小さなブースやデスク単位で事務所を貸し出す、シェアオフィス。利用者はスタートアップや個人事業主などが中心だが、最近ではコロナ禍による働き方の変化に伴い、大手の中にもシェアオフィスに興味を持つ企業が増えている。この記事ではシェアオフィスに関する過去のニュースを振り返っていく。

「シェアオフィス」のメリット

 シェアオフィスとは、共有するという意味の英語「share(シェア)」と事務所を意味する「office」を組み合わせた言葉で、主に小規模な貸事務所を指すことが多い。具体的な賃貸条件はさまざまで、小さく仕切られたブース単位で借りるケース、広い部屋を他の利用者と共有してデスク単位で借りるケースなどがある。

 シェアオフィスの利用者には、起業間もないスタートアップや個人事業主が多い。事業が軌道に乗るまでの間、固定費をできるだけ抑えるのが狙いだ。またシェアオフィスの利用者同士が交流することによる、シナジー効果が期待されることもある。

 貸主にとっても、シェアオフィスの運営にはメリットがある。遊休不動産の活用はもちろん、自社が営む事業とのコラボレーションや地域活性化に役立つケースも少なくない。今回はコロナ禍でますます注目を集めるシェアオフィスについて、過去記事から注目の話題を紹介していく。

「スタートアップが自然に集う街」目指す大手町

 三菱地所が大手町エリアでシェアオフィスの運営を開始した。2016年に「日本初のフィンテック企業専用」としてスタートしたシェアオフィスは、翌年には床面積を2.4倍に拡大するほどの人気だ。

 「フィノラボ」と名付けられたこのシェアオフィスには、外資系企業を含む約50社が入居している(2018年時点)。それぞれが最先端のビジネスを展開するだけでなく、交流によるシナジー効果も期待されている。

 三菱地所としては、これらの企業を集積させることにより、「大手町ブランド」を向上させたい考えだ。

赤羽ヨーカ堂、“鬼門”の4階復活に奇策

 2019年3月、小売業大手のイトーヨーカ堂がシェアオフィス事業に乗り出す。イトーヨーカドー赤羽店の一角で、法人向けサテライトオフィス「ZXY(ジザイ)」を開業させる予定だ。

 大型スーパー内にシェアオフィスを併設するのは全国的にも珍しい取り組みだが、駅前という立地の良さは入居者にとって大きなメリットだ。

 イトーヨーカ堂としても、商業施設としては活用が難しい「2階以上の、フロア奥のスペース」を有効活用できる。加えて「平日の営業マン」という新たな客層を開拓できるのも魅力的だという。

JR東日本、東京駅構内にシェアオフィス

 駅の構内にシェアオフィスを設置したのは、JR東日本だ。これまで東京、新宿、池袋、立川の4駅で電話ボックスタイプのシェアオフィスを運営してきたが、新たに「1室に多数の座席を備えた」シェアオフィスを設置。まずは東京駅から始め、今後は首都圏を中心に複数の駅に展開していく予定だ。

 駅中という立地の良さが強みのシェアオフィス。同社では「使わなくなった事務所や空き店舗」を活用していきたい考えだが、条件を満たす物件は限られており、いかにしてスペースを確保するかが今後の課題だという。

スタートアップで広がる脱オフィス

 新型コロナの感染拡大を受け、大小さまざまな会社で在宅勤務やリモート勤務が導入されている。その結果が「業績の好不調に関係なく、オフィスを縮小・廃止しようとする動き」だ。

 たとえば渋谷にオフィスを構える特許事務所「IPTech」では、全面リモートワークに移行するのをきっかけにオフィスを廃止していくという。まずは必要最小限度の規模でシェアオフィスを借り、賃料を現在のオフィスの半分程度に抑える予定だ。

 スタートアップのオフィス仲介会社「ヒトカラメディア」によると、同様の相談は2020年4月以降急増しているという。

富士通、定期代廃止にオフィス面積半減

 オフィスの縮小に動いているのはスタートアップ企業や小規模企業ばかりではない。大手総合ITベンダーの富士通でも、全国のオフィス面積を5割程度削減して、社員が自宅やシェアオフィスなど「最適なオフィスを自律的に選択できるようにする」という。

 削減したオフィスは「最新技術の実証や顧客との共同作業などに使う『ハブオフィス』」と「作業や打ち合わせなどに使える『サテライトオフィス』」に改装する。狙いはあくまで生産性向上と業務環境の快適さ向上だが、コストメリットも注目に値する。

なんと本社はシェアオフィス、スタートアップ身軽に

 スタートアップ企業の中には、本社をシェアオフィスに置くところも登場した。これまで六本木ヒルズ森タワーやアーク森ビルに本社を構えていたGunosy(グノシー)は、2021年6月から渋谷駅に直結するシェアオフィスに本社を移動。新型コロナに伴う働き方の変化に、柔軟に対応した結果だ。

 恵比寿ガーデンプレイスに本社を置いていたクックパッドも、同じく本社を移動した。場所は横浜みなとみらいのシェアオフィスだ。

最後に

 手軽さや料金の安さから、起業したてのスタートアップや小規模事業者を中心に利用されてきたシェアオフィス。 新型コロナの影響で各社の働き方が変わる中、シェアオフィスの利用シーンにも新たな変化が見られている。こうした動きが今後も活発になっていくのかどうか、引き続き注目していきたい。

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