仕事の愚痴を共有し、あすからの糧にする。そんな職場の飲み会のあり方はもう古いのかもしれない。実際、昨今では若者を中心に、仕事関連の飲み会に後ろ向きな声が多く聞かれている。また、新型コロナ禍の影響で、オンライン飲み会が話題になるなど、新しいスタイルも生まれている。そんな職場の飲み会がどう変化しているのかを探る。

職場関連の飲み会に若者は後ろ向き

 昨今、職場関係の飲み会のあり方が変化してきている。「忘年会スルー」なる言葉がSNSで話題になるなど、若者からは職場関係の飲み会に後ろ向きな声も聞かれる。一方、こうした飲み会を、より有意義な場にするための取り組みを行う企業もある。また、昨今では、新型コロナ禍の影響で飲み会がオンライン化する動きも見られる。

30~40代、「友達ゼロ」は人としてダメか

 職場の飲み会というと、仕事の愚痴やもしくは達成感を同僚と共有する場になる。結婚や子育てなどによって、友人や会社の同僚との付き合いが減って孤独を感じる人も少なくない。心理カウンセラーの諸富祥彦氏は、日本人は群れる傾向があるとし、同調圧力に苦しむ人が少なくないという。そんな中、誰かと絶えずくっつくことで安心感を獲得し、そうでない人間を排除しようとする人たちがいることが問題だと語る。

 一方、「1人の時間を過ごせる力」、言い換えれば「孤独力」は、現代をタフに、しなやかに、クリエーティブに生きるための必須能力で、これからの時代、ますます大切になっていくと強調する。孤独を愛する人は、人生を充実させるうえで強烈なアドバンテージを持っているというのだ。逆に、「群れること」の弊害は多いという。群れることで自分が何をどう感じていて、何を欲しているのか分からなくなる。こうした「自分を持たない人間」が、定年を迎えると大変なことになるというのだ。

若手社員に聞く「忘年会スルー」されない方法

 最近の若手社員は、毎年行われる職場の忘年会をスルーする傾向にあるという。2019年にこの「忘年会スルー」がネットで話題になった。上司とスナックで同席する、2次会・3次会に強制的に連れていかれるなど、「しんどい飲み会」に参加した経験を持つ人々への共感が、SNS(交流サイト)上で広がったのだという。

 お酒文化そのものは確実に変化してきている。国税庁が発表した酒レポートによると、成人1人当たりの酒類消費数量は、1992年度の年間101.8リットルをピークに、2017年度には年間80.5リットルまで減少。年間の飲酒量はピーク時の8割程度まで落ち込んだ。

 しかし、「飲みニケーション」に否定的な若手社員がいる中、意外にも会社の飲み会に参加したいという声もある。酒の席の大前提である「気の合う仲間と飲めるか」さえクリアできていれば、会社でも楽しい飲み会は成立するようだ。また、宴会の時間を短くするなどの工夫も始まっている。

伊藤羊一「私が飲み会スルーを宣言した理由」

 2019年末、ベストセラー『1分で話せ』の著者である伊藤羊一氏が、「飲み会に出ない宣言」をしたことが話題になった。「ダメダメなビジネスパーソンだった」と、20代の自分を振り返る、伊藤氏。38歳でプレゼンに開眼し、40代でソフトバンクグループ・孫正義社長の後継者を育てるソフトバンクアカデミアに参加していたときに、東日本大震災が発生。その復旧現場に立つ中、リーダーシップに目覚めたという。同氏は、飲み会に出ないと決めた理由を、ソフトバンクアカデミア時代の孫正義氏との出会いを振り返りながら語ってくれた。

「社内飲み会こそ、学びの場に」

 一方、社内飲み会を学びの場にする取り組みを行う企業も。カプコン会長兼CEOの辻本憲三は、社内の中堅社員と若手のコミュニケーションが不足していると感じていた。そこで、会社が主催する「誕生日会」を開くことにしたという。頻度は大阪が2カ月に1度、東京が3カ月に1度で、期間内に誕生日を迎えた社員が対象となる。時間は午後6時からで、場所は会社の食堂などだ。誕生日会なので、バースデーソングを歌いながらケーキの上にあるロウソクの火を消し、予算1000円を上限に参加者同士でプレゼント交換もする。もちろん社員に参加の強制はしない。社員の3割程度が参加している。

 目的の1つは新たな出会いの場をつくること。誕生日会をきっかけに、日ごろ会わない人たちと出会うことで、業務の議論が始まることも多いようだ。もう1つの狙いは本物に触れてもらうことにあるという。誕生日会では事前に、和食や焼き肉など有名店の仕出し弁当を選べるようにしている。時代の洗礼を受けながら生き残ってきた「本物の味」に触れることで、同じく嗜好品であるゲームの開発にも生かしてほしいという思いだと言う。

広がるオンライン飲み会、背景画像で飲食店支援

 最近は、新型コロナ禍の影響で、オンライン飲み会が話題を集めている。飲食店にとってはつらい状況だが、それを逆手に取った取り組みも行われている。

 オンライン飲み会に利用されるZoomなどのツールでは、背景にバーチャル壁紙が設定できるのをご存じだろうか。20年4月13日に開設されたEC(電子商取引)サイト「ONLINE PARTY MARKET」が販売していたのは、各飲食店が用意した「画像データ」。4月17日時点で掲載されている飲食店数は85店舗。店内写真を販売している飲食店もあれば、フードの写真やロゴデータを販売している飲食店もあった。販売価格はすべて1点500円だ。

 ONLINE PARTY MARKETでは、こうした背景画像を飲食店に代わって販売することで、収益悪化に苦しむ飲食店を少しでも支援できればとしていた。飲食店に直接訪問できないファンが購入しているケースが多かったようだ。

最後に

 会社の上司や同僚との飲み会などは若者世代から敬遠されがちだ。しかし一方、その飲み会を新たなコミュニケーションの場とするような取り組みも見られる。また、新型コロナの感染拡大でオンライン飲み会も話題を集めている。これから職場関連の飲み会がどう変化していくのか、注目していきたい。

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