首都圏を中心にホームセンターを展開する島忠は2020年にニトリホールディングスの傘下に入った。TOB(株式公開買い付け)でニトリと競合することになった業界大手・DCMホールディングスと島忠の関係も注目を集めた。経営統合で何が起きたのか、そして今回の動きは今後のM&Aにどのような影響を与えたのかを紹介する。

注目を集めたニトリによる島忠の経営統合

 さいたま市に本社を置く島忠は、首都圏と関西圏に合計60店舗を構えるホームセンター大手。2020年12月に同業のニトリホールディングスによるTOB(株式公開買い付け)によって経営統合し、ニトリの傘下に入った。

 今回のTOBが注目を集めた背景には、06年にカーマ、ダイキ、ホーマックの統合で誕生したDCMホールディングスの存在がある。島忠はもともとDCMと良好な関係にあり、20年10月に経営統合の交渉が始まっていた。

 それだけに島忠とニトリとの経営統合は、DCMの目には「裏切り」と映る。両者に残るしこりが今後の営業に与える影響、そしてニトリ流の再生計画が社内に与える影響は気になるところだ。

島忠買収にニトリも名乗り、喜ぶ株主と困った経営陣

 20年10月、DCMの島忠に対する友好的TOB(株式公開買い付け)が明らかになった。その直後、ニトリが対抗TOBを仕掛けることを表明。3社をめぐる動きに、投資家や業界の注目が集まった。

 DCMの完全子会社となるか、より高い買収金額を提示したニトリの傘下に入るか。島忠株を8%強保有していた村上世彰氏らをはじめとするアクティビスト(物言う株主)の動きも見据えつつ、島忠は難しい判断が迫られた。

ニトリ、島忠争奪戦で後出しジャンケンの勝算。DCMに対抗か

 DCMによる発表を待ち、カウンターのようにTOBを発表したニトリ。絶妙なタイミングの背景には、ユニゾホールディングスの買収に失敗したHISの教訓があるという。DCMの後に発表することで、先にけんかを売った格好になるのを避けられる。仮に敵対的TOBになったとしてもマイナスイメージを和らげ、後出しジャンケンになるため価格面を含め戦略が立てやすい。

ニトリが対抗TOB、島忠への三顧の礼は奏功するか

 ニトリの似鳥昭雄会長は島忠を「尊敬、敬服する会社」と言う。中長期的にも「個人としては、別ブランドで島忠の名前を打ち出していけばいいと思っている」と強調し、島忠への配慮をにじませる。

 DCMが島忠に提示するTOB価格は4200円。対してニトリの提案価格は5500円。島忠ブランドの維持についても「島忠ファンというお客様もいる。お客様から見えない物流などの部分でシナジー効果を出せるようにしたい」とした。こうした三顧の礼は島忠の経営陣にどう響いたのだろうか。

ニトリ、島忠を「お、ねだん以上。」で買うリスク

 業界内には、5500円というTOB価格について「信じられない価格」「M&Aに慣れていない」との声も上がる。DCMが、島忠の協力を得て実施するデューデリジェンス(DD、資産査定)を行っていないことも、ニトリに対する疑念を後押しする。

 それでもニトリの白井俊之社長は「現段階では(5500円というTOB価格は)ベストと考えている」と語る。ちなみに、島忠が多数保有する不動産の含み益を評価する見方や「我々は島忠を不動産会社と見て投資している」(村上世彰氏)という声もある。恐らくDCMのDDはホームセンターとしての島忠の中身を見たものだろう。島忠が不動産銘柄として化ければ、ニトリの提示した5500円も高くないということになる。

DCMからニトリにくら替えの島忠、「裏切り」は誰のためか

 結局、ニトリホールディングスとの経営統合を発表した島忠。先約をほごにされたDCMは「裏切り」と怒るが、ニトリが提示したTOB価格と「現経営陣の身分保障」は、島忠にとって魅力的な提案だった。

 とはいえ、間違いなくしこりは残る。DCMは今後「島忠を目の敵にするのは間違いない」(DCM元幹部)。一方、今後、M&A(買収・合併)を考えている企業にとっては頭の痛い問題が増えたとも言える。両社間で買収に合意し発表にこぎつけても、それが完了するまでいつ横やりが入るか分からないからだ。これまで日本では敵対的買収になる可能性が高い「横やり」はタブー視されてきたが、今回の一件でそうした見方は間違いなく薄れるだろう。

島忠の再生に向け5カ年計画 利益率倍増へ、始まった「ニトリ化」

 「島忠の家具は正直に言って赤字なんです」とニトリの似鳥会長は語る。21年3月31日の決算説明会では、島忠の利益率を5年で2倍にするという目標を掲げた。既に島忠の一部店舗に、ニトリのPB商品を配置し始めた。

 買収前、島忠について「尊敬、敬服する会社」としていた似鳥氏だが、中に入って点検すると、課題ばかりだと映ったようだ。「店内のレイアウトも商品も、何から何まで変える必要がある」と言う。「うちと180度違うからこそ『ニトリ方式』を取り入れれば、がらっと生まれ変わる」と、ニトリ流の再生計画を実施していく構えだ。

最後に

 経営統合をめぐり、DCMとニトリの間で揺れた島忠。長年にわたり良好な関係を築いてきたDCMとの関係を捨て、ニトリを選んだ。そして島忠の再建に向けた5カ年計画を掲げるニトリ。両者の歩みに、業界はもちろん投資家や消費者からも注目が集まる。

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