米国発のビジネスコミュニケーションツール「スラック」。日本を含む世界全体で1000万人以上の利用者が存在し、大企業からフリーランスに至るまで幅広く利用されている。快進撃が続くスラックを提供する米スラック・テクノロジーズの、株式上場に関連するトピックを時系列で紹介していく。

画期的なコミュニケーションツール「スラック」とは

 「ビジネスを前進させるコラボレーションツール」というコンセプトのもと、テキストメッセージや音声・ビデオ通話、ファイル共有などの機能をワンストップで提供する「スラック(Slack)」。2013年8月にサービスを開始し、19年2月には全世界の「日間アクティブユーザー数」が1000万人を突破するなど快進撃が続いている。

 スラックのようなコミュニケーションツールは他にも数多く存在している。その中でスラックならではの特徴と言えるのは「他ツールとの連携が容易」という点だ。メールはもちろん、スカイプやツイッター、ドロップボックス、グーグルドキュメントなど100種類以上のビジネスコミュニケーションツールと連携が可能だ。業務で利用するほとんどのツールをスラック上に集約できるため、利用者は複数のアプリやブラウザーを行ったり来たりする必要がなくなる。

 実は、スラックを開発した米スラック・テクノロジーズはもともとゲーム会社だ。本業の「ブラウザーで動くオンラインゲーム」は不調だったものの、社内のエンジニアたちがプロジェクトで利用していたコミュニケーションツールを企業向けに再開発し、「スラック」としてリリースしたのだという。

 その後短期間でユーザー数を伸ばしてきたスラックは、株式上場の面でも好調だ。19年6月のニューヨーク証券取引所上場の際は、市場の予想をはるかに上回る時価総額を記録するなど、投資家からの注目度は高い。今回は同社の株式公開に関するトピックを振り返っていく。

米スラック、株式公開はダイレクトリスティングで

 「ダイレクトリスティング(直接上場)」と呼ばれる手法で株式上場を目指した米スラック。ダイレクトリスティングは18年にスウェーデンのスポティファイ・テクノロジーが利用した手法としても知られ、有力スタートアップの注目を集めていた(19年1月13日当時)。

上場目指すスラック、製品開発トップが交代

 19年中の上場を目指していたスラックで、年初に主要メンバーの交代が行われた。製品開発責任者のエイプリル・アンダーウッド氏が退社し、グーグル幹部のタマル・ヨシュア氏が後任に就くと報道された(19年1月18日当時)。

上場予定のスラック、時価総額70億ドル超になる可能性

 ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、19年中に上場を目指すスラックの時価総額は70億ドル(約7700億円)超になる可能性があると推定されていた(19年2月5日当時)。

スラックが上場、一時は時価総額250億ドル超え

 19年6月20日にニューヨーク証券取引所に上場を果たしたスラック。一時は時価総額が250億ドルを超えるなど、当初の予想をはるかに上回る滑り出しとなった。利益が出ていない段階で「売上高の50倍の評価」を獲得したことで、スラックが利用した「ダイレクトリスティング」方式にも大きな注目が集まった(19年6月21日当時)。

スラックが活用、直接上場とは? 実は日本企業にも実施例が

 スラックの上場初日は、終値が38.62ドル、時価総額で195億ドル(約2兆930億円)となった。19年2月に「70億ドル(約7700億円)超になる可能性がある」と報道されていたが、予想をはるかに上回る結果は、スラックに対する市場の関心がいかに高いかを示している。

 それと同時に大きな注目を集めているのが、上場の際にスラックが利用した「ダイレクトリスティング」という手法だ。

 ダイレクトリスティングの特徴は「上場時に新株を発行せず、既存の株式だけを上場する」というもの。通常は上場の際に新規の株式を発行する会社が多いが、新株の発行には証券会社への手数料が発生する。ダイレクトリスティングではこれが不要になるため、株式公開にかかるコストを圧縮することができる。

 一方でダイレクトリスティングには「株価の目安となる公開価格がないので、株価が乱高下したり安定しづらかったりする可能性がある」というリスクがあると専門家は言う。買い手の数や注目度が読みづらいため「いくらで株が売れるか分からない」というのだ。

 スラックの場合は圧倒的な知名度が功を奏した。しかし日本には知名度のある未上場企業が少ないこともあり、ダイレクトリスティングの活用はあまり広がらないと考えられている。

最後に

 急速なユーザー獲得に加え、19年の株式上場では市場の予想をはるかに上回る時価総額を記録したスラック。その背景には圧倒的な知名度に加えて、「ダイレクトリスティング」と呼ばれる手法があった。

 スラックの勢いはまだまだ衰える気配がない。今後はスラック自体の成長に加えて、「第2のスラック」となる新しいベンチャーの登場にも期待がかかる。

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