製品の製造から消費までの流れを追跡できるようにするトレーサビリティー(生産・流通履歴の追跡)。「食の安全」に関わる食品業界はもちろん工業製品やアパレルなどの分野でも、トレーサビリティーは企業の社会的責任(CSR)として注目を集めている。今回はトレーサビリティーに関する事例を過去記事から紹介していく。

生産から消費までの流れを可視化する「トレーサビリティー」

 トレーサビリティー(traceability)とは、特定のモノ(製品など)が生産されてから消費されるまでを追跡・把握できる状態のことをいう。たとえばトレーサビリティーが導入された農作物の場合、「誰がどの畑で育て、どのようなルートでどの消費者に届けられるのか」を知ることができる。

 トレーサビリティーが注目を集めるようになったのは、2001年に国内で初めて発見されたBSE(牛海綿状脳症)がきっかけだ。これにより食品業界を中心にトレーサビリティーの導入が広がり、現在では工業製品やアパレル製品を扱う製造業界にも浸透しつつある。

 この記事ではトレーサビリティーの導入事例やトレーサビリティーの課題が問題とされた事例について、過去記事から振り返っていく。

社食やコンビニに「持続可能な魚」

 海の生態系に配慮して持続可能に漁獲された「サステナブル・シーフード」が注目されている。認証を受けた魚はスーパーや一部の外食だけでなく、パナソニック(現パナソニックホールディングス)の社食をはじめ、ミニストップやイオン、そごう・西武などで販売開始されているという。

コストと効率だけでは不十分、SDGsが変える供給網

 アパレル業界では、スウェーデンのH&M、ドイツのアディダス、日本のアシックスや東レといった大手グローバルブランドを中心に「Higgインデックス」という指標が活用されている。これは環境負荷や労働環境などのパフォーマンスを数値化したもので、素材のトレーサビリティー確保も重要な要素のひとつとされている。

ウッドショック機に国産木材活用を

 ウッドショックによる輸入木材の価格高騰をきっかけとして、「国産木材トレーサビリティー」が注目されている。そのひとつが消費地に近い山林から伐採したフェアウッド(合法・持続可能な木材)の積極活用で、国産木材のトレーサビリティーsにより伐採地の森林環境の改善や地域経済の振興に貢献するのが目的だ。

廃棄物横流し事件、巻き込まれた企業の対応は

 2016年に発覚した産廃業者「ダイコー」の廃棄食品横流し事件を受けて、廃棄物のトレーサビリティーへの関心が高まっている。廃棄物を出す事業者は処理を業者任せにするのではなく、横流し等への自衛のために「廃棄物の処分完了までの流れ」を把握するというものだ。具体的な方法としては、廃棄物の「搬出時、荷下ろし時、破砕処分時の確認」が検討されているという。

神戸製鋼が露呈したトレーサビリティーの弱点

 一方、2017年に発生した神戸製鋼所のデータ不正・改ざん事件では、同社が生産したアルミや銅製部材のトレーサビリティーが課題となった。神戸製鋼から鉄道事業者や航空機メーカー、自動車メーカー、電力会社などに販売された部材はトレーサビリティーが確保されていたが、こうした措置には多額の費用が発生することから、現時点で「製品の不適合が人命に影響するような製品や、確実な稼働が求められる製品」しかトレーサビリティーの対象にならないのだ。

ファストリが人権対策を徹底、100人で現地調査

 中国・新疆ウイグル自治区で少数民族の強制労働が問題になる中、ユニクロを展開するファーストリテイリングが縫製工場や素材工場、さらに上流の紡績工場や原材料の調達段階まで遡ってトレーサビリティーを確保する「100人規模のプロジェクトチーム」を立ち上げた。同社はこれまでも「原材料まで遡ってありとあらゆる地域において人権侵害がない」としており、新たなプロジェクトチームの立ち上げはその証明を目的としている。

最後に

 国際的なSDGsの動きを受けて、あらゆる業種でトレーサビリティーを導入する企業が増えている。魚に木材、アパレル、鉄鋼部材や廃棄物まで、トレーサビリティーの対象はバラエティー豊かだ。一方でトレーサビリティーには企業価値を向上させるだけでなく、「企業価値を低下させない」という防衛的な意味合いもある。今後、トレーサビリティー導入の有無が企業の評価にどのような影響を及ぼしていくか注意して見守っていきたい。

 さらに詳しい記事や、会員限定のコンテンツがすべて読める有料会員のお申し込みはこちら

この記事はシリーズ「テーマ別まとめ記事」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。