地域経済に大きな影響力を持つ「地銀」。少子高齢化などにより地方の経済や産業が衰退しつつある中、最近では隣接する都市の地銀同士が手を結ぶ「地銀再編」の動きが目立っている。今回は地銀再編を中心に、生き残りをかけた地銀の取り組みを過去記事から紹介していく。

そもそも「地銀」とは?

 地銀(地方銀行)とは、一般社団法人全国地方銀行協会に所属し、本店のある都道府県などを中心に営業する銀行のことをいう。金融庁のデータによると、地銀の数は合計で64行(2020年3月31日現在)だ。それぞれの地銀にはメガバンクのような規模はないものの、地元主要企業のメインバンクであることも多く、地域経済に深い影響力を持っているといわれる。

 一方、近年は少子高齢化などの影響により地方の経済や産業規模が縮小しつつあり、地銀の多くも経営状況が厳しくなっている。特に2010年代に入ってからは、他の都市銀行と経営統合を図る「地銀再編」をはじめ、さまざまな取り組みによって生き残りを図る地銀も目立ち始めてきた。

 この記事では、地方経済に大きな影響を与え、国や株式市場も注目する地銀再編の動きを中心に過去のトピックを振り返っていく。

再編無用の個性派地銀

 多くの地銀が経営統合などの再編に乗り出す中、再編に頼らない独自の取り組みで生き残りを図る地銀もある。

 「伊予銀行」の場合は、瀬戸内海の海運・造船産業向けの融資に力を入れることで18期連続、預貸金を伸ばし続けている。特定分野を深掘りすることによるリスクは、13都府県にネットワークを広げることで相殺している。

 異業種との提携に活路を見いだすのは「静岡銀行」だ。インターネット証券大手「マネックスグループ」との資本業務提携、クラウド会計サービスを手掛ける「マネーフォワード」への出資、「LIXILグループ」などと共同で住宅メンテナンスの新会社を立ち上げるなど、精力的な取り組みを続けている。

 「千葉銀行」は、経営統合ではなく分野ごとの連携によって他の地銀と協力関係を築いている。新潟の第四銀行、福島の東邦銀行、石川の北國銀行、岡山の中国銀行、愛媛の伊予銀行などとシステムを共同化したり、運用商品を共同化したりといった具合だ。

地銀再編時代、一歩先に出るふくおかFG

 フィンテック(金融サービスと情報技術を結びつけたさまざまな革新的な動き)に積極的に取り組む、ふくおかフィナンシャルグループ。銀行の多くが最新テクノロジーの導入に消極的な中、スマートフォンを活用した個人向けサービス「Wallet+(ウォレットプラス)」、「mymo+(マイモプラス)」、「Debit+(デビットプラス)」などを開発・提供している。雑誌『BRUTUS』の編集者、伊藤総研氏にマーケティングとディレクションを依頼し、今後はイベント開催やメディアへの露出などにも力を入れていくという(当時)。

静岡銀行が示す「新・地銀再編論」

 「銀行同士で再編しても、結局は銀行のまま」と語るのは静岡銀行の柴田久頭取。提供するサービスや業務の幅を広げるために取り組んでいるのが、異業種企業との資本・業務提携だ。これまでにインターネット証券大手のマネックスグループ、クラウド会計サービスのマネーフォワード、住宅やビル向け機器などを手掛けるLIXILグループなど、さまざまなノウハウを持つ企業と提携を行っている。

 一方で金融機関の「機能別再編」にも可能性があるという。柴田氏は「機能ベースで共同化していけば、各行がより経営体力を高め、結果的に金融サービスの質を上げていくことができるはず」と語り、合併によらない銀行同士の連携にも可能性を見いだしている。

“スーパー地銀”阻む高い壁

 りそなホールディングス傘下の「近畿大阪銀行」と、三井住友フィナンシャルグループ傘下の「関西アーバン銀行」「みなと銀行」が経営統合を目指している(当時)。新しく誕生するのは「関西みらいフィナンシャルグループ」。総資産11兆円超という「スーパーリージョナルバンク」になる予定だが、10年以上にわたり激しく競争してきた銀行同士の統合は内部に「火種」を残す恐れもあるという。

大手信託銀は地銀の救世主か

 地銀同士の統合ではなく、大手信託銀行との提携を目指す動きもある。三井住友信託銀行で行われた「金融商品の販売ノウハウを提供する研修」には地方銀行から派遣された行員たちも参加しており、金融商品の代理販売に対する関心の高さがうかがえる。

 こうした動きの背景には「大手信託銀は地方支店が少なく、地銀と競合しない」という事情があるが、一方で、大手信託銀同士による地銀の囲い込み競争に発展する可能性もあるという。

地銀再編、競争の未来図に危うさ

 2018年8月、ふくおかフィナンシャルグループと十八銀行(長崎県)の経営統合が承認された。統合計画が発表されたのは2016年だったが、ふくおかフィナンシャルグループが長崎県の親和銀行を傘下に置いていたため「独占禁止法上、問題がある」として、公正取引委員会に問題視されていたのだ。

 結局「中小向け融資を他の金融機関に借り換えさせてシェアを下げる」ことで統合が認められたが、融資を無条件分配させられたことへの疑問や反発は少なくない。国は今回の再編について「今後に向けた先例」と見るが、関係者からは「有力融資先を自ら手放す選択は合理的ではない」「債権譲渡より店舗の統廃合などを進める方が近道ではないか」との声も聞かれる。

メガ銀と地銀、フィンテックで接近

 三井住友銀が開発した経営分析システムは、銀行の主要業務である融資先の経営分析を最先端のAI技術によって効率化できる。

 三井住友銀行ではこのシステムを地銀に提供するとしており、すでに約50行から引き合いがあるという。今後1年半で、10行と契約を交わしていく予定だ(当時)。

地銀再編に狭まる「包囲網」 政府、市場から“圧力”

 2019年4月、国と地方の成長戦略を議論する「未来投資会議」が政府内で開催された。地銀については再編を促す基本方針が確認され、「(地元における融資の)シェアが高くなっても特例的に経営統合が認められるよう検討を進めていく」という。

 一方、東京証券取引所では「第1部上場基準」の見直しを検討。最低上場基準となる時価総額を引き上げるとみられている。新たに設定される金額によっては1部上場から降格になる地銀もあるとみられ、再編への圧力が高まっている。

最後に

 地方都市の経済や産業を支える地銀。その経営状態は地域の景気にも大きな影響を及ぼしかねないだけに、再編を含む各行の取り組みに対しては、地元だけでなく国や市場からも熱い視線が集まっている。全国に散らばる地銀の勢力図がどのように変化していくのか、今後の動きから目が離せない。

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