一定の収入源を残し、現役生活から引退する「セミリタイア」。自由な生活に憧れてセミリタイアを目指す人は多いが、その中には悠々自適な生活を断念し、「出戻り」する人たちも少なくない。この記事ではセミリタイアに関する過去記事から、さまざまな事例を振り返ってみる。

「セミリタイア」のメリットと現実

 セミリタイアとは早期退職の一種で、一定の仕事(収入源)を残しつつ、自分の自由な時間を増やすことをいう。一般に、セミリタイアには完全な退職ほどの「蓄え」は必要ない。ある程度の仕事は続けるものの、それまでの会社勤めとは比べものにならないほどの時間が手に入るため、余裕を持って生活を楽しむことができるといわれている。

 とはいえセミリタイアは決して容易ではない。自由な生活に憧れてセミリタイアをしたものの、想定以上に生活費がかさんで、結局「出戻り」をする人も少なくない。一方で生活スタイルを見直したり、自分のスキルや強みを生かしたりして起業することで、セミリタイアを楽しんでいる人もいる。

 今回の記事ではセミリタイア(およびアーリーリタイア・早期退職)をテーマにした過去記事を通して、さまざまな事例を紹介していく。

人生の大半の悩みを消す最強戦略「経済的独立」の現実

 国内外でFIREムーブメントと呼ばれる、セミリタイアを実践する人が増えている。ファイナンシャルプランナーの杉山暢達氏もその一人だ。

 以前は金融業界の第一線で働いていた杉山氏。現在は日本とハワイを自由に行き来しながら、「一般の人向けに金融知識を教える啓発活動」や著述業をしている。これらの仕事は生活費を稼ぐものではなく、社会とのつながりを保ち、自分のスキルを人の役に立てるためのものだ。

 杉山氏のようなセミリタイアを成立させるには、一定程度の貯蓄が欠かせない。杉山氏自身、「少なくとも夫婦で90歳まで生活できる資産は既に確保している」という。中学のときからセミリタイアを意識していた杉山氏。成功の秘訣は高い計画性だ。

アーリーリタイアは夢か

 実際、セミリタイアやアーリーリタイアに憧れる人の多くは資金の壁に直面する。例えば年収1000万円クラスの人が退職すれば、初年度だけで100万円以上の税金を支払わなくてはならない。家族のその後の生活費を考えると、少なくとも8000万円以上の貯蓄が必要という試算もある。これには住宅ローンや子供の教育費は含まれていない。

 セミリタイアやアーリーリタイアをして海外移住を夢見る人も少なくないが、統計によると、そうした生活を1年以上続けられる人は1割程度だという。

「もう疲れた。海辺の町でのんびり暮らしたい」は甘い考えか

 セミリタイアか、アーリーリタイアか。千葉県館山市で移住支援を行うNPOの代表、八代健正理事長によると、貯蓄のみで生活するアーリーリタイアは「あまりお勧めできません」と話す。

 八代氏が拠点を置く館山市は、青い空と海、星空が魅力の土地だ。しかしアーリーリタイアのように「長期間、貯金を取り崩し、地域社会とも関わらない生活」が続くと、次第に周囲の風景を楽しむ心の余裕がなくなっていくのだという。

夢のシニア起業で大繁盛?

 セミリタイア後に起業を目指す人は多い。いわゆる「シニア起業」もその一つだ。ある調査によると、日本のシニア起業家(55~64歳)は、2015年時点で約63万人に上るという。

 しかしそうした起業の半数は慢性赤字で、失敗に終わっている。原因は、そばが好きだからそば屋をやってみようといった安直な考えでの起業が多いためだ。起業によるセミリタイアを成功させるには、十分な時間をかけた準備と勉強が欠かせない。加えて、安心・安定の生活を送るためには数千万円程度の貯蓄も必要だ。

増える「出戻り」社員  “超即戦力”の生かし方

 セミリタイアして起業した人の中には、結局、元の会社に「出戻り」してしまう人も多い。一方で起業の中には、そのような人を積極的に受け入れるところもある。

 例えばパナソニックの場合、「いったん『外の世界』に出た人」の視点を生かす狙いから、出戻った社員に対して比較的寛容だ。人材サービス大手のエン・ジャパンの調査によると、「一度退職した社員を再雇用したことがある」会社は回答企業の7割以上に上ったという。

 とはいえ一度は自己都合で会社を辞めた以上、簡単に受け入れてもらえるとは限らない。実際「退職後のキャリアに応じて、役職や給与を設定する」「辞めている間に何らかの付加価値がなければ復職は難しい」と話す会社もある。

「感動チョーク工場」に学ぶ仕事の幸福感を増やす方法

 セミリタイアを成功させている人たちの中には、資産の有無にかかわらず「地道に働いている」人が多い。冒頭の記事に登場した杉山氏も「将来への不安はないのに、リタイアして5年もたつと何らかの形で世の中とつながりたくなった」という。

 こうした行動の理由は「人間の究極の幸せ」と関係している。人間の幸せは「①愛されること、②褒められること、③役立つこと、④必要とされること」によって感じられるというが、このうち③と④は働くことによってのみ得られるためだ。

最後に

 より自由な生活を手に入れるため、多くの人が憧れるセミリタイア。しかし安定した生活を営むには、十分な貯蓄と準備が必要だ。セミリタイアの成功事例・失敗事例は、これからセミリタイアを目指す人にとっても、そうでない人にとっても大いに参考になる。働き方が多様化する現代、引き続きさまざまな可能性に注目していきたい。

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