新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて延期が決まった「東京五輪・パラリンピック」。決断の背景には日本国内だけでなく海外からの懸念の声もあったという。一方で東京五輪の延期は、旅行業界や建設業界など経済界に深刻な影響を及ぼし始めている。今回は延期決定前後の主要な過去記事をピックアップしていく。

「東京五輪・パラリンピック」延期決定を巡る動き

 2020年3月24日、東京五輪・パラリンピックの「延期」が発表された。理由となったのは新型コロナウイルスの世界的な感染拡大だ。新しい開催日程は五輪が2021年7月23日開会、パラリンピックが8月24日開会と発表されているが、大会名称は「東京2020(TOKYO2020)」を引き続き使用するという。

 当初は予定通りの東京五輪・パラリンピック開催に強い意欲を示していたIOC(国際オリンピック委員会)とJOC(日本オリンピック委員会)、そして安倍政権。しかし海外では早い段階から専門家などを中心に懸念の声が上がっており、特にWHO(世界保健機関)が「パンデミック」を発表した3月11日以降は海外の政治家やスポーツ団体、選手たちからも疑問や批判の声が増加した。

 最終的には「安倍首相からIOCバッハ会長への提案」という形で五輪の延期が決まったが、これにより国内経済が受ける影響は計り知れないという。この記事では、2020年3月と4月に掲載された記事の中から東京五輪・パラリンピック延期を巡る主要なトピックを振り返っていく。

テドロスWHO事務局長「パンデミックは目前、五輪可否いずれ公表」

 東京五輪・パラリンピック開催の可否判断を「時期尚早」と繰り返してきたWHOのテドロス・アダノム事務局長。しかし3月9日の会見では、新型コロナウイルスがパンデミックに近づいたことから「いずれ日本政府とIOCの協議により何らかの発表をすることになる」と明らかにした(当時)。

「イタリアより11日遅れ」 米国で強まる東京五輪延期論

 新型コロナウイルスの感染者数が急速に増えている米国で、東京五輪・パラリンピック開催を危ぶむ声が高まっている(当時)。すでに米国の水泳連盟、陸上連盟では大会延期に向けた呼びかけを開始。日本時間の3月23日未明には、IOCも五輪延期の検討を開始すると発表した。

五輪延期ならどうなる国内政局 解散、総裁4選論の行方は

 東京五輪・パラリンピック延期の可能性について「4週間以内に結論を出す」と発表したIOC(当時)。中止はないというものの、これまで「全力で準備する」と主張して安倍首相などと連携してきただけに、延期が決定すれば日本国内の政治にも大きな影響を与えかねない。

 特に懸念されているのが、政治日程への影響だ。安倍首相の自民党総裁任期は2021年9月に満了となり、10月には衆議院議員としての任期も満了する。東京五輪・パラリンピックの延期日程がいつになるかによって、ポスト安倍を巡る戦略も練り直しが必要になるという。

コロナショック 東京五輪、延期で揺らぐ「皮算用」

 3月23日の参議院予算委員会で「アスリートを第一に考え延期の判断も行わざるを得ない」と表明した安倍晋三首相。未明に東京五輪・パラリンピック延期の検討を発表したIOCと歩調を合わせた格好だが、これを受けて経済界からはさまざまな懸念の声が上がっている。

 たとえば「スポンサー料」の追加支出をはじめ、選手村を改修する分譲マンション販売への影響、仮押さえしていたホテルの大量キャンセル、テレビの販売低迷などはその一例だ。新型コロナの影響もあり、ダメージを受けた企業による雇い止めや解雇も現実味を帯びている。

星野リゾート代表「旅行業の完全復調は1年か1年半かかる」

 新型コロナ対策としての渡航・入国制限に加え、東京五輪・パラリンピックの延期によって「旅行業」が大きなダメージを受けている。星野リゾートの星野佳路代表によると、この影響は「ワクチン、治療薬ができる1年から1年半ほど先」まで続く可能性があるという。

 業界を巡る現在の状況について「過去に経験がない」と語る星野氏。同業の経営者たちに対しても「マーケットの在り方が大きく変わってきていることを認識すべきだ」と警鐘を鳴らしている。

景気後退なら「受注が蜃気楼(しんきろう)に」、ゼネコン業界団体トップの懸念

 東京五輪・パラリンピックの関連工事などによって活気づいていた建設業界。しかし新型コロナウイルスの感染拡大や東京五輪延期などを受け、国内景気の衰退とともに業界全体の低迷も始まっているという。

 建設業界の需要減少について「日本経済が全般的に良くならないと、建設投資をしようとかオフィスをつくろうという人がいなくなってしまう」と語るのは大成建設会長の山内隆司氏。山内氏によると、今後は業界内の待遇改善や不動産開発、海外進出などの取り組みが生き残りのカギになっていくという。

「国立競技場の抜本改装」、東京五輪1年延期の間に議論すべし

 東京五輪・パラリンピックの延期決定を受け、この機会に「日本は競技場の有効活用を真剣に考えるべきだ」と語るのは米アンダーアーマー社の日本総代理店・ドーム会長兼代表取締役CEOの安田秀一氏だ。

 安田氏によると、現在の国立競技場は東京五輪・パラリンピックに向けて急いで建設を進めたため「閉幕後にどう利用するかの仕掛けがない」。建設費約1529億円、年間維持費用約24億円の巨大施設をムダにしないためには、ショッピングセンターやホテルなどを併設して複合商業施設にする、屋根を付けてドームスタジアムに作り替えるといった「抜本的な改装」が必要になるという。

最後に

 延期の是非を巡り、国内外で議論や話題の的となった東京五輪・パラリンピック。2021年夏への延期が決定されたものの、改めて会場や宿泊施設を確保し、計10万人を超えるボランティアスタッフを確保することは容易ではない。

 もちろん新型コロナウイルスの感染ペースやワクチン・治療薬開発の有無によっては、延期された大会の開催も危ぶまれる。今後も東京五輪を巡る動向から目が離せない。

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