新型コロナウイルスの感染が拡大してから、実際に出社して働く日数や時間を減らす「出社制限」を多くの企業が実施している。「ニューノーマル時代の新しい働き方」といえるが、出社制限に伴う在宅勤務やテレワークには賛否両論がある。今回は出社制限をテーマにした過去記事から、注目のトピックを紹介していく。

「出社制限」のメリット・デメリット

 出社制限とは、実際に出社して働く日数や時間を減らすこと。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、特に政府による「緊急事態宣言」のもとで2020年以降、大企業を中心に多くの企業が出社制限に踏み切った。

 出社制限をしている企業では、従業員の多くが在宅勤務やテレワークをする。感染拡大を防げるとともに、在宅で時間が有効に使えるという肯定的な評価がある一方で、作業効率が落ちたり、同僚たちと触れ合えず孤立感を抱いたりするといった、否定的な声もある。こうしたデメリットを考慮し、出社制限の解除に動いた企業も少なくなかった。

 この記事では、コロナ禍での出社制限の実態や課題について、過去記事の事例から振り返っていく。

緊急事態宣言で終息? 日本版ロックダウンの限界

 2020年4月、新型コロナの世界的な感染拡大を受けて、日本政府が緊急事態宣言に踏み切る意向を固めた。海外では都市を閉鎖し、人の移動を制限するロックダウンを行っており、日本でも一部業種の営業停止、不要不急の外出自粛や出社制限といった「日本版ロックダウン」を要請する方針を取った。

 とはいえ法的拘束力のない日本版ロックダウンについては、実効性を疑問視する声も上がった。「出社制限をしても約34%が通勤する」との予測も出され、新型コロナの感染拡大に歯止めがかかるかどうかは不透明とされた。

同僚と一緒に「温泉旅行テレワーク」、仕事になるのか

 2020年5月に緊急事態宣言が解除となった後も、多くの企業が自主的な出社制限を実施し、社員はテレワークによる在宅勤務を続けている。こうした中、テレワークによる社内のコミュニケーション不足を補うための取り組みに力を入れる企業が出てきた。

 その一つが、インターネット接続大手のビッグローブ(東京・品川)だ。20年4月の緊急事態宣言に先んじてテレワークを導入したが、社員のストレスが増すリスクが大きいことが分かってきた。そこで、ストレスを緩和する手法として「ワーケーション」に着目した。ワーケーションとは、「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語だ。「温泉で働き、温泉で癒やす」をコンセプトに、21年3月から「TRY ONSEN WORKATION プログラム」と銘打って参加企業を募ると、IT企業や電力、サービス、メーカーなど幅広い業種の企業が興味を示したという。

「どこでもオフィス」整備、在宅率7割のKADOKAWA

 単なる出社制限ではない、柔軟な働き方を推進しているのは出版・映画配給大手のKADOKAWAだ。

 同社ではコロナ以前から「場所にとらわれない働き方」を模索してきた。すでに社員の7割が在宅勤務をしているが、飯田橋の本社オフィスである「東京キャンパス」、そして埼玉県に開設した「所沢キャンパス」という2拠点体制を構築し、社員がオフィスを自由に使い分けられるようにしている。

なんと本社はシェアオフィス、スタートアップ身軽に

 出社制限によって出社率が低下した結果、自前のオフィスを手放した企業もある。ニュース配信アプリを手がけるGunosyでは、「今後、全員が同じ場所に集まることは、そうそう発生しない」として本社を引き払い、渋谷駅に直結するシェアオフィスに本社機能を移転した。

 シェアオフィスを新たな拠点にすると、固定費の負担軽減につながる。加えて他社との交流機会も増えるので、新たな事業が芽吹くことも期待している。

「テレワーク続ける」24%、利用率低下は何を意味するか

 コロナ禍が長引く中、出社制限をめぐる企業の対応が変わりつつある。最初の緊急事態宣言が出されていた2020年5月には、「週5日のテレワーク」を行う企業は25.4%に上っていた。しかし約1年後の2021年4月にはその割合は半減(12.6%)し、代わりに「週1日」の割合が倍増(8.4%→16.2%)している。

 一方で、テレワークが「恒久的な制度になる予定」と回答する企業は2021年4月の時点で24%に達した(2020年5月の時点では10.9%)。出社制限の実施により、多くの企業が、テレワークを前向きに捉えるようになったことがうかがえる。

オフィスに帰るのか、結論焦らず業務見直し

 このまま出社制限を続けるのか、それとも以前のようにオフィスでの勤務に戻るのか。コロナ禍が続く中、多くの企業が答えを出せないでいる。

 こうした現状に「あえて答えを出さない」と決めたのが、乃村工藝社だ。空間プロデュースを専門とする同社では、自分たちの職場を「実験場」として、コロナ禍やその後の状況変化に柔軟に対応できる、「新しい働き方に合った自社オフィスの改修計画」を進めている。

 21年4月に完成した新オフィスでは、出社率が下がり余剰スペースができたオフィス内に“公園”をつくり、社員たちが自由に使えるようにした。公園に置かれたテーブルはすべて可動式で、出社率が上がったり、新事業が立ち上がったりした際の拡張用空間としても利用できるという。

出社率2割も当たり前、メリット次々に発見 新常態ワークスタイル

 出社制限を積極的に継続している大企業もある。オフィス勤務の社員を原則テレワークとしているカルビーでは、テレワークの範囲をさらに広げ「リモート工場見学」サービスを開始した。役員による工場視察、社員の家族を職場に招待する「カルビーファミリーデー」、小学校への出張食育授業「カルビー・スナックスクール」もオンライン開催に切り替えるという徹底ぶりだ。

 ほかにも、営業活動の8割をオンラインに切り替えた部署があるソフトバンク、社員にiPadを持たせて情報共有に活用している積水ハウス、自社開発のコミュニケーションツールによりオンライン上で「出勤」するNTTコミュニケーションズ、3カ所あった本社スペースを一本化した三菱ケミカルなど、多くの企業がコロナ後を見据えた新しい働き方に取り組んでいる。

最後に

 2020年以降、新型コロナの感染拡大や政府による緊急事態宣言をきっかけに多くの企業が出社制限を実施している。在宅勤務やリモートワークにはメリット・デメリットがあるが、こうした働き方がコロナ後のニューノーマルになっていくのか、引き続き注目していきたい。

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