていたスポティファイだが、現在も着実にユーザーを伸ばし続けている。また、新型コロナ禍の影響を受けたアーティストをサポートするためのプロジェクトを実施するなど、アーティストに寄り添うような動きが目立つ。そんなスポティファイから、今後も目が離せない。

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