東南アジアの10カ国で構成される経済共同体「ASEAN」。近年は特に高い成長性を見せており、隣接する中国はもちろん、日本や米国などの企業から寄せられる期待も大きい。今回はこれまでの記事から、ASEANに関するトピックを紹介する。

世界有数の経済共同体「ASEAN」とは

 1967年の「バンコク宣言」によって設立された東南アジア諸国連合(ASEAN)。現在は以下の10カ国によって構成されている。

  • インドネシア
  • カンボジア
  • シンガポール
  • タイ
  • フィリピン
  • ブルネイ
  • ベトナム
  • マレーシア
  • ミャンマー
  • ラオス

 10カ国の総面積は「449万平方キロメートル(日本の約12倍)」、総人口は「6億5千万人(同5倍)」、GDP(国内総生産)は「2兆9690億ドル(同60%)」だ。2015年には「ASEAN経済共同体(AEC)」として、EU(欧州連合)、NAFTA(北米自由貿易協定)、MERCOSUR(南米南部共同市場)と並ぶ経済圏となった。

 ASEANは世界の「開かれた成長センター」になる潜在力を持つと期待され、特に近年は高い経済成長を遂げている。今後はASEAN事務局の強化、機構としての作業効率・効果の向上などを通して、国、地域、国際社会レベルでの存在感向上を目指していくという。

 この記事ではASEANの抱える課題とチャンス、ASEANに進出している日本企業の動向などについて過去記事からピックアップしていく。

ASEANの経済統合 2015年、間に合わず?

 東南アジア10カ国で「人口6億人の単一市場」を目指しているASEAN。当初は「2015年1月1日」の経済共同体設立を目指したものの、その後設立予定日を「2015年末」へと延期。しかしアジア開発銀行のリポートによると、そのスケジュールすら「実現がかなり難しい」という(当時)。

 その背景にあるのが、いわゆる「ASEANデバイド」だ。資源国であるブルネイ、消費大国のインドネシア、生産国として知られるタイ、国際的な金融・物流ハブの役割を果たすシンガポールなど、加盟国の経済基盤がバラエティーに富む一方で、短期的な利害が一致しないという課題を抱えている。

 結果としてASEAN事務局は「内政不干渉」の原則に縛られ、各国への強制力を持たないため、経済共同体設立に向けた作業はなかなか進まない。このままではTPP(環太平洋経済連携協定)に飲み込まれ、ASEANが有名無実化するのではないかと危機感をささやく声もある。

爆弾テロが映すASEANの政情不安

 ASEAN経済共同体の発足を間近に控えたタイ・バンコクで爆弾テロが発生。多数の死傷者が出る中で、タイの主要産業ともいえる「観光業」が大きなダメージを受けている。

 近年の軍事クーデターや水害などで経済が低迷するタイでは、観光業が「唯一の優等生」だった。2015年には中国などからの旅行客が「目標の2880万人を上回り、3000万人に達する勢い」とされていたが、爆弾テロはそのタイミングでの出来事だったという。

 タイ以外の地域でも、マレーシアのナジブ・ラザク首相(当時)による政府系資金の不正流用問題、就任したばかりのインドネシア、ジョコ・ウィドド大統領のリーダーシップ不足など、ASEAN域内の政情不安は深刻だ。

米中貿易戦争はASEANの好機

 米国と中国の「米中貿易戦争」が続く中、中国からASEANへ製造拠点を移そうとする製造業が増えている。米国が中国に課す制裁関税により、輸出コストが増えるのを嫌ったための方策だ。

 たとえば香港市場上場のアパレルメーカー「申洲国際集団控股」はカンボジアのプノンペンに新工場を建設し、日本の重機メーカー、コマツも米国向け油圧ショベル部品の生産拠点を一部タイに移転している。

 米中の対立によって「中国のGDPを1.6%程度押し下げる恐れがある」と語る専門家もいて、今後はASEAN域内に生産拠点を移す企業がますます増えると見られている。

世界のマネーはASEANに向かう

 高い経済成長が続くASEAN。加盟国の半数で1人当たりのGDPが3000ドルを超え、今後は個人消費が大きく伸びるという。消費の質も先進国型に変化し、自動車や家電製品などの「耐久消費財」が売れ、「コト消費」が増加すると見込まれている。

 それにも増して魅力的なのは「人口の増加」だ。ASEAN全体の人口はすでに6億人に達し(当時)、2030年には7億人を突破すると予想されている。増加するニーズを見込んで域内への参入機会をうかがう企業も多い。

 その一つが米国のアップル。すでにインドネシア・ジャカルタに「世界3番目となる教育施設」を設立している。さらに米グーグルの親会社アルファベット、ソフトバンクグループ、トヨタ自動車などもASEAN域内の企業に出資した。

スズキ、背水のASEAN

 日本企業の中で、積極的にASEAN進出を進める企業の一つがスズキだ。実はスズキは、タイに進出した日系自動車メーカーの最後発に当たる。11年のタイ国内での販売シェアはわずかに1%で苦しい状況が続く。

 それでも同社は「タイとインドネシアは一体の工場、市場として捉える」という方針の下、それぞれの国の自社工場から互いに車種を補完する戦略により「ASEAN内で国別自動車販売台数首位」を狙う。

三井住友海上、ASEANは新保険の実験場

 三井住友海上火災保険もタイ・バンコクに進出している。日本国内の損保市場縮小を見越した動きだが、すでにASEAN地域ではトップシェアだ。特に深刻な洪水リスクを抱えるタイ国内では2016年から独自のリスク分析システムを導入し、新規契約を次々と獲得している。

 同社がASEANで成功している理由は、規制が少なく自由な発想ができる同地域の特徴にある。「新しい保険の実験場がここにはある」と語るのは、同社執行役員のアラン・ウィルソン氏だ。今後も新保険の投入を続けることで「アジア全域のトップブランド」を狙うという。

ASEANで強いクボタ、秘策はアフターサービスにあり

 農業機械国内最大手のクボタも、ベトナムやタイ、ラオスなど7カ国に進出している(当時)。うち5カ国では新車トラクターの販売で70%以上、ミャンマーやインドネシアでも同国トップとなる30%のシェアを誇るという。

 所得水準の向上で食糧需要が拡大するASEAN地域では、都市化の進展により農業従事者の不足が見込まれる。現地仕様のトラクター開発や迅速な修理対応といった価値を創出することにより、同社の成長は今後も続くと見込まれる。

最後に

 東南アジア地域の経済共同体として、高い経済成長を誇るASEAN。構成各国の性格の違いや政情不安などネガティブな要素は少なくないが、同地域に進出し、シェア拡大を狙う企業は多い。

 今後のASEANの経済成長はもちろん、それが日系企業や日本経済に与える影響にも引き続き注目していきたい。

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