BRICsは、ブラジル、ロシア、インド、中国という、2000年代以降著しい経済発展を遂げている4カ国の頭文字を合わせた造語。現在、多くの企業がこれらの国でのビジネス展開を図っている。本稿では、BRICsとは何か、そして企業の取り組みを、過去のニュースを参照しながら紹介する。

BRICsとは

 BRICsは、ブラジル、ロシア、インド、中国という、2000年代以降著しい経済発展を遂げている4カ国の頭文字を合わせた造語だ。米ゴールドマン・サックス証券が、03年10月に発表した投資家向け報告書「Dreaming with BRICs: The Path to 2050」の中で初めて使用して以降、広く使われるようになった。なお、39年までに、BRICsのGDP(国内総生産)の合計が、米国、日本、ドイツ、英国、フランス、イタリアのGDP合計を上回り、さらに50年には、GDPの順位が、中国、米国、インド、日本、ブラジル、ロシア、英国の順になると予想されている。こうした現状を受け、昨今多くの企業がBRICsでのビジネス展開を図っている。

日清が減速BRICsに懸ける理由

 そんなBRICsの開拓に注力する企業も見られる。即席麺最大手の日清食品ホールディングス(HD)は、16年5月中旬に発表した21年3月期までの中期経営計画で、「グローバルカンパニーの評価を獲得する」と表明。海外営業利益比率を現在の11%から30%以上にし、将来的に50%以上まで引き上げる方針を打ち出した。同社は国内での圧倒的な強さに比べ海外展開は見劣りしていた。16年3月期の海外売上高こそ1000億円を超えたが、全社売上高に占める比率は東洋水産(20%)と同程度。ベトナムで首位のエースコックは同47%(15年12月期)と大きく先行していた。

 そんな日清食品HDは20年度までに国内外で設備投資・M&A(合併・買収)に計2500億円を投じる計画で、特に重視するのがBRICsでの事業拡大だった。当時、BRICsの経済は不透明感を増していた。ブラジルは2015年の実質GDPは前年比3.8%減。ロシアもウクライナ問題を巡る欧州連合(EU)の経済制裁などが響き、同GDPは3.7%減った。中国でも日本企業を含めて機械など大手各社の苦戦が目立っていた。

 世界ラーメン協会の調査によると、2014年の世界の即席麺総消費量は1027億食で、そのうちBRICsが占める割合は53%に上っていた。加工食品の消費の担い手である中間層は2020年までに2010年比で1.5倍に増える見通しだった。特に、同じ即席麺でも安価な袋麺からカップ麺へと需要がシフトしていく動きに大きな商機をみる。日清食品は「1人当たりの名目GDPが8000ドルを超えると、袋麺だけを食べていた消費者の多くがカップ麺を食べるようになることが分かっている」と説明した。

「鬼門」のBRICsに挑む

 また、18年には、日本製鉄が欧州アルセロール・ミタルと進めるインド鉄鋼4位のエッサール・スチールの買収計画も前進していた。日本製鉄にとって新興国は「鬼門」だった。ブラジルでは06年に鉄鋼大手ウジミナスの経営主導権を握ったが、通貨危機などの影響で15、16年に損失を計上。ブラジル経済の不振もあって経営は守勢に立たされていた。

 ロシアでは、天然ガスのパイプラインを大量受注したものの、ウクライナ侵攻を巡る欧米の対ロ制裁で、輸出を続けられるか不透明感が増した。さらに中国では、進出しても現地企業と合弁会社を設立しなければならず、技術流出が懸念材料。BRICsでは思うような成果を上げられていなかったのだ。

 エッサール買収では、債務を含めて3700億ルピー(約5600億円)とみられていた買収額が4200億ルピー(約6400億円)まで引き上げられたとされていた。日本製鉄の投資額は3000億円超とみられるが「想定よりも高い買い物になり、短期的には経営リスクもある」(SMBC日興証券の山口敦氏)との指摘もあった。

キリンホールディングス社長が語る改革の要諦

 キリンホールディングスの磯崎功典社長も、同社の改革を語った記事で、BRICsに触れている。同社は11年にブラジル企業を買収し、ビール・飲料事業に参入したが、競争が激しく赤字続きだった。そこで磯崎氏は、まずどんな問題があるのかを聞こうと、現地のCEO(最高経営責任者)と話をしたが、全然核心に迫る答えが得られなかったという。これはダメだと判断した同氏は、帰りの飛行機の中で、トップ更迭を決めたという。そうして、新しく雇ったCEOは、現場主義で営業現場にもよく足を運ぶ、社員に対するエンカレッジ(勇気づけ)もできる人物なのだという。

「BRICs」の金利が示している苦難の世界経済

 そんなBRICs各国は2016年、利下げによる景気刺激の動きが鈍かった。当時、グローバルな金融緩和の流れが続いていることは、8月上中旬にイングランド銀行(BOE)、オーストラリア準備銀行(RBA)、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)が政策金利を過去最低の水準まで相次いで引き下げたことにより、明確に確認されていた。

 だが一方で、これらの先進国とは対照的に、新興国では利下げによる景気刺激の動きが鈍かった。ブラジルでは、2015年7月まで連続的に利上げした後、主要政策金利は14.25%で据え置き。ロシアでは、16年6月に0.5%幅で10カ月ぶりの利下げがあったが、その後は据え置き。インドでは、16年4月に0.25%幅で利下げがあったが、その後は据え置き。中国では、15年10月に0.25%幅で利下げがあったが、その後は据え置き。以上の結果、BRICs(南アフリカ共和国を含まない4カ国)の主要政策金利合計値は16年8月25日時点で35.6%という、かなり高い水準になっている

最後に

 ここまで、BRICsとは何か、そして各国に注目する企業の動向を、過去のニュースを参照しながら紹介してきた。BRICsは、ブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字を合わせた造語。日本でも日清食品HDや日本製鉄などがこれらの国で事業展開を行う動きが見られている。今後もBRICsから目が離せない。

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