電力供給の予備率が3%を切る状況を電力不足と呼ぶ。経済産業省によると、2022年度冬季の予備率は東京で1.5%程度とされ、安定供給に必要な予備率3%を下回っている。この背景にあるのは新型コロナウイルス禍からの経済回復に伴う電力需要の増大や、ロシアに対する経済制裁措置に伴う液化天然ガス(LNG)の供給不足などだ。今回は電力不足をめぐる近年の話題をこれまでの記事から紹介していく。

2022年度冬季に予測される深刻な「電力不足」

 電力不足とは、一般に電力供給の予備率が3%を切る状況のことをいう。予備率が3%を下回ると需要と供給のバランスを整える「同時同量」の原則が崩れ、電気の周波数が崩れて正常な電力供給が困難になる。安定して電力不足を防ぐためには最低でも3%、できれば8~10%の予備率が必要だという。

 一方、2022年5月に経済産業省が発表した「2022年度の電力需給見通しと対策について」によると、2022年度冬季に予測される予備率は年明け1月と2月で東京がそれぞれー0.6%とー0.5%と、一時マイナスを記録した。その後、火力発電所の復旧見通しが立ち、6月発表値ではそれぞれ1.5%、1.6%に改善されたが、いずれも最低ラインの3%を下回っている。

 電力不足の原因は1つではない。全国で原子力発電所の再稼働が進まないこと、天候の影響を受けやすい再生可能エネルギーからの安定供給が見込めないこと、そして大手電力会社の収益悪化と脱炭素推進を背景に火力発電所の休廃止が進んでいることなどが挙げられる。ウクライナ侵攻をめぐるロシアへの経済制裁措置や円高により燃料となるLNGの価格が高騰していることや、新型コロナウイルス禍からの経済回復により電力需要が増加傾向にあることも一因だ。

 これらに対する即効性のある対策は企業や家庭における「節電」だ。政府は企業などに節電を義務付ける「電力使用制限令」の発動も視野に入れているという。また長期的には燃料の新規輸入経路の開拓や、原子力エネルギーや再生可能エネルギーの最大限の活用も考慮される必要がある。

 今回は、これまでの記事から電力不足をめぐる話題について振り返っていく。

世界同時多発エネルギー危機の真因

 電力不足は日本だけでなく世界各国に共通して見られる現象だ。「脱炭素政策の行き過ぎ」が原因とする声もあるが、エネルギーアナリストの大場紀章氏は「ほとんどナンセンス」と語る。同氏によると、最も説得力がある原因は「化石資源開発の停滞」だ。

中国で続く計画停電、原因は“中国流”の脱炭素推進だ

 一方、2021年夏から中国各地で始まった計画停電の原因は、中国政府が「第14次5カ年計画」の中で掲げた省エネ目標によるものだ。中国は脱炭素推進のために2021年から2025年の5年間で13.5%の省エネ目標を掲げており、これを達成する手段として計画停電を実施していると見られている。

英国のエネルギー価格高騰で、若者の脱炭素離れも

 英国も電力不足が深刻な国の1つだ。同国では急速な脱炭素エネルギーへの移行を批判する陣営を中心に「再生可能エネルギー発電の割合がさらに拡大すれば電力不足はもっと深刻になる」と指摘されている。

2022年夏も電力不足の危機が来る

 2022年3月21日から22日にかけて、経済産業省が東京電力ホールディングス管内と東北電力管内に「電力需給逼迫警報」を発令した。初の警報発令の原因は世界的な脱炭素推進と火力発電の縮小、そして全国的に原子力発電所の再稼働が進んでいないことだという。

 2022年は夏も、この危機に見舞われるかもしれない。

原発「復権」東南アジアでも

 脱炭素目標を達成しつつ、安定した電力供給を実現するための切り札として原子力エネルギーが再注目されている。すでにフィリピン、インドネシア、ベトナム、シンガポールなどが原子力発電所の稼働や開発を検討しているという。

エネルギー制裁はロシアに効かない

 欧米や日本を中心とするLNGの価格高騰は、ウクライナ侵攻に対するロシアへの経済制裁措置による部分が大きい。だが制裁の影響で一時、半値近くまで急落した通貨ルーブルは侵攻前の水準に回復しており、エネルギー制裁(エネルギーの禁輸措置)も中国やインドといった「抜け道」の存在により実効性は薄いと見られている。

最後に

 2021年以降の電力不足は、脱炭素推進、火力発電の縮小、原子力発電所の停止など、さまざまな要因が絡み合った結果だ。ロシアに対する経済制裁措置もこれに輪をかける結果となり、2022年度冬季の電力不足は危険な水準になると予測されている。企業活動や日常生活に深刻な悪影響を及ぼさないためにも、即効性のある対策として企業や家庭における地道な節電に努めていきたい。

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