人災や天災から企業の中核事業を守るために策定される事業継続計画(BCP)。国内では2011年の東日本大震災をきっかけに認知が広がったが、近年のコロナ禍においてもあらためて重要性が認識されている。今回はBCPを導入した国内企業の事例を過去の記事から紹介していく。

人災・天災への備えとして注目される「BCP」

 BCPとは、人災や天災などによる企業の損害を最小限に抑えるために策定する行動計画のこと。BCPの目的は重要業務の継続を目指すものや早期復旧を目指すものなど様々だ。BCPの策定では、継続・復旧を優先する事業の特定に加え、復旧までの目標時間や復旧までの代替措置などを取り決めておく。それらの内容を社内で共有することで、非常事態に遭遇した際の顧客流出やマーケットシェア低下、企業イメージ悪化の阻止を図るのが狙いだ。

 BCPは1990年代から主に欧米の金融機関やIT企業を中心に導入されてきたが、2001年の米国同時多発テロ、日本では11年の東日本大震災をきっかけに認知が広がっている。加えて、新型コロナウイルス禍においては「感染症リスク」に対応したBCPにも注目が集まっている。

 この記事ではBCPをめぐる専門家の意見や、実際にBCPを策定・運用している国内企業の事例を過去記事から振り返っていく。

BCPの基本を学び直す

 2019年7月に施行された、通称「中小企業強靱(きょうじん)化法」。中小企業の事業継続力を高めることを目的としており、中小企業庁ではこの法律に基づいて「簡易版BCP」の普及に力を入れている。

 簡易版BCPといっても基本的な作成手順は通常のBCPと同じで、(1)目的の検討、(2)災害リスクの確認・認識、(3)初動対応の検討、(4)ヒト、モノ、カネ、情報への対応、(5)平時の推進体制、というステップで進められる。

有事に備えよ、これで企業は守れる

 多くの日本企業では、これまで「地震」「水害」「システム障害」「大事故」など危機の原因に応じてBCPが作られてきた。しかし連鎖的な有事の場合、原因の特定は困難だ。このため経験豊富な海外企業では、発生事象に応じてBCPを作成しているという。これには「火災」「通信や電気などインフラの途絶」「サプライチェーン混乱」「従業員の参集困難」といった既知の事象はもちろん、「ミサイル攻撃」といった未知の(未経験の)事象も含まれる。

新型コロナで日本を襲うサプライチェーン危機、中国リスクとは?

 新型コロナウイルスの感染拡大や米中の覇権争いは、中国の資源や中国の巨大市場に依存している世界中の企業にとって大きなリスクとなっている。しかもこのリスクは地震などの自然災害と違って先が見えず、従来のBCPでは対応し切れない面もある。企業には新たに想定されるリスクを踏まえて、BCPの抜本的な見直しが求められている。

経営計画書で重要事項を浸透

 ここからはBCPを活用している国内企業の事例を紹介していく。

 岩手県北上市の北良は、家庭用・産業用・医療用ガス供給を手がける会社だ。同社では特別なBCPを作成する代わりに、毎朝の朝礼で経営計画書の読み合わせを行っている。そして毎月1回、事業継続に必要な設備や備蓄食料の点検や訓練を行い、すべての社員が有事に対応できるようにしているという。

事前に代替生産先の工場を用意

 東京都瑞穂町の生出は、包装資材や緩衝材の設計・製造を手がけている。同社では以前よりBCPを作成して「社員の多能工化」に取り組んできた。これにより自然災害や感染症の流行で自宅待機の社員が出ても、出社している人だけで業務を回すことができるという。加えて協力工場による代替生産の仕組みも用意している。

欠勤者の人数に合わせて生産

 岐阜市で菓子の製造販売を手がける長良園では、欠勤者が発生しても柔軟に生産ラインを運用できる業務改善を行っている。主力商品を個包装し袋や箱に詰めるラインで導入する仕組み。3人で担当していたラインを1人、2人、3人までどの人数でも高い生産性を発揮するように改善し、作業者の出社状況に合わせて担当人数を調整可能にした。

働き方改革徹底で自立型組織に

 山口県岩国市のカワトT.P.C.は、マンションやホテルなどで使用する給水管の設計と組み立てを行う企業だ。同社では納入先の大企業から(BCPの観点により)「1社依存を避けたい」と言われたことをきっかけに、複数の工場で生産を行う「拠点分散」を行っている。

トヨタは大規模減産免れる、愛知の漏水問題から考えるBCP

 愛知県豊田市にある水門が破損した事故で、この水門からの工業用水に依存していた多くの工場が影響を受けた。トヨタ自動車もそのうちの一社だが、同社では以前から「工場の稼働に必要な水のおよそ99%を再利用する」という取り組みを進めており、ラインの停止期間を最小限に抑えることに成功している。

最後に

 自然災害の多い日本では、多くの企業がBCPの必要性を認知している。しかし企業を襲うトラブルは自然災害だけとは限らない。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)のような、それまで経験したことのないリスクに備えるのもBCPの役割だ。他社の事例に注目しつつ、自社の備えにもいっそう関心を払っていきたい。

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