課税標準が一定額を超えると、より高い税率が適用される「累進課税」。いわゆる「所得の再分配」の効果があるとされ、日本では所得税、相続税、贈与税に採用されている。ここでは累進課税をテーマにした過去記事を通して、その仕組みと課題について振り返っていく。

「累進課税」とは何か?

 累進課税とは課税標準が多くなるほど税率が高くなる課税方式のことで、日本では所得税、相続税、贈与税に採用されている。所得や相続財産などが高い人ほど多額の税金を支払うことから経済格差の緩和手段としても利用されており、これを「所得の再分配」という。

 累進課税は「単純累進課税」と「超過累進課税」の2種類に分けられる(日本で採用されているのは超過累進課税)。それぞれの違いは以下の通りだ。

  • 単純累進課税…課税標準が一定額を超えた場合、課税標準全体に高い税率を適用する
  • 超過累進課税…課税標準が一定額を超えた場合、超えた部分のみに高い税率を適用する

 今回の記事では累進課税のメリット・デメリットに加え、税負担の不公平感を解消するための提言について過去記事を通して紹介していく。

どうして1000万円世帯をいじめるの?

 日本では「年収1000万円前後の給与所得者の税の負担が大きい」と不満を感じる人が多い。実際には他国と比べて特別高い水準ではないものの、中・低所得者の税率が比較的低いために相対的に高く感じてしまうのだという。

 例えば米国の所得税の最低税率は10%で、英国は20%。ドイツも一部の低所得者を除くと最低税率は14%だ。日本の最低税率は5%で、これが納税者の約6割を占めている。一方、平均的な場合で年収1000万円の税率は20%、1300万円超は33%(単身世帯の場合)で、これは他国とほぼ同等といえる。つまり1000万円世帯の税率が高いのではなく、それ以下の世帯の税率が「安すぎる」というのが実態だ。

なぜ「消費税」という税が必要なのか

 所得税に累進課税を採用する狙いは「貧富の格差の是正」だ。所得税は高額所得者から多くの税金を集める一方で、低所得者からは税金を集めないことができる。また景気の影響で高所得者の収入が落ち込んでも、所得税の税率も同時に低下することで「手取り額の落ち込みを緩和できる」のもメリットだ。

 これに対し消費税は収入の額にかかわらず、常に一定だ。徴税者にとっては比較的安定した税収を期待できるうえ、「人々の働く意欲を阻害しない」「(所得自体は少ない)資産家にも均等に課税できる」「脱税が難しい」というメリットがある。

 所得税と消費税、両者のメリットをバランス良く組み合わせることにより、高所得者と低所得者双方の不満を抑えることが可能だ。

仮想通貨の普及を阻む足かせ

 一方で、累進課税を採用する所得税が「仮想通貨の普及を阻害している」という指摘もある。

 仮想通貨のメリットは近年のキャッシュレス化と相性が良く、現金と違い管理のコストもかからないこと。またクレジットカードのような高額の手数料がかからないため、安価なシステム構築が可能だ。

 ただし現在の日本の税制では、仮想通貨を「円に換金した際に得た売却益」に対して所得税が課税される。仮に売却益(所得)が4000万円を超えた場合の所得税は45%で、これに10%の住民税を加えると税率は55%。つまり1000円の所得に対して550円の税金がかかるため、上記のメリットよりもデメリットの方が目立ってしまう。

 仮想通貨を本格的に普及させるためには、せめて一律の税率を適用するなどの制度改革が必要だ。

「高齢者は弱者」ではない、フェアな社会保障のあり方とは?

 現在日本では、累進課税が適用される「退職金」について「2分の1課税」という特例措置を設けている。これは退職金から勤続年数に応じた控除分を差し引き、その2分の1に対して所得税を課すというものだ。

 長く働く人ほど有利となるこの制度は、企業年金制度が未発達で国民年金・厚生年金制度も導入されたばかりの1967年に制定された。老後の生活保障という意味合いの特例措置だが、各種年金制度や定年延長が一般的になった現代にマッチしているとは言いがたい。

 若い世代が高齢者世代に対して感じる不公平感を解消するためには、退職金をめぐる累進課税の取り扱いや、年金に対する税制上の優遇措置の見直しを進めていく必要がある。

最後に

 各国の所得税に採用される累進課税は、貧富の格差の解消に役立つというメリットがある。ただ日本では、年収1000万円前後の世帯が税率に不満を感じているのも現実だ。累進課税の所得税も比例税(課税標準の大小にかかわらず、同じ税率を適用する税)を採用する消費税も、どちらも国の財政安定には欠かせない税金だ。国民の不満を抑えるためにも、国には制度設計の細かな見直しに加え、丁寧な説明が求められる。

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